年頭所感

谷口学長 新年あけましておめでとうございます。
皆様には年末年始をご家族やご友人等と共に和やかに、また楽しくお過ごしいただけたでしょうか。
昨年末、新しい政権ができ、低迷する経済の再生を旗頭にしていますので、それを期待して今のところ市場の反応も好意的に表れています。また、新政権の公約には、「大学力は国力の基本である」との記述もあり、高等教育の重要性に対する認識に基づいた国立大学の機能強化への支援も強化されるものと期待をしているところです。一方では、昨年から始まった「ミッション再定義」と呼ばれる国立大学の特徴や強みの明確化の作業も引き続いて進められます。既に、本学でも教育学部や医学系の第1回目のヒアリングを終え、工学系も近々のヒアリングが設定される予定です。これに続いて残りの分野についても順次、ヒアリングが始まるところです。この機会を社会の皆様に大学をより良くご理解いただく絶好の機会、大学と社会を繋ぐ良い機会と捉えさせていただき、本学の将来をかけて取り組みたいと思います。
今年は巳年です。巳には、「始まる」とか「復活・再生」などの意味もあるようですので、巳年に因んで気分も新たに出発する年にしたいと思います。年頭に当たり、これまでの本学の取り組みを概観するとともに、本学のさらなる躍進に向けて所感を述べさせていただきます。

はじめに
東日本大震災からの復興がままならない中で、昨年は九州も「九州北部豪雨」という大災害に見舞われ、25名にも及ぶ方々が亡くなられ、また行方不明になっておられます。本学に近い龍田地区や阿蘇地域で大きな被害が出ました。本学もこれまで東日本大震災からの復興のための様々な取り組みを進めてまいりましたが、特に熊本地域での大災害の後、学生諸君がすぐに復旧のためのボランティア活動に参加してくれましたことについては、心から感謝いたしますとともに、学長として学生諸君を誇りに思っております。一方、明るいニュースとして、夏のオリンピックの選手達が与えてくれた数々の感動に加えて、秋には本学の発生医学研究所の客員教授であり名誉博士でもある京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞受賞もありました。スポーツにおいても学術の世界でも我が国の底力を改めて世界に印象づけることができた年でもありました。
一方で、近隣諸国との関係が緊張感を高めることとなり、留学生や本学からの派遣学生にとっても心を痛めることもありました。幸い、関係者の高い見識もあって、本学においては、国際化の推進に対する影響は殆どありませんでした。中長期的には今後もアジア地域との連携や社会のグローバル化は益々進んでまいります。その中で広い視野に立って、国際社会への貢献を進めていくことが必要になると考えています。
特に、我が国は、今日、歴史的に大きな曲がり角に来ていると言ってよいと思います。この150年の中で、明治維新、第二次世界大戦に続いて、第3の時代の変わり目が進行していると考えられます。ICT技術の発展やいわゆる新興国の発展を基盤とした国際社会に大きな変化が生じています。そのような社会の中で、本学の将来を見定めながら、社会の将来を担い、また必要な社会変革のためのエンジンとしての機能を果たすために、本学は、脱皮・成長しながら前進したいと思います。本学の輝く将来に向けて、皆様と議論を積み重ねながら、守るべきところは守り、また大きく変化させていくところは変化させて、新しい時代の担い手である社会の財産としての人「財」育成と社会改革の推進役としての役割を果たすための機能強化を進めていかなければなりません。

