令和元年度卒業生・修了生の皆さんへ(令和元年度熊本大学卒業式・修了式 式辞)

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 総勢2,440名の卒業生、修了生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。本来であれば、ここに、御来賓各位の御臨席を賜り、理事、副学長、部局長並びに教職員とともに、令和元年度の卒業式・修了式を挙行すべきところですが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため中止せざるを得ませんでした。熊本大学の全教職員にとって断腸の思いであります。

 

 今思えば、ほとんどの皆さん方が熊本大学に入学された4年前の4月、私たちは二度の大きな地震に見舞われました。あれから4年経とうとしていますが、多くのことが昨日の事のように思い起こされます。入学直後であった皆さん方には、特別な不安や困難があったことと思います。それらを乗り越え、一生の中でも記念すべき今日の日を迎えられたことに敬意を表するとともに、改めて心からお祝い申し上げます。発災後、1ヶ月間の休講措置を経て、留学生を含むすべての学生さんが元気に大学に戻られ、勉学やクラブ活動、ボランティア活動に励まれる姿に接し、本当に嬉しく思い、私たちも強く励まされました。このように、皆さん方は熊本地震の発災から復興まで大変貴重な経験をされたわけです。これからの皆さんの人生に、これらの経験を是非活かしてほしいと思います。

 更に、学内外での多くの人々との交流は、全て皆さん方の成長のためにはかけがえのないものであり、これからの人生に大きな影響を与えるに違いありません。その意味で、皆さん一人ひとりをずっと支え続け、励まし続けてくれたご家族をはじめ、恩師、友人、先輩や後輩など周りの全ての方々に対し、皆さんと一緒に、改めて感謝とお礼を申し上げたいと思います。

 

 さて、ここ数年、世界各地で大規模な地震や台風、集中豪雨、火山の噴火、山火事などによる深刻な被害が頻発しています。我が国、我が熊本も例外ではありません。エネルギー問題や水の確保、感染症等も今日、世界の大きな課題になっています。日本では、原子力発電所の再稼働を巡って、依然として様々な議論が展開されています。CO2の削減を伴ったエネルギーの確保は、気候変動という観点からも今日の世界的な課題でもあります。また、水は生命(いのち)の根幹ですが、大きな災害をもたらす力も持っていることは、集中豪雨や台風、津波による被害で思い知ったところです。インフルエンザも毎年のように流行していますし、現在は新型コロナウイルス(COVID 19)の感染拡大が世界中で深刻な問題となっています。国際的な協力の下にこれらの感染症は制圧しなければならないのですが、これまでのところあまり上手くいかず、経済上の大きな打撃になりつつあります。香港の混乱、米中貿易問題、シリア難民問題など社会不安も増大しています。様々な要因が複雑に絡み合い、世界経済にも暗雲が立ち込めています。私たちは、直面しているこれらの課題を世界的な視野に立って解決していかなければなりません。

 このような状況の中で最も必要なのは発想の転換です。新型コロナウイルスの世界的感染拡大も世界経済の落ち込みも、いつかは必ず回復します。そこに大きな希望を抱き、また未曾有の危機を逆にチャンスと捉え、未来に向かって邁進してほしいと思います。熊本地震からの復興を成し遂げられた皆さんには、きっとそれができると思います。「挑戦する炎」を、今こそ大きく燃やしていただきたい。

 

 そのためには、これまで学んできた知識により知恵への転換と、理系・文系それぞれの領域を超えた発想が必要です。それにより革新的な発見や考え方(思想)の変革、つまりイノベーションが起こるのです。今、ここに卒業、修了を迎えられる多くの皆さんは、大学の学部や学科の軛から解き放たれ、自由な発想を掻き立てることのできる社会や他の分野へ出て行かれます。大学で培った知識をもとに大胆な発想を呼び起こす叡智を最大限に発揮してください。そのためには、自由な発想と創造、それを具現化する情熱が必要です。正に、私たちが掲げている「創造する森 挑戦する炎」の始まりです。

 

 最後に、熊本大学が更に発展するための原動力は、熊本大学に学び、熊本大学を愛する方々の世代を超えた絆の中にあると思います。母校の伝統の担い手として、この素晴らしいキャッチフレーズ「創造する森 挑戦する炎」を胸に、積極的に母校のために力を寄せてください。熊本大学で学んだことに誇りと自信を持って、これからの人生を力強く歩んでください。

 今後の皆さんのご健闘とご活躍を祈りつつ、卒業・修了に際しての心からの祝辞といたします。

 

令和2年3月24日
  熊本大学長 原田信志

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