年頭所感

 念頭所感新年明けましておめでとうございます。

 皆様におかれましても、コロナ禍の中での正月、静かな年末・年始を過ごされたことと思います。私事になりますが、私も記憶にある限り初めて、家内と二人だけの正月を淋しく過ごす事となりました。しかし、お陰で、これまで6年間の学長としての活動を、落ち着いて省みる事ができました。

今年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

熊本地震のその後と新型コロナウイルス感染対策

 平成28年の熊本地震から早くも5年を迎えようとしています。全学の地震被害の復旧はほぼ完了いたしました。ただ五高記念館などの重要文化財関連の建物の復旧は、昨年末で約71%の進捗状況となっています。五高記念館と工学部研究資料館は令和312月完成予定、化学実験場は令和37月に完成する予定となっています。竣工後に博物館機能を持たせるためには、新執行部のもとで今後、早急に計画を練る必要があります。

 昨年は新型コロナウイルスに振り回された一年でした。今年も、また同様の感染拡大周期が繰り返される可能性があります。昨年の経験をもとに、大学の教育、研究、事務などのあらゆる活動に対し感染対策を徹底させる必要があります。幸い、講義室などの換気設備やいくつかのコロナ対策の予算が認められましたので、それらを十分に活用していただけたらと思います。また、教育に関しては、コロナ後の教育改革を念頭におき、新学期からは教育効果の高い遠隔と対面の授業を組み合わせたカリキュラムを構成すべきであろうと思います。

 

2020年を振り返り、2021年へ向けて

 昨年は、ともかく世界的な新型コロナウイルス感染拡大に振り回された一年でした。このパンデミックの大きな問題は、熊本地震のような局地的災害と違って、世界的経済混乱をもたらしている事、将来の終息予測が困難な事です。従って、長期的な経済不安と心身不安をもたらしていますし、これからも続くと思われます。それに加え、熊本では大雨による球磨川洪水という大きな自然災害が起こりました。世界的に見ても異常気象による山火事などの災害、大きな地震などが頻発した年でした。改めて環境破壊への対策や減災対応への重要性が問われた一年だったのではないでしょうか。

 国立大学においては、昨年、第4期中期目標・中期計画の素案や運営費交付金の配分のあり方について様々な議論がなされました。昨年度、導入し実施された共通KPIによる基盤経費の評価配分は令和3年度も行われます。昨年末、様々な研究・教育関連の指標それに人事給与マネジメントや会計・施設マネジメントの指標など提出いたしました。来年度は評価対象額も拡大され、評価幅も80~120%となるなど厳しい査定が待っています。その他の予算は、今年度並みの額が確保できると思います。

 次期第4期中期目標中期計画期間(令和4年度~令和9年度)の安定した大学運営を行うためには、第3期末(令和43月)までに当初の計画どおり人件費や運営費の抑制を完了する事ですが、これは達成が見えています。また、安定した財源確保のため、産学連携や寄付金獲得など様々な取組により自己収入を徐々に拡大しつつあります。今後、熊本創生推進機構による組織的に一体化した産学連携活動がさらに重要となると思います。昨年は、人事給与制度の改革の一環として、新たな年俸制を導入するとともに、全学的に定量的業績評価のシステムを制度化、実施いたしました。今年も各部局に設定した教員の業績評価をもとに新年俸制や月給制等の人事給与マネジメントを確実に実行していただきたいと思います。

 研究では、生命科学分野と自然科学分野に設置した「国際先端医学研究機構(IRCMS)」と「国際先端科学技術研究機構(IROAST)」に加え人文社会科学分野にも研究部附属「国際人文社会科学研究センター」を設置いたしました。それにより全学的先駆的な国際共同研究や融合研究をさらに推進していただきたいと思います。また、本学の強みである「材料」に関する研究を先鋭化するため「産業ナノマテリアル研究所」を、昨年、開設いたしました。今年は富山大学との連携で「先進軽金属材料国際研究機構」を設置し、さらにマテリアル部門の研究を推進いたします。

 教育では、大学教育統括管理運営機構附属の「数理科学総合教育センター」を拠点にデータサイエンス教育を推進し、「多言語文化総合教育センター」では多様な言語やそれを通じて文化を学べる環境を作りました。今後、これらの施設を最大限に活用し、真のグローバル人材を育てていただきたいと思います。

 厳しい大学改革の最中ではありますが、令和4年度以降の「第4期中期目標・中期計画」に向けて、本学の特徴をさらに生かし、熊本の地で積み重ねてきた実績をもとに、更に光り輝き続ける研究拠点大学を目指していただければと思います。

今後とも皆様のご協力とご支援をお願いいたしまして、年頭の挨拶といたします。      

                                               令和3年1月4日     
熊本大学長  原田信志

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