菊池恵楓園でハンセン病パネル展を開催中

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現在、熊本県合志市にある国立のハンセン病療養所・菊池恵楓園で、本学の学生らによる企画展「入所者たちの足跡 ――恵楓園内史跡を歩む――」が開催されています。
企画展は同園内にある資料館、「社会交流会館(歴史資料館)」で実施されていますが、企画展を実施したのはこの館に学芸員養成課程・博物館実習で訪れた文学部の学生、本田利恵子さん、松岡星(あかり)さん、佐藤弘行さん、西村佳純さん、才田将司さん、福崎 大祐さんの6名。実習期間は平成27年8月31日から9月5日までの6日間、内後半の3日間が展示作成に当てられていました。

本田さんは、「『恵楓園内の史跡の紹介』というテーマを与えられた以外は全くの自由で、そこからは何度も話し合いを重ね、悩み、考えながら今回の展示のもととなる企画案やパネルの原稿を練り上げていきました」といいます。学生らが入所者の方から直接聞いた話、社会交流会館に収蔵されている各種資料、文献などをもとに展示計画は作られていきました。

しかしながら実習期間終了時には企画案と原稿が完成しただけで、実働的な部分には全く手が回っていなかったとのこと。参加した学生らは実習終了後もボランティアの形で恵楓園に通って作業を継続し、12月、ついに展示完成にこぎつけることができました。

この企画展の最も特徴的な部分は、創作された物語を主軸として展開されているところです。園内にある入所者の生活の歴史が染みこんだ史跡、これをどのように紹介するか、学生らは悩んだ末に、架空の入所者「久間田 一生(くまだ・かずき)」を登場させることを構想しました。6歳で入所することとなった少年が、様々な経験、親しい人物との別れを乗り越えて自分の人生を歩みだすまでを、史跡を背景としながら描き出す、それがこの企画展の基本コンセプトとなっています。

展示は物語を綴った絵本、各史跡を紹介したパネルの2篇により構成されており、絵本とパネルを交互に読みながら歩を進める、という形式をとっています。主に絵本を担当した松岡さんは、「入所者のお話をお伺いする中でより一層彼らの感情を伝え、残していきたいという思いが強くなり、絵本という形にしました。場所や意義もバラバラの史跡にストーリーをつけることで関連性を見出すことができるのではないかと考えています。皆様にも彼の半生を追体験していただければ幸いです」と語ります。パネルには史跡の解説文、外観の新旧を比較した写真、史跡に関わる入所者のコメント等が示されており、絵本と組合せて眺めることで、より入所者の感情に近づいた視点で史跡の意味を捉えることができるようになっています。展示室の入り口には企画展と連動した園内散策マップが置かれ、展示を見たあとに園内を巡るよう見学者に促しています。

本田さんは、「実習期間中に聞いたお話や知ることができた事実は全て知らない、知ろうともしなかったことばかりでかなりの衝撃を受けました。10年、20年後のそう遠くない未来に、ハンセン病及びその差別を知っている生き証人の方々はいなくなってしまうでしょう。これからの社会を担っていく何も知らない私たちの世代こそ、これらの事実を知るべきだ、関心を持つべきだと強く思いました。
まずは関心を持たなければ、そもそも知ろうという気にもなれない。今回の私たちの展示が取り上げられたことで、一人でも多くの方が、とりわけ若い世代の方が差別問題について関心を持つきっかけになれればいいなと思います。
まだまだ未熟で勉強不足なため、展示内容等は拙い部分も多いかとは思いますが、よかったらぜひ足を運んでみてください」と話してくれました。

パネル展は平成28年8月末まで、菊池恵楓園の社会交流会館で開催されており、会場では絵本の小冊子も配布しています。
【菊池恵楓園 社会交流会館(歴史資料館)】
●開館時間
平日 10:00~16:00
(水曜、日曜、祝日及び年末年始は休館)
●入館料
無料

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博物館実習生6名
(左から本田さん、松岡さん、佐藤さん、西村さん、才田さん、福崎さん)

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絵本のサンプル


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