平成22年度熊本大学卒業式・修了式 式辞

熊本大学長  谷口 功

本日、ここに、ご来賓各位のご臨席を賜り、理事・副学長・部局長と共に平成22年度の卒業式・修了式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びであります。ご卒業・修了の皆様、誠におめでとうございます。
一方で、去る3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う未曾有の東北関東大震災の被災者の皆様には、心からお見舞い申し上げます。また、残念ながらこの震災の中で犠牲になられた数多くの方々に対して、深く哀悼の意を表したいと思います。本学も派遣された医療協力の方々には今もご苦労をおかけしていますし、できる限り物資等の支援をさせていただいているところです。皆様の中にも、ご家族、友人、お知り合いの方々等、周りに被災された方もおられるのではないかと心を痛めております。このような中で、本年は、卒業式を中止した大学もありますが、本学は、ここに卒業式・修了式を挙行できることを幸せに思っています。あわせて、これからも引き続いて被災地域の復興に向けて長期的な視野の中で我々のできる限りの支援をしていくことを、皆様と共に誓いたいと思います。

皆様が本日のこの式典に臨むことができますのは、第一に皆様自身の今日までの努力と研鑽の賜物であり、その努力にまず深く敬意を表します。
また、留学生の皆様方は、母国の期待を担い、留学生活を立派に終えられました。母国を離れての勉学には幾多の困難があったものと推察いたします。留学生の皆様には、おめでとう、Congratulation, と申し上げます。本学で学ばれたことを充分に活用され、これからも皆様の母国と我が国の架け橋となって益々ご活躍いただくことをお願いいたします。
もとより、諸君の今日がありますのは、ご家族の皆様や友人の協力と励まし、教職員や諸先輩の温かな指導・助言などの支援があったからに他なりません。皆様もそのことを充分に認識しておられることと思います。今、皆様の脳裏には、お世話になった数多くの方々のことが思い起こされていることと思います。本日、皆様が手にされた学位記には、お世話になった方々の様々なご支援や思いが詰まっています。皆様には、本日の卒業・修了の喜びを、支えていただいた方と分かち合っていただきたいと思います。
この場をお借りして、本学を代表いたしまして、これまで本日の卒業生、修了生を深い愛情によって支えてくださったご家族をはじめ、ご指導ご助言をいただいた教職員、諸先輩、友人の皆様、さらには日常生活を支えていただいた地域の皆様はじめ関係各位に対し、衷心より深く感謝申し上げます。
さて、今日、国際社会は大きく変動しています。我が国は国際社会の中で真のリーダーとしての役割を果たすことが求められています。本学の卒業生・修了生には、それを担っていくことが求められています。高度な知識基盤社会が形成され国際化した社会の中で、この役割を果たすために、皆様にはこれまでに学んだことを駆使して様々な知恵を出すことが求められています。天然資源に乏しい我が国は、知恵を出して生きていくことを考えなければなりません。人が生み出す知恵や新しい価値を創りだす力、創造力、には無限の可能性があります。今こそ人財の力で大きく飛躍しなければなりません。
卒業生、修了生の皆様は、これまで、1)生き方の規範となる自己の形成、2)国際化社会を生きるための様々な能力、3)専門力を基礎として、社会の諸課題に対する問題意識や課題を発見し解決するための能力、さらには、4)各自の個性や専門力を駆使して新しい価値を創りだしていく創造力などを培ってこられました。加えて、5)仲間はもとより、世代や価値を異にする人々等とも協力して必要な事柄を実行していくためのコミュニケーション力や行動力とその総合力としての人間力について、少なくともその基盤的な力を獲得してこられたと思います。これからも不断にこれらの能力に益々磨きをかけて活躍いただきたいと思います。

