平成23年度熊本大学卒業式・修了式 式辞
本日、ここに、ご来賓各位のご臨席を賜り、理事・副学長・部局長と共に平成23年度の卒業式・修了式を挙行できますことは大きな喜びであります。ご卒業・修了の皆様、卒業、修了おめでとうございます。
東日本大震災から1年が経過し、被災地では今なお多くの困難の中で頑張っておられることは周知の通りです。改めて、被災者の皆様には、心からお見舞い申し上げますとともに、犠牲になられた数多くの方々に対して、深く哀悼の意を表したいと思います。本学は、これからも引き続いて被災地域の復興に向けて長期的な視野の中で、できる限りの支援をさせていただきたいと思います。
本日の式典にあたり、卒業生・修了生の皆様には、今日の日を迎えられましたことに対し、心よりお祝い申し上げますとともに、皆様自身の今日までの努力と研鑽に深く敬意を表します。
また、留学生の皆様方には、母国の期待を担い、留学を立派に終えられました。母国を離れての勉学には幾多の困難があったものと推察いたします。留学生の皆様には、おめでとう、Congratulation, と申し上げます。本学で学ばれたことを充分に活用され、これからも皆様の母国と我が国との架け橋となって益々ご活躍いただくことをお願いいたします。
もとより、諸君の今日がありますのは、ご家族の皆様や友人の協力と励まし、教職員や諸先輩の温かな指導・助言、などの支援があったからに他なりません。今、皆様は、お世話になった数多くの方々を思い起こしておられることと思います。本日、皆様が手にされた学位記には、お世話になった方々の様々なご支援や思いが詰まっています。今日の卒業・修了の喜びを、是非、支えていただいた方と分かち合っていただきたいと思います。
この場をお借りして、本学を代表いたしまして、これまで卒業生、修了生を深い愛情によって支えてくださったご家族をはじめ、ご指導ご助言をいただいた教職員、諸先輩、友人の皆様、さらには日常生活を支えていただいた地域の皆様はじめ関係各位に対し、心より深く感謝申し上げます。
さて、今日、国際社会は大きく変動しています。その中で、我が国はこれからも国際社会の中で真のリーダーとしての役割を果たすことが求められています。とりわけ、本学の卒業生・修了生には、それをしっかりと担っていくことが求められています。
ここで、少し皆様のこれからの社会における役割について考えてみたいと思います。
今日の社会は、
1)知識基盤社会と言われ、知識の生産(研究)、普及(教育)を進めながら、新しい価値を生み出すことが必要な時代になっています。また、2)大学が一般化して、「大学卒」というだけでは一人一人の資質を保証することにならない時代になっているということも認識しなければなりません。さらには、3)世界が益々グローバル化して、社会は否応無しに国際的な競争環境下にあり、私達一人一人の力も世界の中で評価されるようになっています。
このような社会状況の中で、本学の学生に対してという訳ではありませんが、社会からは大学卒業生一般に関して、極めて厳しいご意見もいただいています。ある新聞社が行ったアンケートの結果によれば、大学を卒業した者に対して、何らかの不満を持っておられる方は65%に及ぶとされています。その新聞によれば、卒業生に対する不満は、世界に通用しないとか、社会に通用しない、などと言われているということです。問題設定能力の不足、目的意識の欠如、狭い専門領域で実社会と繋がりが充分ではない、などとも指摘されています。さらに、チーム力、文章力、人に分かり易く話す力、外国語の力なども不足しているとも言われています。
これに対して、皆さんが学んだ本学は、日々教育改革に取り組み、人材育成に努めて参りました。すなわち、本学の卒業生、修了生の皆様は、これまで、1)生き方の規範となる自己の形成、2)国際社会を生きるための能力、3)専門力を基礎として社会に貢献し、社会の諸課題に対する問題意識や課題を発見し解決するための能力、さらには、4)各自の個性や専門力を駆使して新しい価値を創りだしていく創造力などを培ってこられました。加えて、5)世代や価値を異にする人々等とも協力して必要な事柄を実行していくためのコミュニケーション力や行動力とその総合力としての人間力について、少なくともその基盤的な力を獲得してこられたと信じています。