最近の我が国の高等教育を取り巻く状況について
ご承知の通り、平成24年は、高等教育について国立大学の在り方そのものが問われました。国際社会の中での高等教育の重要性が増加する中で、大学に対する社会の期待も益々大きくなると同時に社会からの厳しい批判も受けることになります。昨年から始まった「ミッション再定義」では、各大学の特色や強みを活かした社会貢献が強く求められています。既に各部局の皆様には、これに対応していただいているところですが、これは、国立大学への期待の一環でもありますので、しっかりと取り組んでいきたいと思います。
また、昨年、東京大学での議論から始まった「秋入学」の提案が一つの契機となって、教育の国際化を如何に進展させるかについての議論が進められたところです。今後も「秋入学」に限らず、入試の在り方や教育内容の国際的な互換性などを含めて、拡大するグローバル化社会の中での人材育成が重要な課題となってくるものと考えられます。
高等教育に関する平成25年度の予算編成は、昨年末の政権交代によって、今少し先になります。現時点では、概算要求事項の採択に言及することができません。新政権が新年度に向けてどのような政策を盛り込むのか、現時点で必ずしも見えないところがありますが、政権党である自由民主党の政策集の中には、『「大学力」は国力である』とか『国立大学法人運営費交付金等の安定的な確保』等の表現がありますので、新政権には、是非、「教育は未来への投資」という観点から適切な対応が望まれるところです。
一方で、我が国の財政事情を考えますと、必ずしも楽観できる状況でないことは言うまでもありません。新しい時代の創造に向けて、高等教育機関が、社会の負託に応えて、その使命を達成するために、どこまで対応できるのかが問われることにもなるかと思います。いずれにしても、本学ができることを明確にしながら、今後計画される補正予算や来年度の予算編成過程を注意深く見てまいりたいと思います。

本学の将来への基本的な考え方
もとより、大学は、自らの将来像を描きながら、責任を持ってその機能・役割を主体的に果たすべき存在です。社会からの信頼を基盤として、自らを律し、その使命を果たしていかなければなりません。新しい時代の創造や変革の担い手として、社会の発展のために、われわれ高等教育機関は最大限の努力をする責任を負っています。先の「ミッション再定義」に対して、国立大学協会も、自らの立場から大学の機能強化のために何をするべきかについて、国立大学が果たしてきた役割の分析・評価の上に立って、これから果たすべき役割をしっかりと果たすための機能強化に向けて、短期的にまた中長期的に為すべきことを取りまとめているところです。
本学は、自ら策定し公表した第二期の6カ年の中期目標・計画期間における、目標・計画に基づくアクションプラン2010の実現に邁進しているところです。これまで、各年度の評価において、計画は順調に進んでいるとの評価をいただいているところです。この中期目標計画の早期達成はもとより、変化の激しい時代の中にあって、その一歩先を見据えた取り組みを進め、社会の期待に応える努力を重ねたいと思います。

