平成16年度熊本大学卒業式・修了式 式辞

熊本大学長 崎元達郎 皆さん、ご卒業・修了おめでとうございます。

本日、ここに、ご来賓及び名誉教授の諸先生方のご臨席を賜り、副学長・理事・部局長と共に、平成16年度すなわち熊本大学法人化初年度の卒業式・修了式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びであります。

医療技術短期大学部、学部、大学院のそれぞれの課程に必要な年限を本学にて修業され、晴れて本日のこの式典に臨むことができますのは、皆さん自身の努力と研鑽の賜物であり、深く敬意を表します。

中でも病気や経済的理由等の避けられない事情で規定の年限以上に在学せざるを得なかった方々、そして母国の期待を担い、本学での留学を立派に全うされた留学生諸君、あるいは、熊本大学への強い愛着のため規定の年数以上に在学された方々にとっては、感慨もひとしおと推察いたします。

諸君の今日がありますのは、教職員や先輩諸氏の温かな指導・助言、ご家族や学友の協力と励ましなどの力添えがあったからであることをこの機会に改めて肝に銘じていただき、感謝の気持ちを持っていただきたいと思います。

そこで、僭越で押し付けがましいのですが、ここで少しの時間を皆さんに差し上げますので、目を閉じて皆さんがお世話になった人々の顔を思いおこしてください。

どうぞ!〈 10秒間 〉

ありがとうございました。 そして、今皆さんが最初に思い浮かべた方々、おそらく学費等の経済的支援を受けたお父様、お母様をはじめとする保護者の方々が多いと思いますが、その方々に、卒業証書・学位記をお見せして、"ありがとうございました"と口に出して、感謝の意を表すことをお願いいたします。

私としましても、これまで皆さんを深い慈愛によってお支え下さったご家族をはじめ、惜しみないご指導ご助言を給わった教職員、諸先輩各位に対し、衷心より深く感謝申し上げます。

さて、皆さんは自分のやりたいことや夢を実現するために"未来を生き抜く力"の基礎を本学で養ってこられました。高校を卒業して間もなく本学に入学された頃の幼かった自分を思い起こしてみて下さい。卒業研究、修士論文、または博士論文の作成に追われた徹夜の連続を含む日々、それに続く厳しい発表会、審査会を終えて晴れて迎えた今日の日の諸君は逞しく輝いており本学において人生で最大の成長を成し遂げたと言えると思います。皆さんの力、そして熊本大学の力に大いに自信を持って下さい。

今まで人生の約三分の一の長い間、皆さんは実社会の荒波から防波堤で守られた平穏な港に停泊し、せっせと食糧や必要物資を積み込んでいた船にもたとえることができます。そして今日は船出の日であります。グローバリゼーションや情報化のめまぐるしいほどの進展、少子高齢化、地球環境問題、行財政改革、経済の低迷など厳しい荒波の待つ大海原への船出であります。

希望と幾ばくかの自信と共に一抹の不安を持つのも当然でしょう。しかし、皆さんはこの荒波を乗り越えるに十分な航海術を持っている筈であり、さらには、自ら選んだ道において熊本大学で培った力を発揮し、少しでも荒波を治めて頂きたいと願っています。

すなわち、自らの満足と幸せを築くことを最優先として良いのですが、結果として豊かな文化を育むより良き社会の構築、少子高齢化社会における医療と福祉、環境を重視した科学技術による経済の再建等に貢献していただけることを期待しています。若き諸君の力、そしてやがて生まれる諸君の子どもたち・孫たちが21世紀を支えねばなりません。そこで、三つのことを申し上げたいと思います。まず、自分のやりたいこと夢の実現のために「具体的な達成目標をたてる」こと、二つめは、「誠実なる努力の持続」、そして最後に「心身の健康維持」であります。私は研究者の道を選びましたが、そのときの達成目標は「世界で初めての事実の発見と事象の解明を行う」ことでありました。もちろん私なりに、達成したと思っています。皆さんもそれぞれの道で具体的な達成目標をたてられ、それを行動力の源にされるよう勧めます。目標を達成しようと努力するプロセスが人を幸せにするというのは事実であるからです。それから、皆さんが今までに得られた新しい知識や技術の有効期間は残念ながら10年以下だと思われます。有効期限が終わるまでに、大学で得たもう一つの力"自ら学習する力、考える力"を発揮して更なる問題解決能力を養うという「誠実なる努力の持続」が必須であります。そして三つ目ですが、我々は生身の壊れ易い人間であることを忘れてはなりません。病気や事故等により心や体が壊れれば夢や幸福の実現は困難となります。特にこのストレス社会では"心の病"が大敵です。私がアドバイスできる対処法は精神的安全弁を用意しておくことです。スランプや窮地に陥った時には、"人生生きてるだけで丸もうけ"と開きなおる事で脱出することも可能です。つまり、絶望から破局ではなく「開きなおり」から「希望」を生み出す脳細胞のプログラムを作成しておくことです。

さらに、一人での脱出が困難な時に諸君を救ってくれるのは、あるがままのあなたを愛してくれる伴侶、家族、親友ですから、伴侶、親友を持つことが人生にとって重要です。

「目標の設定」「誠実なる努力の持続」「心身の健康」の三つのことを大事にして、自分自身のみならず、家族や人々への愛を力にして、「死を迎えた時に納得し満足できるような充実した人生」を歩まれ、同時に後世への偉大なる遺伝子を残していただきますよう期待いたします。

さて、皆さんは熊本大学が法人化されて最初の卒業生、修了生になります。言いかえますと皆さんの充実した人生、幸せな人生がそのまま熊本大学の教育力の証となるわけです。熊本大学は引き続き厳しい競争的環境の中で先端的研究、基礎研究、高度先端医療の推進とそれらに裏打ちされた教育・人材育成に全力を尽くす所存であります。皆様におかれましても、この後折りに触れて母校の研究室やサークル等を訪ねていただき、後輩や私共に力添えをいただきますようお願いいたします。

最後に巣立っていかれる皆様の生きる力強さ、元気さを確かめたいと思います。本来なら一人ずつのお名前を読み上げたいところですが、学部等の別に卒業生、修了生の所属と人数を申し上げますので該当する人々は人数を読み上げた直後に"はい"と大きく答えてください。声の大きさで諸君の「明るい将来」を確認したいと思います。

【文学部177名】、【教育学部及び専攻科・別科392名】、【法学部248名】、【理学部189名】、【医学部94名】、【薬学部88名】、【工学部569名】、【医療技術短期大学部および専攻科180名】。

【大学院文学研究科】、【教育学研究科】【法学研究科】【医学研究科修士/博士課程】【医学教育部修士課程】、【薬学研究科博士前期/後期課程】【薬学教育部博士前期課程】、【自然科学研究科博士前期/後期課程】、【社会文化科学研究科】、合計655名。

ありがとうございました。以上、総勢【2592名(内、留学生52名)】の皆さん一人一人に対し、熊本大学を代表し、皆さんの前途洋々たる船出を祝します。おめでとう!!そして、Bon voyage!!

熊本大学長
崎元達郎




お問い合わせ
経営企画本部 秘書室
096-342-3206