皆様は、本学のこれらの教育指針に応えて研鑽を積まれた結果、今日の日を迎えられた訳ですので、自信を持って社会に羽ばたいていただきたいと思います。
その意味で、勿論、先に申し上げた社会からのご批判は、本学の卒業生、修了生には、全く当たらない話ではありますが、これらの厳しいご意見は、本学の卒業生・修了生の皆様にとっては社会からの大きな期待であると真摯に受け止めて、自らを省(かえり)みるための指標としてこれからも研鑽を積んでいただきたいと思います。
そして世界に目を向けてください。我が国は、国際社会の中で存在感を示す以外にその将来は無いと言って過言ではありません。世界と繋がるということは、様々な知識・技術や価値観などが流入することでもあります。これは、新しい成長の源泉になります。本学が、国際的に存在感のある大学を目指して、留学生を受け入れ、海外のパートナー大学と連携し、将来を担う学生諸君に国際人になるように促しているのは、我が国の将来にとって、国際社会で活躍できる人が必要であるからです。卒業生・修了生の皆様には、県と市と一緒に設置した上海の熊本大学オフィスはじめ、世界各地にある本学の海外拠点や連携研究室、パートナー大学などを活用して世界と繋がってください。世界に情報を発信してください。アジアを含む諸外国では、急速にかつ強力に社会の改変が進んでいます。世界は日々変化しています。卒業生・修了生の皆様には、これからも是非世界を意識しながら未来を拓いていっていただきたいと思います。世界と繋がることは、言い換えれば、我が国の良さを再認識することでもあります。我が国の良いところ、熊本の魅力を世界に発信してください。
その中で、今日の社会の様々な大きな課題にも目を向けてください。解決に向けて取り組むべき課題が山積しています。地球的規模の課題として、エネルギー・地球環境などの持続可能性の確保や食料・医療・健康など、人類として取り組むべき課題が山積しています。我が国には、少子高齢化に伴う医療・福祉、労働人口の減少や社会保障などの問題、さらには財政悪化に伴う雇用懸念、安全安心の確保など、様々な課題があります。これらの課題に取り組みながら我が国の成長力をどのように確保するのかも喫緊の課題です。
今日の多様で激変する社会にあって、物事の本質や大きな動きを見極めることが極めて重要です。世界規模で社会構造の急速で大きな変化が日々進行しています。世界の変動は大きく、2~3年の短中期的な先を間違いなく見極めることは極めて困難です。従って、リスクを分散しながら、対応することが求められます。変化する社会を読み取るためには、日々、諸情勢を認識する力、すなわち、情報を集め、解析し、判断する力を身につける必要が益々大きくなっています。社会の長期的な大きな動向を知ることで、それに対応する力を身につけることが必要です。皆様が大学で学んだ学術の「基礎」上に立って、また、生涯「学習し続ける」ことによって、ものごとの全体的な動向・方向性とその動きの底流にある本質を見定めていただきたいと思います。
本学の前身の第五高等学校で、夏目漱石に師事した学生で、後の随筆家であり、また著名な物理学者である、寺田寅彦の言葉に、「ものを怖がらなさ過ぎたり、 怖がり過ぎたりするのはやさしいが、 正当に怖がることはなかなか難しい」というのがあります。これからの時代においては、ものごとの本質をしっかりと見つめ,何事も正しく理解することの大切さを指摘したものです。まさにものごとの真髄を言いあてています。
一方で、未来は皆様が創りだすものです。未来は、皆様の手の中にあります。卒業生・修了生の皆様には本日の卒業にあたって、何事にも果敢に挑戦するチャレンジ精神と失敗に怯まない「逞しさ」に磨きをかけていただきたいと思います。チャレンジ精神と何事も決してあきらめることなく、最後までやり遂げる力、持続する力は、最近、日本人の底力として世界から高く評価され賞賛されています。
