年頭所感
皆様、明けましておめでとうございます。年末年始を楽しく和やかに御過ごしいただけたでしょうか。
御家族や御親戚の方々、あるいは、ご友人等と共に過ごされ、新たな年に向かって鋭気を充分に養っていただけたことと存じます。
さて、今年は寅年、寅の文字はもともと「動く」言う意味の文字から由来する様ですが、虎からイメージできる「力強さ」をもって、「前進」そして「飛躍」の年にしたいものです。
一方、世の中は大変厳しい経済状況にあり、これまでの延長上ではこの難局を乗り切れないと言われています。新しい産業革命が進行していると言われる様に産業構造も大きく変化しています。社会は新しい価値の創造と変革を求めています。特に我が国では、昨年、政権交代という大きな出来事があり、様々な形で変化が生じております。ご承知の通り、予算面でも高等教育や科学・技術研究、さらには大学の在り方などについても問題を投げかけられた年であったと思います。高等教育の将来を危惧して本学としても関係者と協力して様々な対応もさせていただいたところです。
昨年末には政府予算の原案が提出されたことはご承知の通りです。さらに新政権から年末12月30日に「新成長戦略:基本方針 -輝きのある日本へ-」が発表されています。そこには、明るい未来に向けて、政治のリーダーシップのもと、この危機を100年に一度のチャンスと捉えて、環境・健康・観光を基軸として2020年度にはGDP650兆円を目指すという成長戦略を策定・実施することが述べられています。その中には、科学技術の重要性、人材の育成、さらに留学生の積極的受け入れ等、高等教育が果たすべき事柄についても言及されています。今年6月頃までにまとめられる「新成長戦略の最終まとめ」の中に「将来への投資」としての高等教育の重要性が明確に位置づけられることを期待するとともに、それが実現するように関係各方面とも引き続き議論を重ねていきたいと思っています。本学としても新しい時代に向けて、社会の負託に応えてその使命を果たすべく改革を進め、力強く動き出したいと思います。
昨年は、本学設立60周年ということで様々な記念事業を展開して参りました。設立60周年記念式典を始め、10月末から11月にかけて行いました行事を中心に、昨年末には地元でテレビ番組としても放映されたところです。記念行事については、勿論、この3月までにはいくつかの事業が計画されています。本学はこれまで諸先輩が築いてこられた歴史と伝統を受け継ぎながら、60周年を経て、今年から次の60年、100年に向けて新しい一歩を踏み出すことになります。
ご承知の通り、この4月からは第二期の6年間の中期目標・計画期間に入ります。皆様とともに作製した本学の目標計画の実現に向けて進んでまいります。その基盤となる来年度の本学関係の予算については、その内容が必ずしも明確にはなっていません。しかし、国立大学の運営費交付金は全体として21年度に比べ引き続き1%弱の減少、また、科学研究費補助金や診療経費などについてはわずかではありますが増額方向となっています。一方、特別教育研究経費や国際化支援のためのグローバル-30(G-30)や先端研究のためのグローバル-COE(G-COE)等の経費については大幅な減額になっており(例えば、教育に関する新しい取り組みに関するGPは新規採択中止、G-COEについては20%強の減など)、その運用方法にもよりますが、その結果として、本学においても少なからず影響を受けるものと考えております。平成22年度の本学の予算の編成については、これらを踏まえて第二期中期目標計画の実現を見据えた編成を進めたいと思います。教育や研究、医療をはじめとする様々な社会貢献等、社会の皆様からの負託に応えて大学が果たすべき使命・役割をしっかり果たしていくために、限られた財源のなかでは、未来への「選択と集中」を効果的に進めることで、社会の要請と各組織の努力などを勘案しながら、本学の活性化とその使命の達成に全力を尽したいと思います。
平成21年度までの第一期の中期目標・計画期間についての最終的な評価結果を踏まえて、4月からの第二期の中期目標・計画期間における本学の夢の実現のため、諸課題の早期の解決を経て、「我が国を代表する研究拠点大学」としての熊本大学の輝かしい未来を創りだすために、さらなる大きな一歩を皆様と共に踏み出したいと思います。
