年頭所感

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 新春を迎え、教職員の皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 日頃より、本学の教育・研究・医療、そして大学運営を支えてくださっている皆様のご尽力に、学長として深く感謝申し上げます。令和7年を振り返りますと、熊本大学は厳しい環境の中にあっても、教育研究活動、社会との共創、医療提供の各分野において着実な前進を遂げることができました。これらの成果は、教職員一人ひとりの真摯な取組の積み重ねによるものであり、改めて敬意を表します。

 私が令和3年4月に学長に就任してから5年が経とうとしています。本学では引き続き「熊本大学イニシアティブ2030」のもと、「地域と世界に開かれ、共創を通じて社会に貢献する教育研究拠点大学」の実現を目指すと共に、「常に情報を発信し続ける大学」、「常に外から見える大学」、「常に外からの声に耳を傾け、発展し続ける大学」を基本姿勢に掲げて、その成果を地域・社会・世界の発展のために還元して参りました。

 熊本県は、半導体産業振興における中心地域でありますが、半導体関連産業の集積は地域に大きな経済効果をもたらす一方で、産業人材不足や環境負荷といった課題が顕在化しています。半導体産業をはじめとする各分野での「高度な人材育成」、「産業エコシステム形成への参画・先導」、そして「地域課題解決の支援・主導」は、本学の責務と考えています。

 これらを担う大学となるために、本学は令和6年、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に申請し、採択されました。「半導体集積地のモデル都市構築を先導し、世界中から多様な人材が集まる研究教育大学」になることを10年後のビジョンとして設定し、半導体実装から社会共創研究を通じて、地域イノベーションの実現と持続可能な産業都市構築を目指します。

 また、令和7年に竣工した、企業等との次世代最先端研究・半導体実装研究拠点となる研究棟「SOIL(ソイル)(Semiconductor Open Innovation Laboratory)」及び隣接する高度半導体・情報専門人材の養成を目的とした教育棟「D-Square」では、研究と教育の両面で相乗効果を生み出し、他大学及び企業との融合研究やオープンイノベーションを進め、社会課題の解決や日本全体の研究力向上に取り組んでいきます。

 本学では、半導体分野の発展による好影響を特定分野にとどめることなく、大学全体へと波及させることを目指し、「融合」と「グローバル化」を柱とした取組を一層推進していきます。なお、本学が掲げる「融合」とは、従来の文理融合にとどまらず、半導体と生命科学、半導体と人文社会科学など、半導体産業と多様な学問分野を掛け合わせることにより、新たな研究領域や社会的価値、さらには新産業を創出することを意味しています。半導体産業は、半導体・デジタル・医療といった新たな融合研究領域の創成や、半導体技術を活用した新たなユーザー産業の展開を通じてこそ、次の成長段階へとつながり、持続的かつ安定的な発展が可能になるものと考えています。

  大学教育においても、急速に進む社会変化とグローバル化の時代を切り拓くためには、専門分野にとらわれない多角的な視点を持ち、自ら課題を見出し、主体的に考え行動できる人材の育成が不可欠です。令和6年に設置した「情報融合学環」に続き、令和8年4月に新設する「共創学環」では、文理の枠を越え、経営・マネジメント、国際的コミュニケーション、データサイエンスを体系的に取り入れた学際的教育を展開し、グローバル社会で活躍できる人材の育成を図ります。

 さらに、佐賀大学との教育学部共同教員養成課程の設置、文学部の一学科制への改組を行うとともに、同年度に附属小学校に、令和9年度には附属中学校に、国立大学附属学校として全国初となる「国際クラス」を設置し、初等中等教育段階からのグローバル人材育成にも取り組んでまいります。

 一方で、大学を取り巻く経営環境は、これまで以上に厳しさを増しています。人件費、光熱費、物価等の高騰、運営費交付金の実質的な目減りは、本学の財政に大きな影響を及ぼしており、限られた人的・物的資源をいかに効果的に活用していくかが、大学の将来を左右する重要課題となっています。

  この厳しい財政状況の中においては、外部資金獲得、業務効率化、組織のスリム化、高度化等を同時に進めていく必要があります。現在、積極的に取り組んでいるネーミングライツ、クラウドファンディング、共同研究等による収入拡大は、今後さらに重要性を増します。同時に、DXを活用した業務改革や、部局を越えた人材・リソースの共有など、教職員一人ひとりの意識と行動がこれからの大学運営を支えます。

  折しも、文部科学省においては、今後18歳人口が急激に減少していく中で、第5期中期目標期間の国立大学法人等の在り方について、令和7年11月に「国立大学法人等改革基本方針」が策定されました。本学においても、この改革基本方針を踏まえ、令和10年度から始まる第5期中期目標期間、さらにその先を見据え、ミッションや機能強化の方向性について活発に議論してまいります。

 明治20年創設の第五高等中学校以来の歴史と伝統は熊本大学の誇りです。しかし、伝統を守るためには、変わり続けなければなりません。熊本大学がこれからも地域と世界に必要とされる存在であり続けるため、教職員の皆様と課題を共有し、改革を進めていきたいと考えています。

 本年も、皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げ、年頭の挨拶といたします。

 

                                   令和8年1月5日  熊本大学長 小川 久雄

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