高性能で安価で小型!新しいセンサで日本の未来を拓く!

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Industry4.0やSociety5.0の世界を支える新しいセンサ

健児くん(以下◆):先生の研究について教えてください!

小林先生:私が研究開発しているのは、高温などの過酷な環境でも動くセンサです。例えば発電所では、安全に安定して電気を供給するために、定期的に発電を止めて点検作業を行っています。発電所内はとても高温なので、発電を止めなければ点検はできません。でも、高温で発電状況や機械の状況を確認できるセンサがあれば、発電を止めないだけでなく、常時点検されているので事故も防ぎやすくなります。一石二鳥ですよね。

今でも過酷な環境に耐えるセンサがないわけではありませんが、大きかったり高価だったりという課題がありました。そこで、人が入れないような狭い、小さな場所でも検査できるような小型のセンサをたくさん設置できるように、小型で安価なセンサを開発したんです。どんな場所でも動く小型で安いセンサは、これからやってくるIndustry4.0やSociety5.0を支えるものになっていくと考えています。

◆:すごいですね!開発までには長い時間がかかったんでしょうか。

小林先生:研究のきっかけになったのは博士課程のときにお世話になった研究所でした。ここでは新しい材料の開発を行っていたんですが、新しい材料が作られる最中にどんなことが起きているのか見たい、という話になったんです。作っている途中に何が起きているかがわからないと、なぜその材料ができるのかはわかりません。でも、材料ができる環境は高温だったり高圧だったりして、最中を見るのはとても難しいんです。そこで、そんな環境でもリアルタイムに何が起きているのか見えるようなセンサの開発を始めました。20年くらい前の話です。

当時は、コンピューターの性能もそれほどよくなくて、データを収めるための保存領域も小さかったのですぐにいっぱいになっていました。今はコンピューターの性能もよくなって、保存容量もたっぷりあります。しかも、クラウドに貯めておくこともできるようになりました。やっと開発したセンサが活用できる環境が整ってきたんです。日本のモノづくりの工場などで活用してもらえれば、リアルタイムに品質や異常を検知できるようになって日本の企業の競争力を高めることもできるんじゃないかと思っています。

多くの人にこのセンサを活用してもらうためにベンチャー企業も立ち上げました。資金面や安定供給の面、品質保証の面など問題はたくさんありますが、社会の役に立つ製品が作り続けられるよう、理想をもってやっていこうという仲間と頑張っているところです。

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予測を覆す楽しさが研究にはある

◆:先生にとって研究の面白さって、どんなところですか?

小林先生:不可能を可能にする、つまり予測を覆すのがとても楽しいと思っています。できないと思っていたことでも、できるようにするにはどうしたらいいかを考えて、やってみるとちゃんとできるようになる。今まで測れないだろうと思っていたことが測れるようになる。それが楽しいんです。できなかったことができるようになったんですよって言っても、なかなか信じてもらえない悔しさはありますが。

◆:先生はお子さんもいらっしゃると聞きました。

小林先生:3歳になる子どもがいるんですが、女性研究者が研究を続けていくのは本当に大変だな、と思うことも多々あります。使える時間が少なくなる中で、いかに凝縮して研究していくか、が今の課題ですね。

不思議な材料の原理を解明したい

◆:今後は、どんな研究をされていく予定ですか?

小林先生:今までは応用の研究を主体にやってきましたが、今扱っている材料がなぜ、こんな性能をもつのか、その原理について解き明かしたいという思いもあります。開発したセンサに使っている材料なのですが、多くの人がセンサの性能を信じてくれない理由の一つがこの材料。「この材料で、こんなに特性がいいはずがない」と思われているからなんです。確かに理論的にはその通りで、なぜこんなに特性がよいのかはほとんど解明されていません。

間接的にですが、ようやくその証拠のようなものがつかめてきました。ここから真相に行きつくためには、相当の時間とお金、技術、研究機器が必要になると思います。今までは少人数での研究開発をやってきましたが、いろいろな得意分野を持った人と一緒に解明していけたらいいなと思っています。そして、解明した原理を使って、もっといい材料をつくりたいというのが今の夢です。

有限の時間の中、今ある状況で何ができるかを考えよう

◆:学生の皆さんに、メッセージをお願いします!

小林先生:20年前にセンサの開発を始めてから実用化するまで、気が付けばあっという間でした。材料の原理を解明したいと思っているけれど、求める結果に行きつけるかはわかりません。時間は本当に有限。学生の皆さんには今の貴重な時間を有効に使ってほしいと思います。

そのために大切なのは「今ある状況で最善の努力をすること」だと思っています。苦しい状況やうまくいかないことを嘆いても、その状況は変わりません。気持ちを切り替えて、今、自分ができる最善のことはなにかを考えてほしいですね。現在は、コロナウイルス感染防止対策で研究室の利用も禁止されている状況です。そんな中でも、今わかっていることをまとめて論文の準備をしたり、新しい知識を身に着けることはできます。予測しないことがおきても、解決策を自分で考えてみること。思いもしない状況も環境の一部として受けいれ、その中で自分にできることは何かを考え、実行できるような人になってほしいですね。
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(2020年6月16日掲載)

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