熊本大学創立60周年記念式典式辞
本日ここに、文部科学省加藤審議官、蒲島熊本県知事、寺崎熊本副市長、有川九州大学総長、熊本県ゆかりの衆参両議院の国会議員の皆様、海外の諸大学の学長先生方及び関係諸機関のご来賓の皆様方のご臨席を賜わり、熊本大学設立60周年記念式典を挙行いたしますことは、私たち熊本大学に関わる全てのものにとって、この上ない喜びであります。
熊本大学の歴史をたどってみますと、例えば、医学部は250年余り前に設立された再春館と蕃慈園に源を発し、また、熊本大学の母体となる第五高等学校から数えましても約120年に及ぶ歴史を有する我が国の最も長い歴史を持つ大学として、その伝統を誇っております。昭和24年、戦後の学制改革によって、熊本市に所在していた第五高等学校、熊本医科大学、熊本薬学専門学校、熊本師範学校、熊本青年師範学校、熊本工業専門学校など旧制の諸学校が統合され、新制国立大学として熊本大学が誕生いたしました。新制大学設立から数えますと今年で60周年、還暦の年を迎えます。
設立当初は、法文・教育・理・医・薬・工の六学部に、附属図書館、医学部附属病院、体質医学研究所からなり、当時の大学の規模は、学生の入学定員が1、070名、教員と職員を合わせた教職員定員が1、484名でございました。
昭和30年代には建物も徐々に整備され、京町、内坪井、出水に分散していた教育学部も黒髪キャンパスに移り、昭和39年には教養部が設置されるなど、次第に大学らしくなっていきました。その後、組織の拡充を図り、昭和51年に医療技術短期大学部を設置、昭和54年には法文学部が改組により文学部と法学部の2学部となります。
現在では、文・教育・法・理・医・薬・工の7学部のほか、8つの大学院研究科等、研究所・センターの数も13に及びます。さらに医学部附属病院を有しており、学生総数約1万名、教職員数約2千名からなる中核的な総合大学に発展して参りました。この間、今日まで、本学は10万人を超える有為な人材を社会に送り出して参りました。
平成16年には、我が国の国立大学は「国立大学法人化」という歴史的な転換があり、本学は、「教育基本法及び学校教育法の精神に則り、総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的及び応用能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」ことを目的として新たにスタートいたしました。
もとより、今日の大学の社会的使命は、教育(人材育成)、研究(知の創造)、社会貢献(教育や研究の成果の社会への還元)の3つに集約されます。熊本大学では、教育研究組織を、生命科学系、自然科学系、人文・社会科学系の3分野に大くくりし「人の命、人と自然、人と社会」の諸科学の深化を通して、総合大学として教育と研究のバランスのとれた発展を図り、その成果を社会に還元していきたいと考えております。さらにグローバル化した社会の中で、我が国のみならず、世界を視野に入れた国際交流も活発に行っております。現在では、大学間・部局間の協定を、世界27か国、93の機関と締結し、海外に2ヶ所のオフィスを構えるに至っております。
来年度からの第二期の中期目標計画に於いても、その前文に、
熊本大学は、生命科学、自然科学、人文・社会科学の各分野にわたる、充実した学部、大学院、研究所等を備えた、我が国を代表する研究拠点大学としての役割を果たす。そのために、アジア諸国はもとより広く海外の諸大学等との人的・文化的交流を通じて、「人の命、人と自然、人と社会」に関する活発な研究活動を推進し、その成果を基盤として教育・研究の国際性を高め、大学院教育においては、国際社会のリーダーとして活躍できる先導的研究者及び高度専門職業人を養成する。学部教育においては、その基礎としての幅広い教養を持ち高度な課題解決能力を有する人材を育成する。また、教育・研究活動の成果を活用して、広く地域及び国際社会に貢献する。
と記載させていただいております。
特に、重要な3項目として、第一に、
1)学生が豊かな人生を送るための支援としての知力を獲得するための「教育」の強化
すなわち、教育においては、今後益々必要になる総合力の源としての教養教育の重要性に充分配慮して一貫した教育体系の整備が重要と考えています。
第二に、
2)G(グローバル)-COEをはじめとする特色ある研究の推進と研究力の強化があります。
研究面において、世界のトップでありたいと考えています。現在、自然科学分野ではG-COE研究として推進されている衝撃エネルギー科学研究や、新しい環境負荷の少ない熊大マグネシウム材料研究等は、社会から注目されているところです。生命科学分野では、発生医学研究やエイズ学研究の2つのG-COE研究をはじめとして、先導的な研究が数多く進められているところです。人文社会科学分野では、今後、その研究の特徴を生かして、新しいG-COEレベルの研究の推進を目指したいと考えています。特に永青文庫研究センターは、社会からも、今後世界的な教育研究拠点として発展して欲しいとの大きな期待が寄せられています。
そして、第三には、
3)留学生の倍増を目ざすなど大学の国際化に向けての国際交流の強化 をあげています。
現在本学は、約300数十名の留学生が在籍していますが、それを、出来るだけ早い時期に500人とし、将来的には、10人に1人が留学生、すなわち、世界の各国から1、000人の優秀な留学生が熊本大学に来て学んでいるという状況を目指したいと思います。学生諸君が、国際的な環境の中で学び、卒業後、世界を舞台に活躍する際に、多くの学友が世界の各地にいて互いに助け合うことが出来る様な大学を目指したいと思っています。一昨日も世界各地の25大学等から学長あるいは副学長先生に熊本にお集まりいただいて、「International Presidential Forum; 世界学長フォーラム」を開催し、グローバル化社会の中での大学の国際化と人材の育成のための国際的な連携について協議したところです。
勿論、これらの課題の他にも地域医療や先端的な高度医療の担い手の育成等、現在多くの課題に取り組んでいるところですが、この3点を当面の課題として掲げて取り組んでおります。
設立60周年という節目を迎えた今年、私達はこれまで本学を築き上げ支えてこられた歴代の学長はじめ、関係の皆様方のご苦労に思いを馳せ、そのご尽力に深く感謝しつつ、これからの熊本大学の新たな飛躍に向けて行動して参ります。
先人たちの残した伝統の豊かな香りを受け継ぎ、未来志向の研究拠点大学として、世界のリーダーを育成してまいります。また、地域の誇りであり世界から憧れられる存在として、皆様と共に、その新しい未来を創りだして参りたいと思います。
熊本大学は、在学生、卒業生、職員、それに地域の皆様が、誇れる大学であり、社会から憧れられる存在として、また、地域に根ざしてグローバルに展開する大学として発展する決意を新たにしているところでございます。
ご来賓ならびに関係各位におかれましては、今後とも、私どもへの、一層のご支援のほどをお願い申し上げ、60周年記念式典の式辞とさせていただきます。
本日は、誠に有り難うございます。
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