WEBマガジン「KUMADAI NOW」ダイナミックに活動する植物細胞の世界を映像に捉える研究

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国際先端科学技術研究機構 准教授 檜垣 匠 先生

肉眼では見えない植物細胞の世界を蛍光顕微鏡で捉えて研究しているのが檜垣先生。染色され、絵のように鮮やかに映し出された細胞の世界などへの思いを伺いました。

顕微鏡で「生命の営み」を見る

健児くん(以下◆):先生の研究について教えて下さい。
檜垣先生:植物細胞を材料に「生命を可視的に捉える」研究を行っています。具体的には、主に蛍光顕微鏡を使って植物細胞を観察し、撮影した画像を解析することで、細胞の構造や機能を調べています。植物は「動かない」というイメージがありますが、それは違います。顕微鏡で植物の細胞を観ると、細胞の中身がとても速いスピードで動いていることがわかります。まさに「生きている!」という感じです。これらの生命現象を深く理解するためには観察者の眼だけでなく、画像を客観的に解析する技術も必要です。そこで、私たちは、生き物の振る舞いを定量的に記述するためのデジタル画像解析技術の開発にも取り組んでいます。
 私たちは、画像解析の技術を活用して生物の謎を解き明かす学問を「画像生物学」と呼ぶことを提唱しています。画像生物学はまだまだ新しい学問領域。これから、多くの人たちと一緒にこの研究分野を盛り上げていきたいと考えています。
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研究現場に必要な解析技術の開発に自ら取り組む

◆先生はなぜ、植物の研究を始められたんですか?
檜垣先生:父が画家で、私も小さいころは絵を描いていて、植物は題材になりやすかったんです。植物を細かく見る機会も多く、植物自体には昔から興味をもっていた気がします。大学では生命科学を専攻し、そこで植物の細胞の中にある構造が秒単位でダイナミックに変わっていく動画をはじめて見たんですね。まず、「こんなきれいなものが細胞の中にあるのか!」ということに単純に驚きました。秒単位で動く姿は、「命」を感じさせ、「どうやってこんな形になったんだろう」「なんのためにこんな形をしているんだろう」と疑問が次々にわきました。今思えば、あの時に見た動画が研究の道に入るターニングポイントになったと思います。
 植物の生命活動を細胞レベルで解き明かすためには、顕微鏡で撮影される画像を解析していく方法は欠かせません。デジタル画像解析技術は日々進歩していますが、それでも、私たちの研究現場では実に様々なニーズが次から次へと出てきます。そこで、私たちは植物細胞の研究現場に軸足を置きつつ、そのほかの研究分野にも積極的に関わっていくことで、自分たちでも画像解析の技術開発に取り組むことにしたんです。
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「誰も見たことがない」を見つける喜び

◆:先生にとって、研究の魅力とはどんなことですか?
檜垣先生:細胞や細胞の中身のことは教科書でよく扱われているので、もう全て研究し尽くされているような印象を持つかもしれません。でも、それは大間違いです。いまだに新しい細胞の構造や現象が続々と発見されているんですよ。私も学生の時にはじめて新しい現象を見つけることができたんですが、そのときの「まだ世界中の誰も見たことがないものを、今、自分が初めて見ている」という感覚は、今でも忘れられません。もちろん、研究は、誰も行ったことがないところを一人孤独に進むようなもので、いつも不安ですし、辛いこともたくさんあります。でも、いつか本当にスゴイ宝物を見つけられるんじゃないかと期待しながら進んでいくと、価値あるモノに出会うこともあって、それは本当に嬉しいことですよね。
◆:今後はどのように、研究をすすめていかれますか?
檜垣先生:私は2017年8月に熊本大学に来ました。私が所属している国際先端科学技術研究機構IROAST(International Research Organization for Advanced Science & Technology)は、理学、工学の研究者が集まって、自然科学分野の先進的な研究を行うところです。私たちの研究には不可欠な、異分野融合が進んでいます。また、本機構に留まらず、情報科学・化学・物理学・医学を専門とされている先生方とも、学内での共同研究ができれば、私たちが研究している生物画像の解析技術をもっと進歩させたり、新しい活用方法を見つけたりできるのではないかと思っています。植物細胞の分野にとどまらず、さまざまな分野での新しい発見につながるような研究を展開していきたいですね。
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恵まれている学生期間に、力を蓄えて

◆:学生の皆さんにメッセージをお願いします。
檜垣先生:私たちの研究室は「画像生物学」と名前をつけていますが「これが研究テーマ」というものは敢えて設けていません。画像データを通して、生物現象を視覚的に研究するものであれば、どんなテーマに取り組んでもいい、と言っています。できれば、新しいことを自らの眼で発見してほしい、とは思いますが、自分が本当に面白いと思うことを、自分の視点で研究していってほしいですね。
 学生時代は本当に短いものですが、いましかできないことがたくさんあります。いろいろなことを体験して力を蓄える期間ですので、あとになって「あのときにやっておけば」と思うことが少ないように、思い切りエンジョイしてもらいたいと思います。アドバイスとしては、何か面白い体験をしたら、是非、その経験を誰かに伝えてみてください。事実や考えを正確に「伝える」ことは研究者だけでなく、社会人としてとても重要なことです。どうすれば他人にきちんと伝わるか意識して、どんどん話したり書いたり、アウトプットしてみてください。
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(2018年6月8日掲載)

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