第13代熊本大学長就任のご挨拶

harada2015.jpg 第13代熊本大学長就任のご挨拶

本日、熊本大学第13代学長として就任いたしました原田信志でございます。よろしくお願いいたします。
学長就任にあたり、改めてその重責に身の引き締まる思いであります。もとより様々な事業の推進や改革など皆さまの協力なしには成し得ないのであり、これらの難局に向かって本学の教職員の皆様とともに、先頭に立ち、立ち向かって行く所存であります。重ねて皆さまの協力をお願いいたします。
これからの熊本大学の発展には、「創造する森」を殖やし、「挑戦する炎」が燃えたぎるほどのエネルギーが必要であり、そのための先導に心血を注ぐ覚悟であります。

1.熊本大学を取り巻くこれまでの状況
現在日本は少子化による人口減少、膨大な財政赤字、社会保障制度の破綻の可能性など深刻な国家的課題を抱え込んでいます。将来の社会がどうなるのか不安を抱きながら、現実には、世代間格差や地域間格差などが進み格差社会が急速に進行しているのを感じているのは、私だけではないでしょう。これらの問題に大きく影響を受けているのが、今の大学運営と言っても過言ではないでしょう。
平成25年度から26年度にかけ、熊本大学は「研究大学強化促進事業」「地(知)の拠点整備事業」「スーパーグローバル大学創成支援事業」の三つの事業に採択されました。これらの事業は、それぞれ、熊本大学が研究拠点大学として、地域貢献大学として、また国際化した大学として、どう大学を変えて行くのか、どのような人材を育成していくかが問われ、その実現に向けた試みが評価されたものであります。大学機能強化の視点としての 1.強みの重点化 2.グローバル化 3.地域創成 4.人材育成の全ての要素が入っています。従って、これらの事業が採択されたことは、採択されなかった他の大学に比べ、第三者評価的にも、財政的にも大きな利点を得たことになります。後は実行するだけです。

2.熊本大学の将来に向けての所信
(1)機能強化(研究力強化と教育力強化)を図ることにより、本学並びに我が国の国際的プレゼンスを向上させ、ひいては国立大学としての使命を果たします。
(2)「研究大学強化促進事業」「地(知)の拠点整備事業」「スーパーグローバル大学創成支援事業」の採択に伴い、研究拠点大学、地域貢献大学、国際的に開かれた大学を目指します。
(3)研究面においては、既に国際競争力を有する生命系並びに自然系の研究所・センター等を核に、また人文系においては、新たな研究拠点の育成を図ることにより国際共同研究の更なる強化と部局の枠を超えた融合的研究の推進を行います。また三分野の研究機能をより強固にするために『研究機構』を設置し、研究の先鋭化と大学院教育の充実を行います。
(4)教育面においては、「地(知)の拠点整備事業」と「スーパーグローバル大学創成支援事業」の推進を図るため、教養教育だけでなく、各部局に地域問題を考える、またグローバル人材育成のためのカリキュラムを構築し、地域に貢献する人材と国際的に活躍できる人材の育成を行います。
(5)地域貢献では、地方産業創生研究センター(仮称)を設置し、県との連携のもと地域の中小企業だけでなく六次産業の育成を図ります。
(6)ガバナンスについては、学校教育法等の改正も踏まえつつ全学で取り組むと同時に、とりわけ資源(ヒト・物・金)の再配分に関しては、学長主導の大学戦略会議を組織し、改革を加速させます。

3.大学に存在する四つの壁
大学にはいくつかの壁が存在します。学部の壁、研究と教育の壁、教員と事務職員との壁、教員と学生との壁などであります。これらの壁を乗り越えないと、これまで述べた改革は進まないだろうと思います。
現在の国家の財政状況を考えると、大学がこれまで以上に大きくなることは考えにくく、各学部には痛みを伴った機能強化が求められます。そのためには、学部の壁を取っ払った定員の移動や削減をする必要があります。また、理系、文系の二分法を取り払わなくとも、講義のナンバリングにより学生が学部の壁を越えてもっと自由に単位が取れるようにすべきでしょう。
研究と教育の間の壁は、その評価などの点で存在します。研究に従事する人が教育を蔑ろにすることは避けるべきで、逆のこともまた言えると思います。大学の方針によって、確かに優先順位が生じていると思います。しかし、お互いに批判はあっても、お互いを尊重した上での批判をすべきであり、そのような風潮を作りたいと思います。
教員と事務職員は、互いにタッグを組んで仕事を進めてこそ良い結果が得られると思います。ハラスメントや研究不正のない職場環境を作り、事務職員も教員と同様世界を見据えたグローバル感覚を持つよう指導したいと思います。
もう今は、教師のパターナリズムで一方的に講義をする時代ではありません。漱石の言う「師弟の和熟は育英の大本たり」は今でも通用する教育の基本ではないでしょうか。小グループの教育を進め、学生が興味を持って学問をし、学生と教員が相和して大学生活を送れるような環境作りをいたします。

4. 活気ある熊本大学を目指して
何事も立ち止まっては駄目で、常に自己変革がないと進歩がないとも言われます。また、第3期の中期目標・中期計画の中で設定される過大な目標を前に悲観する必要もないと思います。

集団が衰亡するのは、希望を失った時、お互い批判のみで事が進まない時、
集団が進歩しないのは、一定の平衡状態を保っている時、
集団が活性化するのは、困難に向かって一致団結した時だと考えます。

大きな目標を前に、お互い痛みを伴うかもしれませんが、希望をもって一致団結した熊大をそして活気ある熊大を作っていきたいと思います。



平成27年4月2日
第13代熊本大学長
原田信志

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