令和8年度入学式式辞

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新入生の皆さん、熊本大学へのご入学、誠におめでとうございます。春の訪れを感じさせるこの佳き日、皆様の入学を祝福するかのように桜が美しく咲き誇っています。本日この慶ばしい日に、来賓各位の御臨席を賜り、理事、副学長、部局長、教職員と共に、総勢2,598名の入学式を執り行うことができることは、大変喜ばしいことであります。また、入学を果たされた皆さんの研鑽と努力に敬意を表し、その志を支えてくださったご家族や先生方をはじめ、関係する皆様に深く感謝するとともに、心よりお慶び申し上げます。

熊本大学は、1887年(明治20年)に設立された第五高等中学校(五高)から数えて、139年の長い歴史と素晴らしい伝統を持つ総合大学です。文学部、法学部、理学部は旧制第五高等学校、教育学部は熊本師範学校、工学部は熊本工業専門学校、薬学部は熊本薬学専門学校、医学部は熊本医科大学を母体として、1949年(昭和24年)に国立熊本大学として発足しました。さらに医学部・薬学部の源流は、1756年(宝暦6年)に細川藩が開いた再春館と蕃滋園にまでさかのぼります。

また本学には、「五高記念館」「化学実験場」「工学部研究資料館」「表門(赤門)」の4つの国指定重要文化財があり、なかでも五高記念館は、熊本大学の歴史と精神を象徴する建造物です。第五高等学校では、夏目漱石、嘉納治五郎、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)などが教鞭をとりました。NHK朝の連続ドラマ『ばけばけ』でも第五高等学校に所縁(ゆかり)のある小泉八雲を題材とした物語が放送され、彼が日本文化を深く理解し、世界に伝えようとした姿勢が改めて注目されました。異なる文化の間に立ち、理解と共感の橋を架けた八雲の精神は、まさに「グローバル人材」の原点であり、これからの皆さんの生き方の指針となるでしょう。

グローバルな思考を養うためには、多くの書籍に触れることも重要です。熊本大学附属図書館には、各種書籍の他、熊本藩主であった細川家の古文書を始めとした歴史的資料についても収められており、直近の3月26日の新聞記事にも大きく取り上げられております。図書館は、皆さんの知的好奇心を刺激し、新しい学びの入口となる場所ですので、是非、足を運んでみてください。

このように、歴史と伝統ある熊本大学ですが、現在、大きな変革期にあります。熊本県では半導体関連企業を中心とした産業集積が急速に進み、国内外から注目を集めています。私は、この熊本を「世界とつながる日本の最前線」と捉え、加速度的に変化する現代において、熊本大学は「変わり続ける大学」でなければならないと考えています。変わり続ける大学であるために、熊本大学は、「地域と世界に開かれ、共創を通じて社会に貢献する教育研究拠点大学」を目指し、「教育」、「研究」、「社会との共創・医療」の3つの戦略に基づき、「常に情報を発信し続ける大学」、「常に外から見える大学」、「常に外からの声に耳を傾け、発展し続ける大学」 を基本姿勢に掲げて改革を進めています。

具体的には、半導体・デジタル研究教育機構、学部相当組織である「情報融合学環」、工学部における半導体デバイス工学課程の設置などを進めてきました。さらに、文部科学省の「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」にも採択され、本学の研究力と人材育成基盤は一層強化されています。また、この4月から、新たな学部相当組織である「共創学環」や、教育学部附属小学校への「国際クラス」の新設など、更なる改革を続けています。

さて、話題となっている「半導体」ですが、「半導体」というと理系を想像する方が多いと思うのですが、今後はデータサイエンスなど理系的なセンスを持った文系人材の需要も高まっていきます。「半導体×(クロス)人文社会科学」、「半導体×(クロス)生命科学」などの組み合わせでイノベーションを起こしていく、この姿勢を文系理系を問わず、熊本大学全体に広げていきたいと考えています。

半導体研究のテーマは高度に専門分化されていますが、それをさまざまなデバイスに応用するには、全体を俯瞰(ふかん)して束ねられる人材が必要になってきます。そのためには優れたコミュニケーション能力が欠かせません。

私自身、学問分野のみでなく、企業や銀行、国や県、市などの異なる分野の方々と話し合うことで、新たな知見を得ることがたくさんありました。つまり、自分の専門分野に閉じこもっていては新たなアイデアは出てこないということです。イノベーションを起こすには、あくまで専門家でありながら、コミュニケーション能力を研ぎ澄ませることが大切です。

ここで、コミュニケーション能力を磨き、人間力を育み、社会性を身につけるきっかけとなる方法を皆さんにお伝えします。それは、「挨拶」をすることです。「大学生にもなって、何を今さら」と思うかもしれませんが、私は、挨拶は「最もシンプルで、最も強いコミュニケーション」だと考えています。大学で人に会ったら、会釈でも構いませんので、まずは挨拶をしてみてください。挨拶をすれば、人間関係が生まれます。人間関係によって、人生が変わります。
 
大学生活は、自ら考え、行動することで大きく裾野が広がります。講義や研究だけでなく、部活動や地域活動、さらには海外の大学で学ぶなど、さまざまな挑戦を通して、自分の可能性を試してください。熊本大学には多くの部活やサークル活動があります。私自身も54年前の1972年に熊本大学へ入学し、すぐに部活動に参加しておりました。部活動で得られる知識や学びは多く、学生生活をより充実したものにしてくれます。さらに、そこで出会った仲間とは卒業後の今でも親交が続いており、まさに生涯の友といえる存在になっています。現在は、学長として、体育会の会長を務めていますので、是非積極的に参加してください。

熊本大学は、「創造する森 挑戦する炎」というコミュニケーションワードのもと、皆さん一人ひとりの挑戦を全力で支えていきます。今日この日を、「なりたい自分への第一歩」としてください。失敗を恐れず挑戦できる人こそが、未来を創ることができる人です。

結びに、皆さんの前途が希望に満ちた素晴らしいものとなることを祈念し、私の式辞といたします。

本日は、熊本大学へのご入学、誠におめでとうございます。

                                  令和8年4月4日

                                      熊本大学長 小川久雄

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