年頭所感

年頭所感

明けましておめでとうございます。

 昨年もコロナウイルス感染症で大変な1年でした。11月頃からは感染者数も激減し、社会生活は正常化に向けて動き出しつつありますが、新たな変異ウイルス「オミクロン株」の感染状況によっては、改めて対策等が講じられる可能性もあり、引き続き細心の注意を払う必要があります。

 昨年4月に学長に就任し、9ヶ月が経ちました。5年半熊本大学を離れていた私にとって、先ずは現状を把握することが第一と考え、各部局等を訪問しFace to Face Communicationを通して関係の先生方の話を伺い、本学が抱えている課題等について理解を深めることができたと思っています。一方では、学外から熊本大学を見ていたこと、国立循環器病研究センターでの経験や人との繋がり等は、今後に大きく活かせるという自信も沸いてきました。

 本年4月からの第4期中期目標・中期計画期間は、以前にも増して大学の存在意義や真価が問われるものと考えています。従来からの大学運営を社会のニーズや現状に合わせて常に見直し、全教職員が同じ方向を向き、同じ目的に向かって、One Teamとなって改革に取り組んでいかなければなりません。そのためにも、「常に情報を発信し続ける大学」、「常に外から見える大学」、「常に外からの声に耳を傾け、発展し続ける大学」を基本姿勢に掲げて、様々なステークホルダーの声に耳を傾け、協働し、研究、教育、社会貢献の諸活動を推進したいと考えています。

 教育面では、発展するデジタルトランスフォーメーション(DX)時代において、全学生がデジタルサイエンス、数理・データサイエンス及び国際対話のリテラシーを身につける教育を行うことで、文系・理系を問わずDX時代に対応し、国内外で多岐にわたり、活躍できる真のグローバル人材を育成します。それに関連して少しお話しますと、本学の大学祭である「紫熊祭」は、一昨年は開催できませんでしたが、昨年10月 にはYouTubeでのライブ配信と動画コンテンツの配信による、オンラインで開催されました。この時の学生が言っていた「コロナに対して不満をぶつけるのは簡単だが、そんなことより今自分たちは何ができるかを考えて実行することが重要だ。そこでオンラインでの開催を考え出した。」という発言には感動しました。実際、オンラインの大学祭は、熊本県内のみならず関東、関西のOB方からも称賛されました。

 研究面では、生命科学、自然科学、及び人文社会科学分野に設置した国際先端研究組織を我が国における屈指の研究拠点に発展させ、世界トップレベルの研究を展開するとともに国内外から卓越した研究者が数多く集うような環境を整えたいと思います。私は常々トップ10の大学を目指そうと言い続けています。本学が富山大学と連携して開設しました先進軽金属材料国際研究機構が、本年4月から文部科学省の共同利用・共同研究拠点に認定されることが決まりました。その分野で世界に伍するトップレベルの施設が選ばれることになります。本学では基礎医学の研究で知られる発生医学研究所に続いて選ばれた2つ目の拠点です。全国の大学で2つ以上の拠点を持つ大学は16大学で、そのうち7大学が2つの拠点ですので、同数ですが全国10位となります。さらに自由で挑戦的・融合的な研究で、研究者が研究に専念できる環境を確保しつつ長期的に支援される国立研究開発法人科学技術振興機構の創発的研究支援事業に本学は令和2年度と3年度の合計で12件採択されました。これは全国の大学で10位に入るものです。

 社会との共創の面では、オープンイノベーションセンターを学内に設置して産業界との連携を強化し、DX時代の国際社会の基盤となる半導体分野を中心に研究を活性化させるとともに、国、地方自治体、地元企業と共創し、地域産業の強靱化につながる取組を実施します。また、部局あるいは分野毎に最も適切な枠組みで大学間、産学官金連携を強化し、様々なステークホルダーとの対話を通して、地域における社会変革や社会課題解決を図り、地域の活性化や地方創生を牽引していきます。折しも世界大手の半導体メーカーがソニーとの共同で熊本県に半導体工場を作ることが決まりました。これは国家的プロジェクトになります。これに合わせ本学では本年に半導体研究教育センターを作る予定であり、半導体分野における高度人材を育成・輩出するとともに、研究でもトップレベルを目指します。

 水と森の自然に囲まれた本学は、キャンパス内に4つの国指定重要文化財の建造物や、肥後熊本藩主であった細川家ゆかりの古文書など重要文化財531点を含む歴史資料群を所有・管理しており、これらは歴史的・文化的価値が極めて高いものです。約6年前の熊本地震で被災した五高記念館の復旧工事の完了を機に、自然と歴史に満たされた本学を一大キャンパス・ミュージアム化し、地域に開放・公開するようにしたいと思います。

 今後とも皆様のご協力とご支援をお願いしまして、年頭の御挨拶といたします。

                                        令和414日 

                                         熊本大学長 小川久雄

                  

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