前島遺跡

【合津マリンステーション】

遺跡名 前島貝塚
(熊本県遺跡地図No.57-013)
所在地 上天草市松島町大字合津6061
地 区 合津マリンステーション
時 期 縄文時代早・前期(約6500年前)
立 地 標高12mの丘陵端部の海岸(松島の南西端)

沿岸域環境科学教育研究センターの海洋施設である合津マリンステーション(旧:理学部附属合津臨海実験所)は天草の松島にあります。天草は、有明海から不知火海へ抜ける海上交通の要衝にあたります。縄文時代にはカルワ島遺跡や柳遺跡のように海岸部や海底に位置する遺跡群が数多く発見されています。天草で唯一の形象埴輪を出土したカミノハナ古墳群や長沙連古墳、大戸鼻古墳群など重要な古墳が密集しており、古来より交通の重要な拠点であったと考えられています。

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松島遠景(9509調査地点)

合津マリンステーションの隣接地には前島貝塚があり、1956年に天草で初めて発見された縄文時代遺跡として著名です。その東部には、梅殿古墳(熊本県遺跡地図No.57‐014)もあり、貝塚や古墳の一部が敷地内に残っている可能性がありました。

実際に、1969年の合津マリンステーション北部の丘陵斜面にある宿舎の建設時には、7本の石斧が発見されており、近くの海岸では、縄文時代早期~前期の土器・石器が採集されるなど、周辺には縄文時代の遺跡・遺構が存在することが知られていました。

熊本大学埋蔵文化財調査室では1995年に、臨海実験所実験棟改築工事(当時)に伴う発掘調査を行っています(入口駐車場部分、9509調査地点)。それにより、合津マリンステーション周辺は縄文時代早期の遺跡であることが明らかになりました。しかし、これまで「前島貝塚」と呼ばれていたものは、近世以降この地が畑として開墾された際に、海岸から持ち込まれた貝殻や海草が肥料として撒かれたものを「貝塚」の貝と見誤ったものであることがわかり、最初にこの地で発見された縄文後期と推定された条痕文土器もこの早期包含層に由来するもので、貝塚ではないこともわかりました。

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B-2区遺物出土状況(9509調査地点)

お問い合わせ
埋蔵文化財調査センター
096-342-3832