学長からのメッセージ

熊本大学長 崎元達郎 熊本大学は、太平洋戦争後の学制改革を機に、戦前から官立として存立していた熊本医科大学、旧制第五高等学校、熊本工業専門学校、熊本薬学専門学校、それに熊本師範学校を母体として、昭和24年(1949年)に、法文、教育、理、医、薬、工の6学部からなる総合大学として発足した国立大学です。したがって、大学としての歴史は漸く半世紀を経たところですが、熊本医科大学をはじめ、前記の各学校はいずれも明治中期以来永々と営まれてきた学舎であり、各学部は、それぞれに一世紀を超える伝統を培ってきています。また、数ある国立大学の中で、キャンパス内に、明治22年(1889年)建築の旧制第五高等学校の美しいレンガ造りの校舎や、明治41年(1908年)建築の熊本高等工業学校の機械実験工場を往時の姿そのままに、資料館として、また、国の重要文化財として維持しているところは他になく、これらの文化財は木立に恵まれた本学のメインキャンパスである黒髪キャンパスとともに、古き良き時代の我が国の高等教育を忍ぶよすがとなっています。

本学は、創設以来、幾度もの発展的改組を重ね、現在では、文学部、教育学部、法学部、理学部、医学部、薬学部、工学部の7学部と、理工系の自然科学研究科、文学研究科、教育学研究科、法学研究科、医学研究科、薬学研究科の6研究科によって構成され、それに医療技術者養成を目的とする医療技術短期大学部が附置されています。また、現在、文学研究科と法学研究科に人文・社会科学系の博士課程を平成14年度に開設すべく鋭意努力しているところです。

文学部、教育学部、法学部、理学部、工学部のある黒髪キャンパスは、現今の大都会の大学とは異なり、学生の大半がその周辺に居住し、キャンパス周辺の人々との交流が保たれています。また、医学部と薬学部は、黒髪キャンパスと3?ほど離れた熊本市の中心部にありますが、いずれのキャンパスも古くから熊本の人々に親しまれ、それぞれのキャンパスの周辺はいかにも大学の街といった雰囲気が今なお維持されています。

本学は、他の国立大学と等しく、現在厳しい環境下に置かれていますが、教職員が一体となって、大学の教育環境の改善はもとより、大学の運営や組織、施設等の近代化等、能う限りの努力を傾注しているところです。近年、相次いで設置されたエイズ学研究センター(平成9年度)、動物資源開発研究センター(平成10年度)、衝撃・極限環境研究センター(平成11年度)、発生医学研究センター(平成12年度)は、いずれもそうした努力の成果として設置されたと自負するに価する全学共同利用施設であり、本学の教育研究の拠点として今後の活性度の高い活動が期待されています。これらの施設に加え、平成13年度には、沿岸域環境科学教育研究センターと生涯学習教育研究センターの設置が予定されています。前者は、天草に設置されている理学部附属臨海実験所の将来を見据えて抜本的に改組し、世界的にも特色のある有明・八代海沿岸域を単に従来の生物学を中心として研究するというのではなく、工学、さらには、人文・社会科学をも含めて多面的に研究し、その成果を直接教育に反映させることを目的とした、これまでに例のないユニークな施設です。また、生涯学習教育研究センターは、大学のアカデミックな活動の成果を社会の人々に還元することを目的としており、従来の生涯学習教育研究センターとは一味異なる、大学としてのより積極的な社会貢献の拠点を目指すものです。

また一方、熊本大学では、研究の成果を産業界に有効に活用していただく、あるいは、産業界の要請に積極的にお応えするといったことを重要視し、産学官連携研究推進機構という組織を教官が主体となって平成10年度に立ち上げ、人的に充実された地域共同研究センターを活動の中核に位置付けて積極的な活動を展開しつつあります。この成果は、着々と実りつつあり、産業界からも大きな期待が寄せられています。

このように、熊本大学は、地域社会への貢献を通じて、国際的に評価され得る大学を目指し、日々変わりつつあります。しかし、改善を要する問題も数多く抱えており、これらを克服していくには、熊本大学構成員の格段の努力はもとより、学外の方々の温かなご理解とご支援が必要です。このホームページを通して、熊本大学を正しくご理解いただき、ご批判、ご提言等を積極的にお寄せ下さることを期待いたします。

熊本大学長 江口 吾朗



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