平成19年度熊本大学卒業式・修了式
本日、ここに、ご来賓各位のご臨席を賜り、副学長・理事・部局長と共に平成19年度の卒業式・修了式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びであります。特に、大部分の学部卒業生は、平成16年4月、すなわち、本学の法人化と同時に入学された方々でありますし、短期大学から4年制化しました、医学部保健学科の第一期生の卒業でもあることを考えれば、記念すべき日であります。皆さん、ご卒業・修了おめでとうございます。
学部、大学院等のそれぞれの課程に必要な年限を修業され、本日のこの式典に臨むことができますのは、皆さん自身の努力と研鑽の賜物であり、深く敬意を表します。
中でも病気や経済的理由等の事情で規定の年限以上に在学せざるを得なかった方々、そして母国の期待を担い、留学を立派に全(まっと)うされた留学生諸君、あるいは、熊本大学への強い愛着のためか、規定の年数以上に在学された方々にとっては、感慨もひとしおと推察いたします。
諸君の今日がありますのは、教職員や諸先輩の温かな指導・助言、ご家族や学友の協力と励ましなどの力添えがあったからであることをこの機会に改めて認識していただきたいと思います。
そこで、僭越ですが、ここで時間を少し差し上げますので、目を閉じて皆さんがお世話になった人々の顔を思いおこしてください。
どうぞ!〈 10秒間 〉
ありがとうございました。そして、今皆さんが最初に思い浮かべた方々に、修了証書・学位記をお見せして、“ありがとうございました”と口に出して、感謝の意を表すことをお願いいたします。
私としましても、これまで皆さんを深い愛情によって支えて下さったご家族をはじめ、惜しみないご指導ご助言をいただいた教職員、諸先輩各位に対し、衷心より深く感謝申し上げます。
皆さんは、生まれてからこれまで20数年の間、すなわち、人生の約3分の1もの長い間を、幸せな人生を送る力を養うことに、費やして来られました。ですから、私は、皆さんに、この長さに思いを至らせ、必ず幸福な人生を築いていただきたいのです。
ところで、幸せとは何でしょうか。人によって、幸せの感じ方は異なりますし、簡単に定義できないのですが、金銭的に達成が可能な物質的幸せと、金銭ではあがなえない精神的な幸せの二つが存在すると思います。
また、私共個人は、社会に生きていますので、皆さん自身の幸せが、人間社会の幸せと切り離すことができないことも明白です。目指すべき幸せな社会とは何でしょうか。
・災害・犯罪・紛争・戦争の無い安全で平和な社会
・病気が克服され、福祉の充実した生涯健康に過ごせる社会
・豊かで多様な人生を送れる精神文化の高い社会
・環境・エネルギー・食糧・水 等、世界的課題が解決された社会
・あらゆる国の人々との会話と愛に満ちた社会
等と言えるのではないでしょうか。
人間誰しも幸せになりたい。どうすれば幸せになれるのでしょうか。まず、個人の幸せは、社会の幸せなしに実現できない、あるいは、社会の幸せを実現することが、個人の幸せをもたらすことになることに気付くべきでしょう。なぜならば、社会の幸せを実現するモノやコト(考え方、施策、システム等)に、価値が認められますし、金銭や富を生むことになるので、物質的な幸せを手にすることができます。次に、精神的な幸せを得る方法ですが、争いや憎しみがなく愛情に恵まれるためには、皆さんが、他者や社会にやさしい気持ちを持って、愛情を注ぐ以外にない、ということだけ申し上げておきます。他の精神的幸せとして挙げられる、誇り、達成感、満足感等を得るにはどうすれば良いかというと、自分の夢、志、やりたいことを、社会の幸せを創り出すモノやコトに一致させることであります。すなわち、自分の夢、志、やりたいことを成し遂げることが社会の幸せを創り出す結果となり、その努力が、誇り、達成感、喜びとなり、精神的に報われ、幸せとなるからです。皆さんが選択した職業や進もうとしている道は、このことを満足していると信じています。