これまでの取り組み
昨年までの本学の取り組みについて概観しますと、代表的なものとして、以下のようなものが挙げられます。
教育面 では、新しい時代に対応できる人材の育成に関連して、「学生の立場に立った教育」の観点から、教養教育の見直しを進めて参りました。「教養教育実施機構」を「教養教育機構」とする等、組織的な見直しによって、教育改革に責任を持ち、いわゆる一般教育、リベラルアーツに関する共通教育の部分の強化を進めているところです。また、各部局の人材育成目標に沿った、高度な教育プログラムの構築にも努力いただいています。
教養教育に限らず高度な教育の提供は、国立大学の存在意義の中核を担うものでもあります。本学の学生諸君には、将来、国際社会で活躍できる人「財」として成長してもらわなければなりません。大学としては不断に教育内容の改善を進めることが必要です。また、本学の学生としてのアイデンティティーや誇りを醸成することを目指した新入生全員に対する学長特別講義も、昨年に続いて実施いたしました。
また、医学教育の高度化のための「臨床医学教育研究センター」が設置され、さらに、学生諸君の主体的な学修(Active Learning)を支援するための図書館本館の大改修事業等などが進んでいるところです。
併せて、新しい教育プログラムも進行しています。発生医学研究所を中心とした生命科学研究部のグローバルCOEプログラムの一つが、良好な評価をいただき終了しましたが、その後継にも当たる新たなプログラムの採択もいただいたところです。すなわち、大学院博士課程教育リーディングプログラムの「グローカルな健康生命科学パ
イオニア養成プログラム、HIGO」が採択されました。大学院先導機構の下でこのプログラムが推進されます。また、同じく生命科学系で、研究マインドを持った医師の養成のための「柴三郎プログラム」も採択されています。
他にも、文部科学省・大学間連携共同教育推進事業では、本学が代表を務める「減災型地域社会のリーダー養成プログラム」が県下の大学との共同プログラムとして採択されています。関連して、このプログラムの推進母体として、また地域の防災・減災に責任を持つ立場から、昨年12月には自然科学研究科に「減災型社会システム実践研究教育センター」を設置いたしました。加えて、本学が共同提案大学として参画するものとして「未来像を自ら描く電気エネルギー分野における実践的人材の育成」なども採択されています。
研究面 については、周知の通り、残り2つのグローバルCOE研究が今年3月で終了します。これまで、順調に研究が進められているものと承知しておりますので、最終評価においても高い評価が得られるものと考えています。熊大マグネシウム合金材料の研究も活発に進めていただいております。昨年2月には先進マグネシウム国際研究センター設置に関する開所式を開催いたしました。センター長の河村能人教授は、既に報道されています通り、昨年末に発表された平成24年度の文部科学省直轄の科学技術政策研究所が選んだ「注目の研究者=NICE-STEP研究者」の一人として選ばれています。誠にすばらしいことです。また、本学の特徴ある研究センターとしての衝撃・極限環境研究センターとバイオエレクトリクス研究センターの両センターが発展的に解消して、「パルスパワー科学研究所」に生まれ変わることも昨年末の教育研究評議会でお認めいただいたところです。今後、全国共同研究施設として、また、第二の大学院博士課程教育リーディングプログラム拠点としての採択を目指して頑張っていただきたいと考えています。また、人文社会科学系の関連センターとしては、昨年4月に、埋蔵文化財調査センターも開設させていただきました。
各学術分野でのユニークで世界的な研究を進めることは、「我が国を代表する研究拠点大学」を掲げる本学にとっての責務です。また、研究は、その大半を国民の税金を使って進めさせているものですので、研究成果を社会にご理解いただける形で広報していくことも重要です。先に述べた、「ミッション再定義」に関連して提出している書類において、本学の特徴・強みに関する記述の中で、各部局の研究成果が充分に表現されるように期待しています。
全ての教員がすばらしい研究成果を基盤にして、高度な教育を実施することが国立大学の所以であることも、今更言うまでもありません。我が国の発展の基盤を担っている教員の皆様には改めて独自の特徴ある研究の推進に一層の努力を期待したいと思います。
本学の国際化 に向けては、これまで、国際的な認知度向上に取り組み、最近では本学は四百数十名を超える留学生を常に擁するに至っています。国際的な交流協定大学の数も現在140機関程度まで増加しています。昨年1月には、中国・上海で第9回熊本大学フォーラムの開催と共に県や市と一緒に開設した上海オフィスの開所式を行いました。その際、国際展開を目指す「くまモン」も上海デビューいたしましたが、その後、残念ながら、日本と中国をはじめとする近隣諸国との緊張関係によって、各方面に心配をおかけすることになりました。幸い、関係者の見識で、学生諸君の交流には大きな影響は無く、友好関係にひびが入ることはありませんでした。ただ、中国で予定されていたいくつかのイベントが延期になったことは残念でした。この様な状況の中でも、皆樣方のご努力によって、本学の国際交流関連の諸事業は着実に拡大しています。昨年は、11月に本学でブラジルとの合同の「日本・ブラジルのエネルギー・環境・持続的発展に関する国際ワークショップ」を開催することができました。また、アジア地域での国際法務面での産学連携支援・人材育成支援組織としてのアジア法務サポートセンターとの「包括連携」の締結、さらに12月には、シェーファー前米国駐日大使を交えて、米国マンスフィールド財団による「日米ビジョンの発表・公開セミナー」等も開催することができました。また、10月に実施された米国モンタナ州と熊本県との友好姉妹交流30周年記念式典の席で、学生交流を通した友好関係推進に対して熊本・モンタナ姉妹交流協会から感謝状を授与されました。
いつも申し上げている通り、大学の国際化は、急速に進展するグローバル化社会の中で世界を舞台に活躍できる人材の育成を使命とする本学が避けて通ることができない重要な課題です。国際化は、我が国の文化や考え方を理解し、その良さを認識し発信できる人材を育成することでもあります。国際社会の縮図としてのキャンパスや学生諸君が機会ある毎に、背景となる文化や価値観の異なる人々とも対等に議論ができる人材として育つための環境を目指して努力したいと思います。
将来的には、本学の国際的な存在感を高めるために、留学生を大学院を中心に、学部・大学院あわせて、10%を目指すことができればと思います。また、同時に、日本人の留学経験者も少なくとも5%(短期を入れれば10から20%)を目指したいと思います。
地域連携 に関しては、高大連携事業として「高校生のための熊大ワクワク連続講義」を実施させていただいたところです。この他にも各部局の様々な取り組みがあることは承知をしています。
また、本学は、引き続いて、地域の教育レベルの向上と学生諸君の主体的で活発な活動を支援するために形成された県下14の高等教育機関の連携体である「高等教育コンソーシアム熊本」の会長校としての役割も果たしています。地域の発展に向けての県や市および経済界と連携した「くまもと都市戦略会議」も定期的に開催させていただき地域の発展にも寄与しております。
運営面 では、新しい人事制度の構築についても引き続いて検討させていただいています。今後、益々厳しくなると考えられる人件費の削減要請などを見据えながら、より良い形を模索していきたいと思います。また、男女共同参画事業の推進や障害をお持ちの方々が存分に活躍できる体制・環境の整備等を進めてまいります。
その他の取り組みでは、本学の東京オフィスに加えて、昨年3月には、大阪駅近くの関西オフィスの開所式も実施させていただきました。これによって、シンポジウムの開催はもとより多面的に関西地域の同窓会の皆様との強い連携が可能になっています。また、昨年度も新しく江口 工、前田 勝之助、船津 昭信の3氏に名誉フェローを授与させていただくとともに、26名の本学卒業生に対して、それぞれの社会的な活動・同窓会活動等による母校支援を顕彰して、新設の卒業生表彰を実施させていただきました。

