さかなクンがやってきた!未知の海底を調査し、環境変化の原因を明らかにする

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生きているカキツバタ礁の実態を調査船で明らかに

健児くん(以下◆):今回の調査では、どんなことを行うんですか?

秋元先生: 八代海の海底には、昔からマウンドと言われるドーム状の地形がいくつも広がっていました。1つのドームの大きさは直径50m、高さ5mくらい。その後の調査で、これが深海に棲んでいるカキツバタというカキが形成するカキ礁だということはわかっていました。カキ礁とは、カキが積み重なってできる礁で、カキの群生地のことです。これまで、1つ1つのカキ礁は海底にぽっこりできている、というイメージだったのですが、実際に海底を調査してみると、下でつながっていることがわかったんです。8000年くらい前に大きなカキ礁がどーんとできて、その後、環境の変化などにより小さくなり、間を覆うように泥がかぶっていった結果が、現在の八代海の海底のカキツバタ礁だと考えています。

マガキなどのカキ礁はほかのところにもあるのですが、海底地形をつくるほど大規模なカキツバタ礁は世界的に見ても珍しいです。そこで、いつできたのか、どのくらいの大きさがあるのか、小さくなったときの環境の変化や、カキ礁がどのくらいつながっているのか、などについて、仮説を検証する調査を行うことになりました。調査船で海底地形を測定したり、堆積物のサンプルを採取し、地層の年代を測る予定です。カキ礁ができはじめたときの年代や小さくなったときの環境の変化など、考えていたことが本当に正しいか、確認したいと思っています。

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世界的にも有数の調査船での調査

◆: 今回の調査は茨城大学との共同調査で、さかなクンも取材に来ていますね!

秋元先生: 今回共同研究を行う茨城大学の安藤寿男教授は、カキ礁の研究では有名な方で、以前から一緒に研究をしています。千葉にはカキツバタ礁の化石があるのですが、そのほかに見つかっているのは八代海のこのカキツバタ礁だけ。しかも生きているカキ礁です。水温などの環境の変化がその違いを作ったということが今回証明できれば、紀伊半島など間の場所でももしかしたら生きているカキツバタ礁が見つかるかもしれないと期待しています。

今回の調査で使う熊本大学の調査船、ドルフィンスーパーチャレンジャー号は、音で海底の地形を測定する機械や、無人ロボットなども搭載しています。採取したサンプル土壌の中のDNAや含まれている化学物質ができるだけ変質しないよう、マイナス30度にできる冷凍庫なども装備。生物、地球化学などあらゆる科学的調査に使える船です。精密なデータの取得を可能にすることで、海底環境の変化だけでなく、地震後の海底の変化なども測定でき、今後のシミュレーションにも役立つデータが取得できます。

珍しいカキ礁の調査ということで、NHK「潜れ!さかなクン」が取材にきてくれることになりました。海の世界をさかなクンが探検する、という番組で、八代海の珍しい地形やカキツバタ礁について説明する予定です。

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産学連携で県や国の調査も実施

◆: 熊本県や国の調査などもやられているそうですね。

秋元先生:そうなんです。今は、熊本県からの依頼で、八代海の湾奥の調査をすすめています。湾奥は泥が溜まりやすいのですが、どのように泥がたまっているかというシミュレーションが正しいかどうかを調査しているんです。そのために、精密な地形図が描ける熊本大学の調査船が役に立っています。シミュレーションが正しいことがわかれば、30年後、50年後の海底地形や泥のたまり方が予測できるようになります。研究結果は、防災や海の活用、生物保護など、さまざまな分野で役に立つようになると思います。

環境だけでなく、生物や化学などさまざまな分野の調査を行ったり、その原因として、既存のさまざまな調査と照らし合わせることも重要です。バラバラなデータをつなぎ合わせ、1本の軸を通すと、あっという間にブレイクスルーすることもあるんです。1秒前にわからなかったことが1秒後にわかるかもしれない。研究にはそんな面白さがありますね。


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こだわりをもって、範囲を限らず学ぼう!

◆: 学生のみなさんへひと言お願いします!

秋元先生: なにをおいても「こだわり」が重要だと思っています。誰が何を言っても、自分が面白いと思ったことにこだわって、突き詰めていくこと。これが一番です。このときの努力は決して無駄になりません。さらに「専門はこれ」と限定して学ぶのではなく、関連する範囲はできるだけ広く学ぶことも大切。私は化石が専門ですが、最近やった海外との共同研究のとき、学生のときに学んだ岩石や堆積物の勉強が役立ちました。25年以上経って、役に立った!やってよかった!と思うときもくるんです。1度や2度、失敗しても大丈夫。一生懸命やっていれば、失敗もデータになりますよ。

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(2020年4月6日掲載)

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