熊本大学が、卒業生、在学生、教職員、そして地域の皆様が誇れる大学として益々磨きをかけ、社会から憧れられる大学として新たな挑戦に取り組んでいくことが求められています。法人化以来推進して来た本学の基本戦略である、人材育成、先導研究、地域及び国際社会への貢献を表現した「熊本大学KU4U」 (Kumamoto University for You:Upgradeな教育と人材養成、Uniqueな研究、地域とのUnion,Universalな貢献)のミッションを堅持しながら、さらに「我が国を代表する研究拠点大学」として、学生が国際社会の中で益々元気に輝く教育の実現、世界のトップとして世界を先導する研究の推進、さらに国際化の推進(すなわち、教育研究の国際連携と当たり前に身近に留学生がいるキャンパスの実現)などによって、世界的にも卓越した存在感を示す大学としての地位を獲得するため、様々なチャレンジを通して大きく飛躍していきたいと思います。この3月には、第二期の目標計画達成に向けてのアクションプランを公表したいと思います。
すでに、これらの目標を実現するために1月1日を期して、医学薬学研究部の生命科学研究部への改組、新年度より、発生医学研究所の全国共同利用機関への昇格などをはじめ、現在30件を越える教育GPの実施、大学院先導機構による拠点研究の推進と発生医学、エイズ学、衝撃科学などに関する3件のグローバルCOE、KUMADAIマグネシウム合金等の研究推進、有機薄膜材料に関する地域科学技術振興・産学官連携事業、みなまた環境マイスター事業などを推進しているところです。加えて、永青文庫、五高記念館、薬草園などの教育研究活動なども本学を代表する宝として社会に紹介されているところです。また、「熊本大学フォーラム」も昨年は第7回フォーラムを「60周年記念事業」の一環として「International Presidential Forum:国際学長会議」として実施し、学術国際ネットワークの構築を進めているところです。今年もいくつもの国から、その共同開催を提案いただいています。予算状況を考えながら、第8回熊本大学フォーラムの海外での開催をも視野に入れて考えたいと思います。国際化の推進のために設立された「国際化推進機構」を中心に昨年度から実施している「国際化推進の基盤整備」事業について、本学の教育研究の益々の国際化推進のために、その継続的・効率的な実施が必要と考えております。
熊本大学の発展の基盤としての施設整備・設備機器の整備についても、その一部は昨年の補正予算で手当てされたものが数多くあり、年度内には全て完成・配備されるものと考えております。新年度においては、これらを有効に活用いただき、教育研究の高度化や地域医療・先端医療の推進に尽力いただければと思います。特に補正予算で導入された設備機器については、後続年度において機器の維持費などは手当てされませんので、新設の機器を用いた研究においては、新しい研究費獲得に向けた取り組みを御願いしたいと思います。施設整備については継続的な整備が必要です。黒髪北地区の改修整備についても引き続き進められるべきものと考えております。さらに、来年度から実施される全ての事業所でのCO2の年1%削減義務に対応する整備も始めなければなりません。改めて皆様のご協力を御願いする次第です。
もとより本学の諸活動は、担当理事、副学長、病院長、各部局長等の指揮のもと各部局の教職員の皆様、病院関係者、技術職員はじめ研究国際部、企画部、学術情報部、附属病院事務部、総務部、財務部、施設部などの職員の皆様一人一人の本学の発展への熱い思いや志のもと、それぞれの立場での努力と創意工夫で成り立っております。日頃の献身的な努力に対して改めて心から感謝いたします。新しい年においても一層のご尽力を御願いする次第です。まずは、新年早々から、来年度入学者の入試関係業務が目白押しです。特に今年は新型インフルエンザの影響で、通常の年に倍する入試日程が設定されています。教育の機会均等と公正な選抜に向けて、遺漏無き様、準備作業を進めていただきますようお願いいたします。
本学は、地域のリーダーとして、地域の皆様に誇りに思っていただける大学として、 また国際的にも存在感のある国際社会から憧れられる存在感のある大学として成長するという新しい夢に向かってのあらゆる努力を結実させたいと思います。困難な時代に真正面から向かい合って怯むこと無く前に進みたいと思います。皆様の一層のご協力と激動の時代を乗り越えるための様々な知恵を大いに期待しています。
結びに、新しい年が皆様にとって、すばらしい年でありますよう、また皆様の御健康と御活躍を祈念いたしまして、年頭の挨拶といたします。
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