どんな人も成果を発揮できる熊本大学へ

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男女共同参画推進にいち早く取り組んだ熊本大学

健児くん(以下◆):熊本大学の男女共同参画の取り組みはどのように進んできたのですか?

宮瀬室長: 平成17年頃から本学では本格的に男女共同参画に取り組んできました。九州内の他大学よりも比較的早くから様々な取り組みを行っており、その多くで成果が出てきているところです。

例えば、女性研究者を増やすという目的で、女性限定の採用募集をかけた時期もありました。「女性研究者養成システムの改革加速」や「女性研究者研究活動支援事業」なども行っています。 平成26年には「子育てサポート事業所」として子育て支援の取り組みを行い、目標を達成したことを厚生労働大臣が認定する「くるみん」マークを取得。 「女性研究者賞表彰」や「女性研究者奨励賞表彰」なども創設して、女性研究者のさらなる活躍を支援しています。

その甲斐もあって、女性研究者の割合もだいぶ増えてきて、令和元年度で女性研究者の割合は16.14%になりました。 特に教授や准教授など上位職の割合が増加しており、順調に推移していると言えるのではないでしょうか。しかし、分野によって大きな偏りがあるので、今後の課題です。

このような取り組みは本学だけでなく地域にも広がっています。熊本学園大学や熊本県立大学、崇城大学など県内の14の大学と、経済団体、行政で組織する「大学コンソーシアム熊本」に平成28年度から男女共同参画推進委員会ができました。 お互いの状況を情報提供しながら、勉強しあっています。最近ではLGBTの勉強会を若手の委員さんが企画してやってくれました。


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きめ細やかにニーズをつかむ相談窓口の設置

◆: 相談窓口や託児ルームなども設置されているそうですね。
宮瀬室長:これまで、産休育休からの復帰直後で外部からの研究資金が取りにくい方に、準備期間の研究費を支援する取り組みなどを行ってきましたが、実際にはそれだけでない様々な問題があることがわかってきました。 例えば、朝早くや夜遅く、保育園が開いていない休みの日などに研究活動をせざるを得ない状況もあります。保育園に入れないという声もありました。

そういった困りごとを相談する場がないという声に応えて、長くこの事業に関わっている職員が対応する常設の相談窓口を作りました。ケースによっては私や男女共同参画コーディネーターも直接お話を伺って、よい方法がないか一緒に考えています。 このような相談を通じてきめ細かくニーズをつかむことで、次の新しい取り組みにつなげたいと思います。

ランチミーティングもやっています。もともとは本荘地区のコーディネーターの先生がやっておられたのですが、これを黒髪地区でも取り入れました。フリートークの中で悩みを聞いたり、他大学の取り組みを聞いたりしています。 ここで出た話から実践につながったのがおむつ替え台の設置です。他の大学にあって助かったという声や、こんな台が使いやすかったという声を集めて、黒髪地区におむつ替えができるスペースを何か所か設置しました。

託児ルームも必要性を感じた取り組みの一つです。保育園にお迎えに行った後、学生の指導が必要になったというような場合や、休みの日にどうしても預けるところがない、というときに活用していただける場所です。 子どもを託児ルームで遊ばせながら、学内の無線LANに接続して仕事をしたり、学内の会議に参加したりできます。女性研究者の多くは、自分ができることはきっちりやりたいと思っているんです。 でも、周囲に親族など子どもを見てくれる人がいない場合も多い。そこをうまくサポートできないかな、ということで作りました。 常駐している保育士などはいませんが、子どもを見てくれる人をご自身で手配していただければ、おもちゃや絵本、DVDなどを用意してるので、子どもたちは楽しく遊んでくれます。子どもを見る人は大学院生などでもよいことにしています。 すべてをこちらでサポートできないことは心苦しいのですが、できる範囲でやれることからやりたいと思っています。

そんな中、学長の「よかボス」宣言も行われました。学長が先頭を切って宣言されたことで、他の理事や各学部長にも「自分もやろう」とおっしゃってくれる方がでています。 多くの方に宣言していただくことで、皆さんの意識が変わるとよいなと思います。
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男女を問わず研究者のロールモデルを紹介する冊子を作成

◆: 熊本大学の先生方を紹介する冊子も発行されていますね。
宮瀬室長:若手研究者や学生のロールモデルを紹介する取り組みとして、これまで3回にわたり、学内のさまざまな女性研究者を紹介してきました。最新の第3号では男性の研究者も紹介しています。 次世代育成という視点から見ると、女性が活躍するためにはパートナーである男性のサポートが必要です。家庭責任は共同。お互いに協力し合わないと進まないんです。育児も介護も女性だけの問題であってはいけません。 そこで、子育てに積極的な男性研究者、しかも研究者としてもすぐれた実績をあげている方を紹介することで、男性研究者のロールモデルになるのではないかと思っています。

今回は若い研究者を取り上げることを心がけました。若い方を掲載すると、学生の皆さんが身近に感じていただけるようです。高校からも読んでみたいという声が寄せられています。

◆:男性の声も重要なんですね。
宮瀬室長:今、男女共同参画コーディネーターには工学系と薬学系から一人ずつ男性に入っていただいています。こちらが気づかない面を指摘していただくなど、とてもよかったと思っています。今後は「ダイバーシティ」という視点を持っていく必要があります。 世代が異なる若い研究者や、文系、理系、男性、女性など多くの立場の人の声が集まることで、これまで私たちが気づいていない点を指摘していただけると期待しています。

ダイバーシティについては、子育てやLGBTなどをテーマにした熊大独自のフォーラムも開催しています。多面的に考えていきながら、みんなが働きやすく、能力を発揮できる大学づくりという視点にしていく必要があると思っています。



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学生にも相談窓口を開き、研究者への道を支援したい

◆: 学生さんの支援も行っておられるんですね。
宮瀬室長: 学生さんに男女共同参画について学んでいただきたいということで、ジェンダーに関する講義科目を提供しています。文学部で開講されている講義なのですが、それを教養の共通料目にして誰でも履修できるようにしました。 これからはデートDVへの対処など幅広い内容を含む講義科目を取り入れたいと思っています。

男女共同参画についての窓口は学生も相談可能です。現在は、大学院生からの相談が増えていて、直接電話してくれたり、周囲の人からの紹介で来てくれたりしています。相談を受けた場合は、学内のしかるべき部署やコーディネーターと連携するなどして対応しているところです。 こういうことができるのも、常駐する推進員の方がいるから。きめ細やかな相談対応ができ、解決につなげられているのではないかと思っています。

女子学生の皆さんには、研究者だけではなく、さまざまな方向でキャリアアップができるように、大学全体でサポートしていきたいと思っています。 特に、女性研究者になりたいという方を支援していく体制は全学的に広がっていますので、安心して進学し、次世代を背負う人材になっていただきたいですね。

◆:今後はどのような取り組みを行っていく予定ですか?
宮瀬室長:これまでは男女共同参画室として活動してきましたが、ダイバーシティの視点を取り入れたいと思っています。どちらもベースにあるのは働き方改革ではないでしょうか。 私は今、副学長という立場ですが、大学の執行部の中に女性がいることで意識が変わると感じています。 この形が続いていくよう、リーダーシップを持った女性研究者の育成にも力を入れたいと思っているところです。

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(2020年12月10日掲載)

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総務課 広報戦略室

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