法のあるべき姿を探る

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境遇が似ている非行少年たちのことが他人事と思えない

image02.jpg 健児くん(以下:◆):まずは、先生のご研究内容を教えてください。
岡田:一言で言えば、「大人たちが見捨てたくなるような非行少年に対して、法はいかにあるべきか」を研究しています。非行少年はみんな難しい問題を抱えています。虐待などで家に帰りたくなかったり、授業についていけず学校から弾き飛ばされたり…。そういう居場所のない子どもたちが集まって集団となり大きな事件を起こしたり、あるいは集団から抜ける/抜けないで暴行が起こったり…これが、非行少年が事件を起こすありがちなパターンです。彼らに対し、国がどのような取り組みをしたらよいか、実際に救いにつながる法解釈とはなにかを考えています。
◆:先生がそのような研究をされようと思われたきっかけは何ですか?
岡田:大学院に進学するときに、虐待やいじめなどを受けた子どもたちが非行に走り、警察に捕まり、家庭裁判所に送られているという事実に初めて気がつきました。実は、私自身小学生のころいじめられていました。境遇が似ているので、非行少年たちのことが他人事には思えないんです。私がこうして大学教員をしているのは偶然にすぎないと思っています。本当は子どもたちはそれぞれに社会に適応することができるし、そのようにしていくのが法の役割だと思うんです。当時、まだ少年法の研究をしている人がほとんどいませんでしたが、恩師からの勧めもあったことから、少年法の研究を始めたんです。

「現場に学ぶ」「事例に学ぶ」「歴史に学ぶ」

image03.jpg ◆:研究をされていく中で大切にされていることがあるそうですが…?
岡田:「現場に学ぶ」と「事例に学ぶ」です。私の研究室では、文献だけで研究はしません。現場の人たちの研究会や非行少年に関わっている人たちに会いに行って話を聞くことが研究の基本です。
最近の私の関心事は「非行少年は反省して非行をやめることができるのか」です。先日、非行少年の立ち直りに頑張っている人たちの集まりでこの問いを投げかけたんです。私は、見せかけだけの反省が強いられるのであれば非行は繰り返される、そもそも反省は自分の感性や感覚が変わらないとできないものなのではないか、と問いました。すると皆さんは「そのとおり」とおっしゃったんです。本当に大切なことは、まず反省させることではなく、非行少年たちを今置かれている環境から救い出し、大切にしたり、その人の持つ力を発見したりすることで、非行少年たちが認められる居場所をつくることなんです。
もう一つ大切にしていることがあります。それは「歴史に学ぶ」こと。いつまで経っても冤罪がなくならないのは、歴史から学んでいないからです。本来、法は失敗の歴史の上に成り立っているんです。歴史を振り返りながら法を研究することは、私の恩師もこだわってこられたことなので、引き継ぎたいと考えています。「歴史に学ぶ」ことに関連して取り組んでいることがハンセン病差別問題についてです。かつて菊池事件というハンセン病患者が殺人罪に問われ死刑になった事件があります。その裁判は一般の人が入れない特別法廷で行われ、弁護人は弁護しないという差別的なものでした。このような特別法廷問題について私の恩師たちが長年働きかけ、2016年にとうとう最高裁がハンセン病患者への特別法廷は差別だったと謝罪をしたんです。

関係者の連携づくり、次世代への引き継ぎ、熊本への還元

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◆:今後、研究をどのように発展させていきたいと思っていますか?
岡田:非行少年の立ち直りに向けて活動している人たちの連携を作っていきたいと考えています。現状では、個々の活動が独立しているんです。連携することで、もっと活動は広がり、支援につながっていくと思っています。
それと、ハンセン病差別の克服のように熊本に根付いた研究を地域に還元したい。そして熊本から全国、さらには世界に発信をしていきたいと考えています。これらの研究は、私だけでは完結しないので、いかに次の世代に引き継いでいくか、も課題ですね。
◆:最後に熊大生に一言お願いします!
岡田:大学の外に積極的に出ていってください!法学部の学生は真面目で、素晴らしい力を持っているにもかかわらず、大人しく、自分に自信のない人が多いです。私も学生時代そうでしたが、ドイツ留学を機に積極的になることを学びました。大学で学んだことは社会ではあまり使えないように見えるものもあるかもしれません。そのギャップを埋めるために、学問と社会を行き来できるのは学生時代だけです。社会を、現場を、見て、考え続けていって欲しいと思います。
(2017年3月1日掲載)
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