WEBマガジン「KUMADAI NOW」世界に開かれた研究組織で造血幹細胞の謎を解き明かす

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公用語が英語、外国人研究者の割合が40%という国際先端医学研究機構(IRCMS)。ここで、組織マネージメントしながら、造血幹細胞の研究を行っているのが滝澤仁先生です。世界最先端の研究をしている滝澤先生に研究への思いをうかがいました!

造血幹細胞の謎にせまる

健児くん(以下◆):先生の研究について教えて下さい。
滝澤先生:骨髄で血を作っている造血幹細胞について研究しています。幹細胞というのはとても特殊な細胞で、自分自身と、同時に違う細胞を作ることができます。脳に脳の幹細胞、心臓には心臓の幹細胞があるのですが、骨髄内にある造血幹細胞は血を作ることしかできません。

造血幹細胞が一番使われるのは骨髄移植です。血の病気になった人が健康になるためには、血を入れ替えたらいい、そのために、血を作る機能をもつ骨髄、つまり造血幹細胞を移植しよう、というものです。この治療が最初に考えられたのは1957年。造血幹細胞の役割や活用法はわかっても、なぜ、そうなのか、未だにわからないことばかりです。例えば、造血幹細胞が分化する際にはいくつかのパターンがあります。造血幹細胞が2つになったり、造血幹細胞と血液になったり、血液と血液になったりします。でもどのパターンで分化するのか、それを決めるのはなんなのか、そのメカニズムはわかっていないんです。さらに、骨髄から取り出して試験管内にいれた造血幹細胞は、骨髄内とはまったく違う動きをするようになり、造血幹細胞ではなくなってしまいます。なので、造血幹細胞だけを増やすことができず、骨髄移植のドナー不足は今も解消できていません。でも、なぜ、違うものになってしまうのか、その理由はわかっていないんです。

造血幹細胞の研究が始められてから50年くらい経ちます。技術革新も起きて、ようやくどれが幹細胞なのかはわかるようになりました。それでも、一つわかるとさらにわからないことがでてきたりして、まだまだわからないことだらけなんです。

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免疫の遺伝子への興味から始まった造血幹細胞研究

◆:なぜ、造血幹細胞に興味を持たれたんですか?
滝澤先生:もとは、生物学科で免疫分野を研究していました。私たちの体を守ってくれている免疫細胞にどんな働きや活性化するための仕組みがあるのか、というテーマです。そのために研究していた遺伝子があったのですが、この遺伝子、造血幹細胞につよく出ているタンパク質だということがわかって、造血幹細胞の仕事にシフトしていきました。

今、造血幹細胞の働きを明らかにする、というテーマと別に、造血幹細胞の「冬眠」の仕組みの解明にも取り組んでいます。造血幹細胞は健康な人間の体内では寝た状態になっているんです。感染が起きると血液内の免疫は活性化するんですが、免疫細胞は戦うと死んでしまう。すると、造血幹細胞は目覚めて分化を始めます。でも、免疫が活性化するから造血幹細胞が目覚めるのか、足りなくなるから起きるのか、など、はっきりしたところはわかっていません。起きている状態が長くなると、造血幹細胞自体の働きも悪くなるので、どうやらずっと起きているのもよくないのですが、どのくらいが「ちょうどいい」のかもわからない。そこで、私たちの研究室では「なぜ、造血幹細胞は起きるのか」を調べているんです。

そのためには、技術革新が必要です。新しく技術が開発されれば、新しいことがわかってきます。革新を待つのではなく、自分たちで新しい技術を作ることも大事です。

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世界の同士と情報共有して、世界に評価される研究成果を出す

◆:先生にとって、研究の魅力とはどんなことですか?
滝澤先生:一番の魅力は、自分の好きなことがやれること。そんな職業はほかにはないですよね。科学を前進させたり社会に貢献したりという義務はもちろんあります。でも、それは100年後かもしれません。未来のために、というロマンがあると思います。もちろん苦悩もあります。自分が面白いと思って疑問を立てても、証明しきれないものもたくさんあります。正しいことをやっているのか、常に自問自答です。自分が正しいといえるのは、他人ではなく、10年後の自分だけかもしれません。また、世界一位にならなければ仕事の意義が失われてしまいます。「趣味」かもしれませんが、非生産的であってはならない。常に戦わないといけないんです。

でも、同士もたくさんいて、彼らに守られているとも思っています。 IRCMSは国際拠点。海外の友人もたくさんいます。とても賢い人たちにも会えます。彼らと議論していると、「じゃあこれをやってみたら」とか「こんな技術をもっている人がいるよ」と教えてくれる。科学者のコミュニティは開放的で常にアイデアや技術が交換されています。世界の友人と情報共有しながら、自由に研究できるのは、ここならではだと思っています。


◆:IRCMSとはどんな組織ですか?
滝澤先生:IRCMSは、生命科学分野の国際的な研究機関です。所属する研究者の40%は外国人で、公用語は英語。国際色豊かなメンバーが国際協力をしながら研究をすすめています。新しい風が常にはいってきて開放的な研究環境が整っています。でも、できて4年の組織ということもあり、世界的にみるとまだまだ。いい研究成果を発表して、世界に評価してもらえるようにならなくてはいけません。論文を1つ発表するまでに4~5年かかるので、今年くらいからは質の高い多くの論文が発表されるでしょう。いい研究成果は、世界中の科学者が評価してくれます。スポーツの世界と同じように、誰でも平等に評価されるんです。

日本の研究は論文数や、研究自体のインパクトが下がってきていると言われています。IRCMSからの論文が評価され、世界的に認められるようになれば、海外からの引用数もあがり、日本としての研究の質もあがってくるでしょう。

そのためにも、IRCMSは組織の運営方法も新しくなければと思っています。マネージメントの方法など、新しいことをやって学内規則などの制度の問題を考えていく、ということをやっています。組織運営の自由度の高さは、全国でもほかになく、文部科学省からも注目されています。熊大の自然科学分野にも国際先端科学技術研究機構(IROAST)という同じ方式の組織ができました。このように、運営方法の面でも、全国に広がっていけばと思います。


  • 国際先端医学研究機構(IRCMS: International Research Center for Medical Sciences)についてはこちら


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大きな視点でパッションを持って研究しよう

◆:学生の皆さんにメッセージをお願いします。
滝澤先生:研究は泥臭いものです。うまくいかないことも多いけれど、うまくいくと本当に嬉しい。努力の末に生まれるのは、誰も知らない、自分だけが知っている世界です。常に大きな視点で、パッションをもって、研究にのぞんでほしいと思います。

そのためには、海外など外に出てみることも大切です。私自身、海外の研究所で8年間研究し、そのときの成果や手法は今の研究に生かされています。日本のシステムとは違う環境での研究も重要なんです。

必ずしも外にでなくても、IRCMSのような機関であれば、国際環境で世界レベルの研究ができます。自分の中にある疑問にきづき、情熱をもって研究に臨めば、新しい展開が見つかるはず。それに応えられる研究環境は整っています。ぜひ、自分の中に沸き起こる素朴な自分に目を向けて、世界から注目を集める研究成果を、一緒に作っていきましょう!



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(2018年6月27日掲載)

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総務課 広報戦略室

096-342-3269