新年度(平成25年度)の取り組み
さて、新年度に向けての課題や取り組みについて、少し触れたいと思います。
本学は、「我が国を代表する研究拠点大学」として、学生が国際社会の中で元気に輝くための人材育成教育の実現や世界を先導する特色ある研究の推進を基盤として、地域社会はもとより国際社会に貢献することで、世界的に卓越した存在感を示す大学として大きく飛躍することを目指しています。
これからのグローバル社会とイノベーションをキーワードとする新しい時代に備えて、社会の牽引力としての大学を目指して、新しい価値や考え方などを創りだす「知」の拠点として、また社会のイノベーションをもたらす連携拠点としての役割を果たしたいと思います。
そのために、国際活動連携をはじめとして、教育、研究、広報などにおいて、国立六大学連携もこれまで以上に強力に進めていきたいと思います。
また、社会の皆様の「憧れの大学」として新たな課題に挑戦し、それぞれの学術分野において、我が国を代表する国際的な業績を積み重ねたいと考えています。「ミッション再定義」に関する取り組みの中で、本学の機能強化の観点から、必要な組織改革についても精力的な取り組みが必要になると考えています。
組織体制については、変化する時代に充分に対応できるように柔軟性を持った組織体制に変化していくことが必要です。議論を積み重ねた上で、できるだけ早い時期に、自然科学系も人文社会科学系もできるところから生命科学系と同様の研究部型の組織への移行を目指したいと考えています。このことによって、本学が目指してきた3つの柱、すなわち、生命科学系においては、人の命を守る医療と生命科学の深化などを、自然科学系においては、新しい科学の「知」の構築を目指す理学系と新しい価値を創る新しい概念のものづくり・ことづくりや災害からの復興や災害に立ち向かう科学技術の構築を目指す工学系やその融合連携領域の深化などを、さらに社会の在り方や人の在り方を探求し、地域の文化レベルの高度化に寄与する人文社会科学系の構築などが、より効果的に実施できるものと考えています。勿論、地域の教育レベルの高度化を担う教員養成その他の組織の機能強化についても、必要に応じて然るべく対応などを考えていく必要があります。さらに第4の柱としての大学院先導機構においては、分野横断的な新しい学術の芽を育て、そのための人「財」を育てる役割を果たす組織としたいと思います。
これらの目標を実現するためには、教育面においては、特に、学部学生の共通教育部分の強化やリベラルアーツ教育の強化のための議論を教育委員会を中心に実施いただくとともに、専門分野の力の強化や教育の質保証の一環として、学位プログラムに基づく教育カリキュラムの不断の改善による教育内容の充実及び学生の学習支援計画書としてのシラバスの充実を行うとともに、教育成果の適正な評価を確実に実施したいと思います。関連して、入試の在り方や高大連携の在り方についての議論もはじめていただいているところです。
大学院プログラムにおいては、特に、採択された大学院博士課程教育リーディングプログラムの推進に取り組みます。
研究面においては、新しいパルスパワー科学研究所を中心に、全国共同研究施設への申請はもとより、大学院博士課程教育リーディングプログラムへの再挑戦のための申請を進めたいと思います。また、世界の第一線で戦える研究大学としての地位の確立に向けて、研究力を強化するため、現在進行している先導的な研究を中心に、その強みを活かせるところで、いわゆるCOC(Center of Community)構想やCOI(Center of Innovation)構想への取り組みを進めたいと考えています。地域の特色を生かせる研究や社会の要請の強い研究については、今後とも積極的にまた強力に取り組みたいと思います。
人文社会科学系は、地域に関連した古文書等研究では優れた成果を上げています。生命科学系部局は、これまでも地域特有の難病にも取り組んでこられた歴史があります。一方、この種の歴史的な資料が散逸しつつあるとも聞いています。これに歯止めをかけるための仕組みや組織も必要だと思っています。併せて、どの程度の貴重なものがあるのかについて、調査もしたいと思っています。これらの中から本学独自の、また、地域特有の様々な研究が生まれればと思っています。
今年は、現時点で、次年度に向けた新規プロジェクトの採否が明確ではありませんが、いわゆる継続課題については、プロジェクトを推進することになりますので、その進捗が注目されます。施設整備については、ご承知の通り、生命科学系の「国際先端医学研究拠点施設」の整備や「図書館本館の改修」が進んでいるところです。
また、今年も厳しいエネルギー事情、電力事情が想定されます。報道などでは、電力料金の大幅値上げの申請も取り沙汰されています。報道されている値上げ幅によりますと、本学の場合、1億円程度の支出増が見込まれます。その分、いろいろなところに影響がでてまいります。この影響を少しでも緩和するためにも、現在実施している全ての事業所でのエネルギー消費量の年1%削減義務に対応する整備や節電や省エネルギーへの取り組みについても引き続いて皆様のご協力をお願いする次第です。