ここで、皆様の卒業・修了にあたり、3つのことをお願いしておきたいと思います。
まず「本学の卒業・修了であることに自信と誇りを持って社会に貢献していただきたい」ということです。
私たち教職員は、皆様の人生の大切な時期に関わりを持てたことを「誇り」に思っています。皆様一人一人を心から「誇り」に思っています。本学は、「在校生、卒業生、教職員、そして市民の皆様が「誇れる大学」であることは、既に異論の無いところだと思います。さらに、社会の「憧れの大学」を目指して日々努力しているところです。本学が社会の「憧れの存在」となるための第一の指標は、皆様が社会で思う存分活躍いただくことです。皆様が熊本大学の卒業生・修了生として、「自信と誇り」を持って、それぞれの立場で自らの夢を大きく実現されるとともに、その夢の実現を通して大いに社会に貢献されることを期待しています。このことは、国立大学に対して国民の皆様から頂いた支援に応えることでもあります。逆に、皆様一人一人が、社会の輝く未来のために努力いただくことが、自ずと皆様のこれからの人生を豊かにすることにもなると確信しています。
2つ目は、「変化を取り入れ、新しい時代を創る」ということです。皆様が主役として新しい時代を創るということを忘れないで欲しいと思います。
今日の激変する社会にあって、物事の本質や大きな動きを見極めることが重要です。科学技術の急速な進展や世界的な産業構造の変化、世界規模での経済や社会構造の急速で大きな変化などが日々進行しています。しかし、皆様が大学で学んだ学術の「基礎」は、いかなる社会の中でもその本質を捉え、将来を導きだすための指針を与えるものであるはずです。しっかりとした基礎の上に立って、ものごとの全体的な動向や方向性とその動きの底流にある本質を見定めていただきたい。このことは、生涯「学習し続ける」ことにも繋がるものです。学ぶことに終わりはありません。
日々変化する今日の社会においては、社会や組織は変化すること無くして存続ができません。ダーウインの進化論の言葉を待つまでもなく、「変化に対応できる」ものだけが時代を超えて存続できるのです。これからは自ら進んで変化に対応できる力を身につけることが必要になります。大学は、生涯「学習し続ける」ことのために、これからも皆様を支援したいと思います。
時代は、これまでの価値を問い直し、リスクにも真剣に向かい合いながら、新しい価値や解決策を示すことができる人財を求めています。社会に巣立っていかれる皆様には、本学で培った力を存分に発揮し、いかなる困難にも怯むことなく、変化を取り入れ新しい時代を創りだすことに挑戦していただきたい。皆様が主役です。皆様には社会の変革の担い手としての役割を果たしていただくことを期待しています。皆様には、それができると確信しています。
3つ目は、「何事も決してあきらめることなく、やり遂げて欲しい」ということです。
最近の我が国の国民は、「自信を持ちはじめた日本人、あきらめない日本人」として高く評価されています。特に若い方々から「自分がやる」とか「社会に役立ちたい」と言う言葉が多く聞こえてきます。頼もしく、また、すばらしいことだと思います。
記憶に新しいサッカーのアジアカップでの戦いは、最後の瞬間まであきらめない選手の戦いざまが感動を与えました。科学技術の世界では、昨年の鈴木、根岸両教授のノーベル化学賞受賞や7年間にわたる宇宙の旅の末に帰り着いた小惑星探査機「はやぶさ」の成果などから多くのことを学びました。積み重ねられた科学技術のレベルの高さと粘り強い関係者の努力が賞賛されたところです。音楽の世界でも日本人のグラミー賞受賞などもありました。数日前にはこの未曾有の大震災の中で、9日間を生き抜いて救出された被災者の報道も世界を驚かせました。またこの間、命をかけて危険を顧みず災害に立ち向かい、冷静に任務を果たす人々や被災者でありながらも避難所で献身的に支援活動する数多くの人々を目の当たりにしたところです。これらの活動は、私たちに「夢と勇気」を与えてくれます。また、「すばらしい仲間」の存在が、高い志を支えていることを教えてくれます。卒業生・修了生の皆様には今日の卒業にあたって、何事にも決してあきらめることなく最後までやり遂げる「逞しさ」に益々磨きをかけていただきたいと思います。本学の前身である第五高等学校の校風と言われる「質実剛健」は、この「逞しさ」を表すものです。その伝統は、今も息づいていると信じています。

皆様の卒業年度である平成22年度は、平成16年に法人化した国立大学の第二期6カ年の中期目標・計画期間の最初の年でもありました。本学は、新しい中期目標・計画を策定して、「我が国を代表する研究拠点大学」を掲げ、「誇れる大学」から、社会の「憧れの大学」としての存在感の確立に向けて全学をあげて強力に取り組んでいます。
本学も、巣立っていく皆様と共に、これからも時代を先導するリーダーとしての役割を果たします。我が国を代表する長い歴史と伝統を持つ大学として、その社会的な使命を果たすべく、人財育成、知の創造を通して、地域や国際社会への貢献を進め、国際的に存在感を示す大学として益々尽力して参ります。しかし、重ねて申し上げます。本学の真価は、卒業生・修了生諸君一人一人の人生にあります。そのために、皆様には高い志と逞しさを持っていただきたく、「質実剛健」、この言葉を餞(はなむけ)の言葉として贈り、これからの輝かしい人生を祈りつつ、卒業、修了に際しての心からの祝辞といたします。

最後に、「皆様の元気な声を聞いて巣立っていく皆様の将来への決意の大きさを示していただきたい」と思います。また、東北・関東大震災の被災地域の皆様に復興を期して私たち一人一人がそれを支援することを誓って「がんばろう!日本」のエールを贈りたいと思います。また留学生にも協力いただきたいと思います。
一人ずつのお名前を読み上げて決意をお聞きしたいところですが、学部や研究毎に卒業生、修了生の所属と人数を申し上げますので、その場でまず起立してください。時間の関係で、学部と大学院2回に分けて行います。どの学部・研究科を出ても、社会からは熊本大学卒業生・修了生ですので、学部などの区別はいたしません。全ての学部卒業生諸君は、学部学生合計の人数を申し上げた直後に全員で、右手を大きく掲げて、元気よく“オー”と応じてください。大学院修了生も同じです。声の大きさが皆様の決意の大きさであり、将来への力強さの表現です。また、被災地域への応援の気持ちの大きさです。

それでは、学部からはじめます。【文学部185名】(起立)、【教育学部及び特別支援教育特別専攻科・養護教諭特別別科 計359名】、【法学部199名】、【理学部175名】、【医学部253名】、【薬学部32名】、【工学部539名】、以上、学部卒業生 合計1742名!!
(オー) すばらしい元気と未来への決意をありがとう。(着席)
続いて大学院です。学部卒業生に比べて人数が少ないですから、被災地の届くように大きな声で応じてください。【教育学研究科41名】(起立)、【社会文化科学研究科78名】、【医学教育部64名】、【保健学教育部14名】、【薬学教育部98名】、【自然科学研究科466名】、【法曹養成研究科16名】。以上、大学院修了生 合計777名!!
(オー) ありがとうございました。(着席)
卒業、修了おめでとうございました。

以上、総勢【2519名(内、留学生59名)】の皆様一人一人に対し、熊本大学を代表し、皆様の輝かしい未来を祝福します。
おめでとう!! Congratulation !  and、Bon Voyage!!

平成23年3月25日
熊本大学長 谷口 功

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