Webマガジン「Kumadai Now」子どもたちの自由で自発的な発想を促し、美術の力を伝えたい!

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子どもたちの自由で自発的な発想を促し、美術の力を伝えたい!

教育学部の美術科教育は、美術を教えると共に、美術の持つさまざまな力を子どもたちに感じてもらい、興味をもって自発的に取り組んでもらう授業づくりが重要です。喜久山悟教授が研究しているのは、そんな美術教育の分野。幅広い手法で美術科教育に取り組む喜久山教授にお話しを伺いました!

理論と実践力を兼ね備えた美術教師を目指す

健児くん(以下◆):先生の研究について教えて下さい。

喜久山先生:私が所属しているのは教育学部です。「美術を学ぶ」と共に、美術教員を育てることを目的としています。その中で、私が主に行っているのは教育理論。いろいろな教材や素材、手法を使いながら、どうしたら、子どもたちが「やってみたい!」と感じ、自発的に取り組むようになるかを考えながら、教材づくりなどを行っています。

もともと、教育学部の出身で、大学院修了後はこどもの城(国立総合児童センター)造形スタジオという所で子どもたちに造形指導をしていました。学校の授業とは違い、子どもたちが興味をもってくれないと取り組んでもらないので、どうしたら子どもたちが自ら「やりたい!」と思ってくれるかを考えて、プログラムを作っていたんです。例えば、プログラム全体を「宝島での宝探し」に見立てて、年齢にあわせて、帆船づくりや石を蓄光塗料で塗って宝物にするプログラムを組み込みました。そうやって実践を繰り返しているうちに、やはり「教育理論」をしっかり学んだ上で実践力をつけていくべきだ、と考えるようになり、研究の道に入ることにしたんです。

◆:美術の分野での、先生のご専門は?

喜久山先生:特にこれ、と決めているものはありません。立体をつくることが多いのですが、そこには絵を描く技術も必要だし、彫刻や造形の知識も必要です。素材も、木材を中心に、さまざまなものを使います。流木などの自然物や、排水口の網など、思いもよらないものが、面白いものをイメージさせてくれるんです。
小さいころから、絵を描くことも好きでしたが、いろいろな素材を使ってものを作ることも好きでした。興味のおもむくままに、いろいろなものを作ってきて、それが楽しかったです。

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「子どもにとって大切なことは?」を多角的に考える先生に

◆:学校で美術を学ぶことの意義はなんでしょうか?
喜久山先生:国語や算数は、理論を積み上げて、答えにたどりつく、そんな教科だと思います。美術はそれとは異なり、理論を超えて一気に飛躍する瞬間があるんです。ずっと悩んでいると、目の前にある色やモノ、カタチがなにかヒントをくれて、その瞬間に、パーッとイメージが広がっていく、というか。その瞬間、子どもたちの顔がはじけて、笑顔があふれるんですね。それこそが、美術がもつ力なのではないかと思います。

そのためには、自分から美術にむきあって、興味をもってもらわないといけません。よく思うのですが、絵や彫刻など、芸術家としての力があることと、子どもたちに教える力があるということは別ものです。今、それぞれの子どもたちにとって大切なことはなんなのか、多角的な視点をもって、考えられることが重要だと思っています。そのためにも、いろいろなものを使って、イメージをカタチにしていくこと、自分なりの工夫をしていくことを、子どもと一緒に楽しめる先生になってほしいですね。

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4コマ漫画で大賞受賞!

◆:先日、4コマ漫画大賞で大賞を受賞されたそうですね!

喜久山先生:「第14回まんがの日記念 4コマまんが大賞」の一般部門で大賞を受賞しました。この賞は、漫画「フクちゃん」の作者で高知市出身の故横山隆一さんにちなんで創設されたもので、2005年から毎年開催されています。実は、昨年のまんが大賞で、娘が受賞しまして自慢されたもので(笑)。自分もチャレンジしよう、と思ったんです。締切直前に応募を決意し、ニュースを見たり、お風呂に入ったりしているときに思いついたものをいろいろとアレンジして、作品にしました。受賞作品は「ロボ・ロボ介護」と題し、老老介護やAI(人工知能)などの話題を含ませながら、4コマの流れを作りました。大賞の連絡を受けて「やった!」と思いましたね。もともと、小さいころから新聞の1コマ漫画が大好きだったんです。難しい社会問題を1コマで表し、うならせる技術やアイデア、センスに魅力を感じていました。小学生の頃は、星新一が収集したアメリカの1コマ風刺漫画を紹介したエッセイを見て楽しんでいたくらいです。

1コマ漫画や4コマ漫画は、日本の文化で言えば、俳句や短歌のようなものだと思います。それぞれ、ニュアンスやリテラシーは異なりますが、パターンにあてはめていくのは、面白く、楽しい時間でもありました。

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アートの力を地域に活かす

◆:先生は、アートで地域活性化を目指すプロジェクトも行っておられますね。

喜久山先生:2000年から2003年にかけて、沖縄県のうるま市の「イチハナリアートプロジェクト」を立ち上げました。うるま市は全国にくらべて失業率が高い沖縄県の中でも、最も失業率が高い市でした。私がうるま市出身だったこともあり、市役所に勤めていた友人からそれを聞いて「美しい自然とアートを活用して人を呼べるのではないか」という話をしたんです。それを実行に移したのが、伊計島の廃校になる学校を活用したアートプロジェクトでした。学校に話題になるような現代アートを置き、多くの人に来てもらえるようににしました。「こんなところにこんな作家の作品が!」というものもあったし、地域住民をテーマにした作品で思いもかけず話題になったものもありました。今では、会場が他の島にも広がり、継続的なプロジェクトになっています。

このプロジェクトを通じて、美術は美術館に収まるものとは限らない、ということを感じました。そうなることで美術は身近なものになります。それによって、経済効果や地域活性もまた、美術の大きな役割の一つだと思うようになりました。

今年に入って、また、このプロジェクトへの参画を打診されています。私の役割は、芸術家ではなく、プランニングやコーディネートなどデスレクター的な立場なのですが、また、面白いことができるのではないかと考えているところです。

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子どもの心をもって学び続けることが大切

◆:学生の皆さんに一言お願いします!

喜久山先生:最近、美術科教育にくる学生さんや美術に興味をもっている人たちの入り口が漫画、ということが多くなっています。日本のストーリー漫画は素晴らしいし、絵を描く技術も高い人が多いです。だからこそ、もっといろいろな表現にも触れてほしいと思います。アートは絵を描くことだけではないし、特に、子どもたちに教える、となると、自分が専門としていない分野も教えていくことになります。音楽や舞台、映画など、いろいろな表現手法の作品を見て、触れて、広げていけるといいですね。

年を重ねると、動く前に考えてしまうことが多くなりますが、時には、子どもたちのように、「面白い!」と思ったら動いてみることも大切なのではないでしょうか。目を輝かせて作品づくりに向かう子どもたちに学んで、いつまでも子どもの心をもって学び続けてほしいですね。

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(2019年2月20日掲載)

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