99%の苦労から生まれる1%の喜びを目指して

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よりよい社会生活の基盤を構築

image02.jpg 健児くん(以下:◆):先生はどうして交通政策研究の道を選んだのですか?
円山:大学時代に都市計画について勉強し、修士論文は交通計画の研究について執筆しました。交通政策とは、私たちの暮らしの中でとても身近な課題や問題を解決する重要なテーマの一つなんです。例えば公共交通機関再編にあたり、どこに新しい道路を造り、バスの路線を引くか。料金はどのように設定するかなどについて、学問的な立場から提案することに魅力を感じました。調査を繰り返し、データを収集することで解決策を数字で表現できたり、将来を予測できるなど、具体的に人の役に立つ研究だと思ったのがきっかけです。また研究の結果を論文にまとめることがとても楽しかったので、自分自身研究者に向いているのではないかと思ったのも、この道を選んだ理由の一つですね。
◆:先生にとって研究とはどんな存在ですか?
円山: 「99%苦労続きの毎日の中で、1%の喜びがあるから止められない」それが研究だと思います。「世界で初めての発見」それが研究の醍醐味であり、研究者なら誰もが目指す瞬間ですね。交通とは人が協力し合って生きていくために、必要不可欠なもの。人がたった一人で生きていけるなら、誰かに会いにいくこともないし、社会生活を営む上でも必要ありません。人が協力し合える社会の実現のために、安全で円滑な交通システムを構築し,維持していくことが大切です。今はまだ課題や問題も多いので、少しでも改善できるよう研究を進めていきたいと考えています。

新たな交通政策のヒント「スマくま」

image03.jpg ◆:最近「スマくま」というスマートフォンの交通調査アプリを使った「くまもとまち歩き調査」が話題になりました。
円山:そうですね。「熊本都市圏パーソントリップ調査」の一部として、中心市街地における“人の動き”を調べました。このパーソントリップ調査は,熊本では過去3回行われています。例えば、「どのような人が・どのような目的で・どこからどこへ・いつ・どのような手段で移動したか」などを自転車や徒歩も含めた全ての交通手段について調査し、社会情勢や交通環境の変化を把握し、そして新しい交通計画の検討に生かしていこうというものです。今回は4回目にあたり、せっかくなら「新しいことを楽しくやりたい!」と、熊本県・熊本市と協働でスマートフォンを活用した調査を実施しました。行政は「結果をどのように施策に生かすか」を意識し、大学は「データから如何に新しい分析ができるか」に着目していて、協働したことによってその視点の違いを知り、気付かされることが多かったですね。
◆:これまでの調査と比べて、変化はありましたか?
円山:老若男女幅広い年齢層の方にご協力をお願いするために、50代以上の方にはタブレットを貸し出すなど工夫したおかげで、期待していた以上の成果が挙がりました。アプリの地図上に現れる実際に動いた軌跡だけでなく、移動時間や滞在時間など紙による調査では得られない具体的なデータを取得できたり、人それぞれのライフサイクルや同行者の有無によってどのように動きに変化があるかなど分かり,大変興味深いですね。こうしたデータを分析すると街なかを活性化させるヒントが見えてきます。また、学生たちにとっては行政の方と一緒に研究することで、社会人としてのマナーや市民の皆さんに対する対応の仕方などを学ぶいい経験になりました。

学生と一緒に考える時間が一番楽しい

image04.jpg ◆:研究室のメンバーにもお話をお伺いしましょう。その他にはどんな研究をしているんですか?
野原:スマートフォンのアプリの機能を多角的に高度化して、実用化を目指す研究もしています。例えば,通称「バスロケ」と呼んでいる「バスロケーションシステム」は、主なバス停に設置されている“バスの走行位置が分かる電光掲示板”をスマートフォンで代用しようというものです。アプリは低コストで実現可能なのですが、各バス会社に協力を依頼し、バス1台に専用のスマートフォンを設置してもらうか、または運転手さんのスマートフォンにアプリを入れてもらう必要があることと、膨大なデータを受け取るサーバーを準備する経費など、課題もあります。
◆:なるほど、実用化には企業の積極的な協力が不可欠ですね。他大学との合同勉強会も力を入れていると聞きました。野原さんは海外で、しかも英語で発表されたそうですね。
野原:初海外体験でリオ・デ・ジャネイロに行き、世界の著名な先生方の前で発表させてもらいました。質疑がたくさん出てパニックになりそうでしたが、円山先生が流暢な英語でサポートしてくださり助かりました。この経験で、今やっている研究に対する注目が高く、世界で通用する研究なのだと分かり、自信につながりましたね。
円山:英語は今やコミュニケーションツールの一つ。英語を学び活用することは、視野を広げることにつながります。こうした機会を提供することも私の大切な仕事なんです。ゼミでは参加者一人一人に発表の機会を持てるように、そして他の学生の研究に対しても発言できる場であるよう努めています。指導するというより、学生たちと一緒に考えるのが一番楽しい時間。私には無い学生の発想はとても新鮮で、やりがいを感じる瞬間でもありますね。
◆:先生の研究室は本当に“楽しい”がいっぱいで、僕まで楽しくなりました。ありがとうございました。

(2014年3月26日掲載)

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