本学の卒業生・修了生の皆様は、決して社会の単なる一構成要員としての「人材」ではありません。社会の財産、宝としての「人財」です。このことを改めてしっかりと自覚して大きく育って欲しいと思います。本学の卒業生の皆様には、社会からの期待に応えて、国際社会の中で充分に力を発揮していただきたいと思います。これが皆様の社会における重要な役割です。
本学は、「我が国を代表する研究拠点大学」を掲げ、「誇れる大学」から、社会の「憧れの大学」としての存在感の確立に向けて全学をあげて取り組んでいます。
私たち教職員は、皆様の人生の大切な時期に関わりを持てたことを誇りに思っています。皆様一人一人を心から誇りに思っています。本学は、在学生、卒業生、教職員、そして市民の皆様が誇れる大学から、社会の皆様の「憧れの大学」を目指して日々努力しているところです。
本学が社会の「憧れの存在」となるための第一の指標は、卒業生・修了生の皆様が社会で思う存分活躍いただくことです。皆様が熊本大学の卒業生・修了生として「自信と誇り」を持って、それぞれの立場で自らの夢を大きく実現されるとともに、その夢の実現を通して大いに社会に貢献されることを期待しています。
本学も、巣立っていく皆様と共に、これからも時代を先導するリーダーとしての役割を果たします。我が国を代表する長い歴史と伝統を持つ大学として、その社会的な使命を果たすべく、人財育成、知の創造を通して、地域や国際社会への貢献を進め、国際的に存在感を示す大学として益々尽力して参ります。
しかし、重ねて申し上げます。本学の真価は、卒業生・修了生諸君一人一人の人生にあります。そのために、皆様にはチャレンジ精神を持ち続けていただきたいと思います。「百折不撓」を餞の言葉として贈り、これからの輝かしい人生を祈りつつ、卒業、修了に際しての心からの祝辞といたします。
最後に、皆様の元気な声を聞いて、巣立っていく皆様の将来への決意の大きさを示していただきたいと思います。また、大震災から1年を経たなかで、頑張り続けておられる東日本大震災の被災地域の皆様に、私たち一人一人が、また留学生にも協力いただいて、一日も早い復興を期してエールを送りたいと思います。
一人ずつのお名前を読み上げて決意をお聞きしたいところですが、学部毎に卒業生、修了生の所属と人数を申し上げますので、その場でまず起立してください。どの学部・研究科を出ても、社会からは熊本大学の卒業生・修了生ですので、全ての学部卒業生諸君は、最後に学部卒業生合計の人数を申し上げた直後に全員で、右手を大きく掲げて、元気よく"オー"と応じてください。大学院修了生も同じです。時間の関係で、学部と大学院2回に分けて応じていただきます。声の大きさが皆様の決意の大きさであり、将来への力強さの表現です。また、我が国の明るい将来に向けた誓いと被災地域への応援の気持ちの大きさです。
それでは学部からはじめます。【文学部173名】、(起立)、【教育学部及び特別支援教育特別専攻科・養護教諭特別別科368名】、【法学部186名】、【理学部182名】、【医学部254名】、【薬学部92名】、【工学部527名】。以上、学部卒業生 合計1781名!!
(オー) すばらしい元気と未来への決意をありがとう。
続いて大学院です。【教育学研究科39名】、(起立)、【社会文化科学研究科66名】、【医学教育部62名】、【保健学教育部21名】、【薬学教育部44名】、【自然科学研究科489名】、【法曹養成研究科14名】。以上、大学院修了生 合計735名!!
(オー) ありがとうございました。
改めて、卒業、修了おめでとうございました。
以上、総勢【2517名(内、留学生53名)】の皆様一人一人に対し、熊本大学を代表し、皆様の輝かしい未来を祝福します。おめでとう!!Congratulation ! and、Bon Voyage!!
平成24年3月23日
熊本大学長 谷口 功
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経営企画本部 秘書室
096-342-3206