外国人のための防災を考える留学生グループ[KEEP]

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始まりは被災経験のシェアから

熊本大学にある、防災や熊本地震からの復興を目的に活動する団体。KEEPもその1つで留学生のグループです。
KEEPのメンバーは5名。全員、2016年の熊本地震で初めて大きな地震を経験しました。代表を務める大学院社会文化学研究科のアンドリュー・ミッチェルさんは、前震も本震も自分の部屋で被災しました。「本震の後は黒髪キャンパスへ避難し、避難所の外で寝ました。そして、友達の友達がいる宮崎へ避難しました」と被災当時を語ります。同じく大学院社会文化学研究科のフランシス・ワルジライさんは「前震のときは寮の隣の駐車場に友達と集まったので、孤独を感じることはありませんでした。本震後は避難所へ行きましたが、日本語の指示は難しかったです」と語ります。薬学部のカイ・ザー・ウィーン・ミンさんは前震後に大江キャンパスへ避難しました。「私はまだ少し日本語がわかる方だけど、中には日本語がわからない留学生もいた。本震のとき、先生が『建物内は危ないから外へ逃げて!』と指示をされたのですが、留学生はなんで逃げるのかがわからずパニックになりました。その後もトイレができずに困りました。どこのトイレが使えるのか表示があるんですが、誰かに尋ねなければわかりませんでした」。このさまざまな経験の違いを知ったことで、今後の防災に役立てていきたいと、同じ授業を受けていた4名が立ち上がったのです。
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熊本を飛び出し、神戸、東京、ドイツで情報発信

KEEPの活動は、ワークショップやブログ、Facebookを通じて、自身の経験を情報発信すること。最初のワークショップでは日本人学生と留学生とが自身の被災経験について共有し合いました。日本人は「外国人は地震発生時にどういう行動をとるべきかがわからない、ということを理解していなかった」と話、一方で外国人は、「日本人は地震に慣れていると思っていたが、実際はどういう行動をとるべきかわかっていない人が多かったということがわかった」といった意見が出ました。大学院社会文化学研究科のラッセル・ヤンジンさんは「外国人が大変だったことを日本人学生に知ってもらう良い機会になった」と語ります。
情報発信の一環として、さまざまな地域で被災経験やKEEPの活動についてプレゼンテーションすることもあります。2017年は1月に神戸、2月に東京で地震体験を話しています。アンドリューさんは留学先のドイツの大学でも行いました。「12月は神戸にいる留学生とワークショップを行い、外国人のための地震政策についてディスカッションしました。2016年に八代の高校生とも同じワークショップを行いました」とアンドリューさん。今後はYouTubeも使って情報発信をしていきたいと意気込みます。
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自分たちの誤りから学んで防災してほしい

日本人にとって熊本県は地震の少ない安全な場所というイメージがある場所でした。それは外国人にとっても同じで、大地震が起きても「日本=安全」のイメージは変わらなかったそうです。アンドリューさんもフランシスさんも、母国にいる家族に無事を伝えたとき、日本は安全な国のイメージがあるから帰ってくるように、とは言われなかったと話します。一方、カイ・ザーさんは「祖母は『なんですぐ帰ってこないの!?』と、とても心配していました。でも、両親は帰国しろとは言わず、『一人では危険だから、常に日本人と一緒に行動しなさい』と言いました」と語ります。
しかし、メンバーは「日本=安全」の固定観念がいけなかったという認識も持っています。「日本は安全な国のイメージがあるし、留学中に地震を経験する人はほとんどいません。私も家族も地震に遭うとは思っていませんでした」。しかし実際は違った、とアンドリューさん。「私たちの考えは誤っていたのです。それでもなお、自分は地震に遭わないと思っている外国人がいます。私たちの誤りから学んでほしいです」と、地震に対する備えの重要性を訴えます。カイ・ザーさんも「私たちが発信をしていくことで、他の地域で今から防災を始めてほしい」と続けます。
今後の活動についてカイ・ザーさんは「外国人のための避難訓練をしたい」と語ります。以前、熊本市国際交流会館との共同企画で外国人のための避難訓練を実施しました。「そのときに3日間生活できるための準備をして避難することや、小学校が避難所になっていることを教えてもらい、ためになった。新しい留学生が来るたびに開催したいと思っています」。
「KEEPのような留学生の防災グループには出会ったことがありません。おそらく他にいないから東京や神戸からもKEEPに声がかかるのだと思います」とアンドリューさん。KEEPは外国人のためだけでなく、日本の防災にも重要な役割を果たす存在になっています。
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(2018年3月8日掲載)
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