ところで、皆さんが船出して行く社会は、波静かでは決してありません。少子高齢化、人口減少、地域間格差、グローバル化等が急速に進行する社会でありますし、石油・ウラン等のエネルギー資源、レアメタルと呼ばれる電子部品等に不可欠な希少金属資源、穀物、肉、魚等の食糧資源等が地球上に偏って存在しているという悪条件等を克服する必要があります。このような状況下で、皆さん自身と社会の幸せ、すなわち、社会に求められる価値を創造するための大きな力は、イノベーションであります。イノベーション、すなわち、革新による価値の創造は、自然科学、生命科学だけでなく、人文社会科学、文化、芸術にも適用される概念です。一般に新しい考え方や方法、新しいモノ、品質、新しい組織、システム等の創造を意味しますが、それだけではなく、既存の技術や概念の発想を変えた再構築や組み換えが重要なイノベーションの可能性を持つことを強く認識して行動すべきです。革新による価値の創造により、自己を実現し、達成感を得ると共に、他者や社会の幸せに貢献することにより報われることが皆さん自身の幸せを築くことになると考えます。
次に、幸せを得るために必要な力についてお話します。4年前、学部の皆さんの入学式の時に、大学で養うべき力、行うべきこととして、4つのことを申し上げました。覚えてはおられないかもしれませんが、それは、
1)個人としての自立
2)人間としてどのように生きるかという考え方、方針の基礎の形成
3)情報化、グローバリゼーションの中での国際的素養
4)専門家として創造的に考える力
の4つでした。皆さんの成果はいかがでしたか?それなりの成果を得たと信じます。これらに加えて、さらにこれから、今までに述べた様な自らと社会の幸せを築くために必要なことの中から3つ申し上げます。
最初のひとつは、(1)時代とともに変化する社会の価値観と多様性を敏感に感じとり、自分の夢や志を、必要に応じ修正することです。具体的には、10年ごとの小さな目標を立て、それを修正しながら積み上げることで大きな目標に到達することを勧めます。二つ目は、(2)専門家として創造的に考える力に磨きをかけ続けるという「誠実な努力の継続」です。皆さんが得た知識や技術は10年と持ちません。創造的に考える力のみが将来においても信頼できるものであります。最後は、(3)心身の健康管理力です。人間は、生身の壊れやすい生き物であることを決して忘れてはなりません。肉体的健康に加えて、心の健康が不可欠です。スランプや窮地に陥った時には、絶望から破局に至らないよう、自らを慰める術を知ること、生きるエネルギーが小さくなる前に開き直りやあきらめによって再び歩き始める元気を生み出すという心の訓練を行うこと等は私の経験からも有効であります。
熊本大学も、法人化の競争的環境の中で、教育・研究・社会貢献を通じて、国際的にも存在感を示す大学であり続けるための「誠実な努力を継続」します。くしくも、本年は、法人化後、第一期6年の目標・計画期間の評価を受ける年でありますが、熊本大学の真の評価は、卒業生諸君の社会への貢献の大きさにより生まれるのであります。その意味でも、皆さんの御活躍に期待いたします。
「Kumamoto University For You」あなたのための熊本大学は、皆さんの輝かしい未来の為にも存在し続けます。再び戻られて、学習・研究することも可能です。いつでも母校を訪れたり、メール等による情報交換を続けてください。
「心身の健康」を保つ術(すべ)を知り、10年毎の具体的目標の達成のために、プロフェッショナルとしての「誠実な努力を継続」して、幸せな社会を築こうとする大きな夢や高い志を実現するという輝かしく、幸せな人生、すなわち、「あなた自身の最大の遺産」を後世に残されることを切に希望し、はなむけの言葉といたします。
最後に巣立っていかれる皆様の生きる力強さ、元気さを確かめたいと思います。一人ずつのお名前を読み上げて返事をいただきたいところですが、学部等毎に卒業生、修了生の所属と人数を申し上げますので該当する人々は人数を読み上げた直後に“はい”または“オー”と大きく答えてください。声の大きさで諸君の「明るい未来の大きさ」を確認したいと思います。
【文学部176名】、【教育学部及び特殊教育特別専攻科・養護教諭特別別科362名】、【法学部199名】、【理学部182名】、【131名の保健学科1期生を含む医学部225名】、【薬学部91名】、【工学部552名】。
大学院【文学研究科】【教育学研究科】【法学研究科】【医学研究科】【医学教育部】【薬学教育部】【自然科学研究科】【社会文化科学研究科】【法曹養成研究科】合計740名。
ありがとうございました。以上、総勢【2527名(内、留学生63名)】の皆さん一人一人に対し、熊本大学を代表し、皆さんの前途洋々たる船出を祝します。おめでとう!!そして、Bon Voyage!!
経営企画本部 秘書室
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