年頭所感

2020.JPG 明けましておめでとうございます。
 新しい元号、令和となって初めての正月、健やかな新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

―熊本地震のその後
 早いもので「平成28年熊本地震」から4年を迎えようとしています。復旧・復興が進んできたと実感する一方で、未だに5千人近い方が仮設住宅等での生活を余儀なくされています。本学においては、地震で被害を受けた設備・備品の復旧は完了し、建て替えが必要となった工学部1号館も昨年3月に竣工しました。残る五高記念館などの重要文化財関連の建物の復旧も順調に進んでおり、昨年末の段階で約40%の進捗状況で、2021年度に完成する予定です。
 発災の2ヶ月後に組織した7つの「熊本復興支援プロジェクト」は、その後組織された「くまもと水循環・減災研究教育センター」「熊本創生推進機構」及び「熊本大学病院災害医療教育研究センター」において、その活動の一部を発展的に推進しています。

―2019年を振り返って
 昨年は、平成から令和へと改元され、ラグビーワールドカップでの日本代表チームの活躍に湧いた年でした。一方で米中貿易問題、英国のEU離脱問題、香港の混乱、日韓関係の悪化など、多くの世界的問題が吹き上がり越年した年とも言えます。今年も早々に米国とイランの関係悪化が伝えられました。日本ではここ数年と同様に台風や大雨による大規模な自然災害が起こり、世界的に見ても異常気象による大雨や山火事などの災害、地震さらに火山の噴火などが頻発した年でした。改めて環境破壊への対策や減災対応への重要性が問われた1年と言えるのではないでしょうか。

 国立大学においては、運営費交付金の配分のあり方に様々な議論がなされましたが、昨年から導入された共通KPIによる基盤経費の評価配分は2020年度も引き続き行われます。昨年末、この評価配分に大きな影響を及ぼす様々な研究・教育関連の指標、それに人事給与マネジメントや会計・施設マネジメントの指標を文部科学省へ提出しました。今年は早々に研究業績数の指標を提出しなければなりません。また昨年は、人事給与制度改革の一環として、新たな年俸制を導入するとともに、全学的に定量的業績評価のシステムを制度化しました。「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」については、これも昨年末、国立大学改革方針に基づき調書を作成し、文部科学省へ提出しました。3月にはヒアリングを受けることになります。

 ―2020年に向けて
 2020年度、令和2年度は私の学長としての任期の最終年度となります。従って、昨年末作成した国立大学改革方針の調書に添い、これまでの取組実績をさらに充実させ、将来構想に掲げた展望として第4期の中期目標・中期計画への道筋をつけるのが私の最大の任務だと考えます。

 次期中期目標期間において安定した大学運営を行うためには、第3期末までに当初の計画通りに人件費抑制を完了する事と、安定した財源確保のため産学連携や寄附金獲得などの様々な取組により自己収入の拡大を図る事であると思います。そのためには、現在の人事制度(25%の学長裁量ポジション化)を継続し、部局等にお認めいただいた各教員の業績評価を基に新年俸制や月給制等の人事給与マネジメントを確実に実行しなければなりません。また、熊本創生推進機構による組織的に一体化した産学連携活動がさらに重要になります。

 研究では、生命科学分野と自然科学分野に設置した「国際先端研究機構」に加え、人文社会科学分野にも研究部附属「国際人文社会科学研究センター」を設置します。それにより三本柱の一つ、人文社会科学系の特徴を明確化し、先駆的な国際共同研究や融合研究をさらに推進したいと思います。また、本学の強みである「材料」に関する研究を先鋭化し、トップレベルのナノシート研究の研究者を集中・組織化する「産業ナノマテリアル研究所」を4月から開設します。

 教育では、大学教育統括管理運営機構附属の「数理科学総合教育センター」を拠点にデータサイエンス教育を推進します。また、新設する「多言語文化総合教育センター」では、多様な言語やそれを通じて文化を学べる環境を作り、真のグローバル人材を育てたいと思います。

 社会貢献では、熊本創生推進機構を拠点に、企業との共同研究や大学発ベンチャーの支援にこれまで以上に力を入れます。

 厳しい大学改革の最中ではありますが、2022年度以降の第4期中期目標期間に向けて、本学の特徴をさらに活かし、熊本の地で積み重ねてきた実績を基に、さらに光り輝き続ける研究拠点大学を目指していきたいと思います。

 今後とも皆様のご協力とご支援をお願いいたしまして、年頭の挨拶といたします。      

令和2年1月6日   
熊本大学長  原田信志

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