予防医学が健康的な未来を作りだす

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リスクを未然に防ぐ“予防”の可能性

image01.jpg 健児くん(以下:◆):先生が専門にされているトレーニング科学とヘルスプロモーションとはどのような研究ですか?
都竹:トレーニング科学とは、効果的で効率的なトレーニング法を医学や科学の観点から解明する学問で、トップアスリートから一般の方、子どもから高齢者まで幅広い層が対象です。私も最初はトップアスリートのトレーニング指導をメインに活動していましたが、1998年ごろから肥満や糖尿病など生活習慣病の予防改善や、高齢者に向けた介護予防ためのトレーニングプログラムや食事メニューの開発・研究といった予防医学を主にやっています。そして、開発したトレーニングプログラムや食事メニューをより多くの人たちに広め、社会全体が健康になるよう働きかけるのがヘルスプロモーションの役割で、こちらも私にとって重要な研究テーマです。
◆: 社会への働きかけというのは大変な仕事だと思いますが、そのカギとは?
都竹:今は、食べたいものが何でもすぐに手に入る時代。言い換えるならば、太って当たり前の世の中です。だからこそ普段から“食べ過ぎない”ことと“少しでも動く”ことが非常に大切になってきます。これらのことを実践するだけで、将来の病気になるリスクは大幅に減少します。“防げる病気”を防ぐことができるのです。しかし、こういった情報や習慣を社会全体に広めるには私だけではなく、多くの人の力が必要不可欠です。そこで現在は一緒に活動してくれる人材の育成に取り組んでいます。学内だけでなく、地域の方々にも講演会などを通して予防の大切さを知ってもらい、より多くの人に地域社会へ向けてアプローチしてほしいと思っています。

“伝え方”で予防医学はもっと広がる

image02.jpg ◆:でも“将来、病気になるリスク”って言われても、若い僕には今ひとつピンとこないんですけど。
都竹:私はこれまで、最初は病気なんて他人事、そして状態がひどくなって「あの時、先生の言うことを聞いていれば…」と後悔しながら仕事の第一線からリタイアした人、透析や失明などの合併症に苦しんでいる人を医師として数多く見てきました。そういった人をひとりでも減らすためにはどうすればいいか。「将来かかるかもしれない病気を今から予防しましょう!」とか「今運動しないと5年後、10年後に後悔するよ」と言っても誰も危機感なんて持ちませんし、ましてやほとんどの方はトレーニングを始めたり、食事を改善することもありません。しかし、「お腹が引き締まりますよ!」、「メリハリのあるカラダになりますよ!」、「くびれができますよ!」という呼びかけ方をすると本当に多くの人が関心を持って、運動を始めたり食事にも気を使うようになるんです。その結果、お腹まわりが5cm、10cm引き締まったり、血糖値を下げる薬が要らなくなるような人たちがたくさん出てきました。そのためここ数年は、どのような呼び掛けをしたらより多くの方が興味を持ってくれるのか、やる気を引き出すことができるのか、という“アプローチ”や“伝え方”の研究も行っています。
◆:これまで多くの方にトレーニング指導をされてきましたが、トレーニングを行うことで参加者にはどのような変化が現れてくるんですか?
都竹:先ほども少し紹介しましたが、適切なプログラムを継続すると、体は引き締まり、病気のリスクも減少します。おもしろいのは、体だけでなく参加者の気持ちにも変化が出てくることです。これまで約6,000人をサポートしてきましたが、多くの人がだんだん表情が明るくなり、体が変わるにつれ気持ちも前向きになっていくんです。単に体が変わるというよりも、“体を自分で変えた”ことが大きな自信になるんでしょうね。そういう変化を近くで見られることが一番うれしいし、この仕事の醍醐味ですね。 image02_02.jpg

健康づくりはまちづくりに繋がる
予防の“熊本モデル”を全国に発信したい

image03.jpg ◆:これまで世界中で研究を進めてこられた先生が新境地として熊本を選んだのはなぜですか?
都竹:個人の健康だけではなく、地域全体の健康づくりや病気の予防は、地域住民だけ、行政だけ、あるいは私ひとりだけがそれぞれ頑張ってもなかなか達成できません。大切なことは地域住民、行政、そして私のような専門家が連携することだと考えています。もう少し専門的に言うと、健康づくりは、個人の意識だけでは解決しきれない多くの外的問題を含んでいます。地域医療や福祉、教育等が抱える問題を見直し、社会環境を整えることが非常に大切なのです。しかし、現実的に住民や行政と連携することは容易なことではありません。その点、すでに地域、行政、大学の三者連携プロジェクトの実績が数多くあった熊本大学政策創造研究教育センターは魅力的な組織でした。こちらに着任してまだ2年弱ですが、おかげさまでいくつかの自治体からも声をかけていただき、今は社会にどのような貢献ができるか実践・検証しているところです。高齢化社会が加速し続ける中で、防げる病気を防ぐ予防医学の普及は欠かせない課題であり、その役割は今後ますます大きいものになると私は信じています。これからは、熊本で各分野の方々との繋がりをより深め、ヘルスプロモーションの“熊本モデル”を開発し、それを全国に広めることを目標に活動していきたいと考えています。
◆:僕も健康的で明るい未来のために継続的なトレーニングをやっていこうと思いました!ありがとうございました。
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(2013年3月29日掲載)

政策創造研究教育センター都竹茂樹教授の紹介ページ

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