医療保健福祉の立場から防災・減災を考える

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教育学部での高齢者医療の研究から、医学研究科での災害医療の研究へ

image02.jpg 健児くん(以下:◆):先生が所属されている「減災型社会システム実践研究教育センター」とは、どんなところですか?
古本:防災や減災に関する研究や教育を行っている施設です。主に理工系のハード面に関する研究が多いですが、私は、災害医療や被災地の医療問題、仮設住宅内での被災者の健康格差といった医療福祉系を研究課題にしています。
◆:被災地の医療や被災者の健康問題に興味を持たれたきっかけは何ですか?
古本:大学では教育学部に所属し、教育計画を専攻していました。自分が卒業した小中学校や、地域の小さな診療所がなくなったことをきっかけに、社会福祉に関心を持ちました。
修士課程までは、地方の高齢化問題や人口減少問題を中心に、過疎地域の健康問題について研究していたのですが、問題を解消するためには、福祉だけでなく医療や保健も重要であることがわかって、博士課程では医学研究科へ進みました。その後、静岡にある浜松医科大学の助教として赴任をしました。静岡は南海トラフ地震が危惧される地域でもあり、高齢化が進んでいる地域でもあります。自然と高齢者医療から災害医療へと研究テーマが移っていったんです。現在災害医療を専門にしていますが、視野を広げていろんなアプローチの仕方を学びながら自分の方向性を見つけていったように思います。
◆:減災型社会システム実践研究教育センターでは、理工系の研究者の方と連携されるようなことも多いのですか?
古本:センター内で医療系の研究をしているのは私だけなので、自ら自治体や医学部に協力を申し出てネットワークを切り拓いていくことがほとんどです。フロンティア精神はどの組織に所属していても必要なものです。私の母校である北海道大学も、フロンティア精神が基盤としてありますし、私自身もフロンティア精神をもって取り組むことを心がけています。

被災地での学びを被災地で活かす

image03.jpg ◆:ところで、先生の前任地は神戸なんですね。
古本:はい。「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」で研究をしていたとき、東日本大震災が起こりました。そこで、東北には頻繁に訪れ復興支援を行う傍ら研究活動を行いました。
私はこれまで神戸という被災地に住み、神戸や東北といった被災地を研究対象とし、被災地の復興支援をしてきました。このような仕事と生き方が染みついた中で神戸から熊本へやって来たので、自分の経験が活かせると考えています。
現在、西原村の協力の下、仮設住宅内での高齢者の健康格差問題について取り組もうと現地の方とやりとりをしているところです。
それともう1つ、被災地自治体職員の負荷の問題について取り組んでいます。東日本大震災後、各自治体で休職者数が増加するという問題が発生しました。これは、震災後ある程度年月が経って自治体職員にストレスがかかってきたという背景があります。そのストレスは、自らも被災者でありながら住民の支援をしなければならないという相反する立場から生まれてくるものです。自治体職員の負荷はあまり注目されませんが、自治体職員が病んでしまうと、住民の支援も回らなくなってしまいます。自治体職員も被災者である認識と職員自身への支援が必要なんです。

自分が熊本へやって来た意味を果たしたい

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◆:静岡から神戸、そして熊本へいらっしゃったわけですが、熊本大学の印象はいかがですか?
古本:まずは、研究活動をするベースをくださったことに感謝しています。感謝するだけでなく、ここに自分がやって来た意味を果たせるよう、大学や地域社会に残る研究をしていきたいと思っています。熊大生は実際に被災した人も多く、リアルな感覚を持っています。その関心の高さを5年後も10年後もキープしてもらうために、学生のみなさんには、「自分に何ができるか」を意識づけるようなサポートをしていきたいです。
◆:最後に熊大生へ一言お願いします!
古本:学生時代に何かに挑戦してください。興味があることで構わないので、自分で見つけ、自分で動くこと、実践することが大切です。学生時代の経験は必ずその後の人生に残ります。私自身、挑戦したことで得た経験や、指導教官や先輩との出会いは、今でも仕事の糧になっています。人との結びつきに感謝しながら、ネットワークを大切にしていけば、将来は変わってくると思いますよ。
(2017年2月14日掲載)
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