雨はどこから来たのか、水の安定同位体で推定する

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水の循環を安定同位体から探る研究

健児くん(以下◆):先生の研究について教えて下さい!
一柳先生:専門は水文気象学です。水文学とは水に関することをなんでも研究する分野。どちらかというと地面より下の水について扱っているというイメージをもつ人が多いでしょう。一方で、気象学は比較的短期的な大気現象を研究する分野なので、私は地面より上の水についての研究が多いです。

具体的には水(H2O)の水素(H)と酸素(O)の安定同位体比を測定しているのですが、このデータはいろいろな使い方ができるんです。例えば、同位体を気象モデルに組み込めば、大気に含まれる水蒸気がどこから来たのか、その起源を推定できます。

降水の安定同位体を使って水蒸気の起源を推定する研究をしているので「同位体水文気象学」という名称を使っていますが、同位体と気象の組み合わせはあまり多くないんです。

◆:先生はどのくらいの期間、データを測定しているんですか?
一柳先生:熊大での気象観測は2015年3月からです。降水量、気圧、気温、湿度、風向、風速について1時間ごとのデータを記録しています。雨量計は降水を貯めるものと貯めないものの2種類で測定しており、貯めた水の一部はIAEA(国際原子力機関)に送っているんです。IAEAでは水の安定同位体比と、トリチウムという放射性同位体を測定しています。

IAEAでは世界中の降水同位体データを公開していますが、現地点では日本で唯一、熊本だけが観測を続けており、データが掲載されています。




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出会いと巡り合わせで今がある

◆:先生がこの研究を始められたきっかけは?
一柳先生:偶然ですね。出会いと巡り合わせで今につながっているという感じなんです。

名古屋大学のドクターコースの途中で、つくば市の防災科学技術研究所に採用されました。それまでは水文学の分野で同位体を使った研究をしていたのですが、ここで初めて気象学の研究を始めたんです。その後、JAMSTEC(海洋研究開発機構)に誘われました。同位体を使って広域の大気水循環を研究するグループを新設するということだったのですが、当時はこの研究をやっている人が少なかったですね。海外、とくにフロンティア(辺境地域)に観測に行って、水を採ってきて同位体を測るという研究を続けました。これが今につながっています。

JAMSTECでお世話になった先生は気象モデルの大家でしたが、若くしてお亡くなりになってしまいました。その後、私より年下で優秀な先生と知り合い、彼の作った画期的な同位体モデルを使わせてもらいました。また、熊大で初めて指導した学生が現在では研究者になっており、一緒に同位体の研究を続けています。

いい出会いと巡り合わせのタイミングに恵まれているな、と感じています。
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ダイビングの魅力を学生と共に

◆:先生は、熊大のダイビング部の顧問もやっていらっしゃいますね。
一柳先生:ダイビングは昔から好きでやっていたんです。熊大にきて2年目くらいに、ダイビング部が顧問を探しているからどうか、という話をいただきました。学生と一緒に海に潜るのはとても楽しいですよ。毎年夏合宿に行っている喜界島ではダイビングショップや宿の方とも仲良くなれて、良くしていただいてます。コロナ禍が落ち着いたら、来年も行きたいですね。

ダイビングの魅力は「世界が変わる」こと。きれいな海に潜ってきれいな生きものを見ると、本当に世界が変わります。大学生の頃、初めて沖縄の海に潜ったときは、こんな世界があったのか、と感動しました。

熊本には天草があるし、九州にもいいダイビングスポットがたくさんあります。本州に比べて、海の色が違うし、寒いというストレスも少ないです。

ダイビング部では初心者も受け入れていますので、気軽に入部してください。「世界中の海で潜れる自立したダイバー」を目指し、さらに上級のライセンスや国家資格の潜水士なども取得できます。ダイビング部に入ると人生が変わりますよ。



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いい友達を作って、大切にしていくことが大事

◆:学生の皆さんへメッセージをお願いします。
一柳先生:私はこれまで周囲の友人たちに恵まれました。本当に困った時に助けてくれる友人がたくさんいました。

自分で頑張るのはあたり前ですが、自分だけではどうしようもない時、向こうから手を差しのべてくれる”いい友達”を大切にしてほしいですね。

(2020年12月28日掲載)

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