WEBマガジン「KUMADAI NOW」受け継ぐ伝統と現代のスタイルを織り交ぜて、目指せ全九州大会優勝!

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目標は「全九州大会優勝」!しかし…

image_02.jpg 静けさの中に聞こえるギギッと弓のしなる音。矢が放たれ、28m離れた的にパンッと当たると、「セイッ!」という声が響きました。射場は緊張感でいっぱいです。しかし、的に矢が当たろうが外れようが表情一つ変えずに、とても落ち着いているように見えます。熊大弓道部の主将を務める文学部3年・平山雄一朗さんは、「いつも緊張してますよ~。早く離したい!って思って、ドキドキします」と笑いながら話してくれました。
部員は、33名。引退した4年生や院生の先輩も研究の合間を縫って練習に顔を出すそうです。先輩も含めると総勢52名。人数が多いといろんな人がいるので、一つにまとめるのが大変だと平山さんは語りました。特にそのことを実感したのは、先輩と代替わりをする前に自分たちの代の目標を決めたときでした。「僕達の代の最後の大会である『全九州大会優勝』を目標に掲げました。でも、全九州大会だけでなく、『全大会で優勝すること』と言う人もいたし、大会の勝敗ではなく『美しい弓道を目指すこと』と言う人もいました。それらをまとめるのは大変でした。最終的には、それぞれの目標を極めた集大成が全九州大会だ、ということで『全九州大会優勝』にしました」と平山さんは当時を振り返ります。その目標を達成するために、月・火・木・金の放課後だった練習日を月・火・金の放課後と土曜日の午前中に変更しました。「大会は朝からあるので、大会となるべく近い環境の中で練習をした方がいいと考えたからです。先輩のかたちを受け継ぎながら、自分達なりにアレンジを加えています」。

強さの秘密は、受け継がれていく伝統と師範の教えを守ること

image_03.jpg 先輩のかたちを受け継ぐ―…弓道部の歴史は五高時代まで遡ります。今年の新入生は58代目になります。弓道部の歴史の深さは道場のあちこちに見受けられます。ズラリと並んだ名札板、数多くの盾やトロフィーは数々の大会で勝利を収めた強豪校の証です。先輩が寄贈した練習道具もたくさんあります。
「この前、大掃除してたら、金子清則先生の矢が出てきたんですよ。」金子清則範士とは、熊本に伝わる古流弓術の日置流肥後道雪派の師範の方です。「博物館に飾られるレベルだよって言われて…。怖くてあちこち触れないですね(笑)」と笑う平山さん。道場も30年ほど前にOBによって出来たものです。OBの方は支援だけでなく、時々、練習に顔を出し、後輩の指導もするそうです。
「大学で、こんなに環境の整った練習場は他にはありません。OBの方のサポートが大会の結果に繋がっています」と平山さん。そんな弓道部について、「長い歴史がある分、それを自分達の代でダメにしないように、というプレッシャーがあります。しかし、この長い歴史の中で培われた環境の良さは弓道部の良さです」と語ります。
弓道部の強さの秘密は、OBの力だけではありません。50年近く指導を続ける尾方先生は、日本武道連盟から功労賞を受賞するほど、弓道界では有名な指導者です。平山さんは高校から弓道部に所属していましたが、きちんと師範がついたのは熊大弓道部に入部してから。尾方先生からは技術よりも、正しい弓の引き方や作法といった基礎的なことについて指導を受けました。若い頃は多少おかしくても無理がきくけれど、それでは年をとってから弓が引けなくなるそうです。「ずっと弓を引き続けてほしい」という想いを尾形先生は持たれているようです。
技術面では、弓を引いて矢と的が一直線に並んだと思ってから3つ待て、と指導を受けました。「緊張するとすぐに離したくなるんですよ。ドキドキするし。でも、そうしたら、上手く飛ばないし、的からずれてしまうんです。だから、3秒待つんです」と平山さん。しかし、平山さんは高校時代から染みついてしまった癖で、入部当時は3秒待つことが出来なかったそうです。早く矢を放つことを弓道界では「早気(はやけ)」と呼び、「治らない病気」と言われています。「『3つ待て』という先生の言葉を意識し続けたら、大学2年生のときに3秒待てたんです。治ったときは嬉しかったですね」と平山さんは嬉しそうに話してくれました。
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部活とは、キツイことをみんなで楽しむこと

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新人戦、南九州大会、西日本大会、インカレ、全九州大会等、1年間に8回ほど大会に出場します。各試合が近づくと、練習への緊張感も増し、3年生は日曜日も弓を引きに来るほど、1日1回は弓に触れるようにしています。
日々の練習も20時には練習が終わるけれど、それから22時まで自主的に練習を続けるそうです。「サークルだと、月に1回しか活動しないところもあると聞いたことがあります。正直うらやましいと思うこともあるけど、キツイことをみんなで楽しむのがいいですね」と平山さん。キツイことを楽しめるのは、部員同士が仲良しだから。ただ単に仲良しなのではなく、練習中に、「今のはキレイだったよ」「今ぶれたよ」と褒めたり指摘できる仲です。
一見個人競技のように見えますが、その背景には、多くの人の支えがあること、そしてその魅力が弓道部にはいっぱいに詰まっていることを教えてくれました。
(2015年10月1日掲載)
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