総力を結集して、社会の皆様の「憧れの熊本大学」の実現へ
我が国の経済・財政の状況を考えますと、来年度以降も大学を取り巻く財政環境は引き続き極めて厳しいことが予想されます。その中で、今後とも社会からの支援が得られるような大学改革や教職員一人一人の意識改革なしには国立大学法人の運営費交付金への特別な配慮は極めて難しいと考えられます。本学は、これからも全力を挙げて、総力を結集して、社会の皆様の「憧れの熊本大学」の実現に向けて、社会の期待に応えたいと思います。
平成25年度は、大学の価値や存在意義が注目される年になると思います。熊本でも、一昨年の九州新幹線の全線開通と昨年の熊本市の政令指定都市への移行を経て、さらに地域の発展を目指して地域の関係各界が一体となった取り組みが重要になると考えられます。本学は、地域の発展に対して、シンクタンク機能、オピニオンリーダーとしての機能に加えて、各界を取りまとめるコーディネイト機能等を通して、その発展を担う役割を持っています。その意味でも地域において、本学の機能の活用が大いに期待されることになると考えられます。
豊かな自然環境と歴史・文化に育まれた熊本が、学生諸君を中心とする若者が生き生きと活躍する学園都市として、また、高度な医療体制に支えられた安全安心な都市として、かつ知的な研究開発型の知識基盤社会の中核的な都市として益々発展し、我が国を代表する国際都市として大きく飛躍するために、大学としてもできる限りの貢献をしたいと思います。
勿論、本学は、地域のみならず我が国や世界の発展に寄与する役割を持っています。留学生教育や国際的視野に立った人「財」育成、世界のトップレベルの研究成果による貢献はもとより、地域を国際社会に繋ぐ役割をも果たしてまいります。
本学が地域のリーダーとして、また、国際的にも存在感のある大学として今後も大きく成長するために、全ての構成員が、これまで培ってきた様々な叡智を結集させることで、多くの課題を乗り越えて社会の皆様の「憧れの熊本大学」の構築に向けて、今年も教育、研究、診療、社会貢献等にご尽力いただきますようお願いいたします。

結びに、新しい年が皆様にとって、すばらしい年でありますよう、皆様の御健康と御活躍を祈念いたしまして、年頭の挨拶といたします。

平成25年1月7日
熊本大学長 谷口 功

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経営企画本部 秘書室
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