法人化を迎えて

熊本大学長 崎元達郎

平成16年4月1日をもって、本学は、他の88の国立大学と同じく、法人格を与えられ、「国立大学法人熊本大学」として新しくスタートし、大学自らの責任でその教育・研究機能を発揮していくことになりました。

学長と役員会にはトップマネージメントが期待されており、私としましても研究の自由を守り、質の高い教育と高度な研究・医療を保証するためにリーダーシップを発揮すべきと考えております。理事としては、足立啓二副学長(教育担当)、小野友道副学長(研究担当)、平山忠一副学長(目標計画・評価担当)、大迫靖雄理事(人事・労務担当)、長木正治理事(財務・施設担当)を学内からお願いし、学外理事としては弁護士としての実績、経験が豊富な野口敏夫氏に法務担当としてお願いしました。また、業務監査を行う監事としては、ハーバードビジネススクールMBAの学位を持ち都市銀行取締役経験のある高橋誠一氏を常勤とし、非常勤監事としては実績が豊富な地元の公認会計士である石見敏行氏にお願いしました。これら二人の方から経営に関するご指導も得られるものと考えています。

経営協議会は、委員の半数以上を学外の有識者で構成することが定められています。本学では、今までの運営諮問会議メンバーを中心に財界、産業界、学界、マスコミ、文化、行政、同窓会等から10名の委員にお願いしました。

大学の裁量や自由度が増えると言われていますが、財政的には大変厳しく、附属病院に対する毎年2%の経営改善努力や一般管理費における毎年1%程度の効率化(削減)などが求められています。人件費と物件費の区分は理論上無くなりますので給料(人件費)を減じて教育研究を行う物件費を増やすことも可能な世界となりますが、一般的には財源不足を打開する方法としては、節約と効率化以外に競争的外部資金の獲得を考えざるを得ません。科学研究費補助金を含めて競争的外部資金の25%増を中期計画に挙げていますように、今後一層これらの外部資金の獲得が大学全体及び教員個々にとっても重要になります。

中期計画に記したものも含め、本学の当面の課題として次のものがあり、私はその実現に努力したいと考えています。附属病院中央診療棟の建設と黒髪南地区のPFIによる改修の確実な実施、情報ネットワーク館としての図書館の整備、放送大学熊本学習センターの誘致、黒髪北地区の教育研究スペースの拡充整備、発生医学研究センターの研究所への昇格、21世紀COEの獲得等による教育研究拠点の形成、自然科学系大学院の部局化、医学部保健学科系建物の整備と同大学院の設置等であります。

この法人化は、大学にとって明治以来の大改革でありますから、文部科学省も含めて、試行錯誤の世界であることは否めません。したがって、物事を拙速に考えず、教育研究の長期性や中長期的展望に立って柔軟に対応し、日々の改善の努力を継続することが肝要と考えています。その中で、法人化後の予算を初めとする競争的環境は生易しいものではないとの認識と教職員の意識変革が最も重要であり、構成員ひとり一人が何をすべきかをどこまで強く意識できるかがポイントであると考えています。構成員ひとり一人の力で熊本大学を、地域に根ざし、世界に発信する個性輝く大学、学生本位の運営を行う大学として充実・発展させる所存でありますので、皆様の御理解と御支援を心からお願い致します。

熊本大学長
崎元達郎




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