急な加速や誤作動を防ぐ!入力信号の速度・加速度成分を自動で制限するフィルタの開発

熊本大学大学院 先端科学研究部 岡島寛准教授らは、入力信号の速度・加速度成分を自動で制限するフィルタに関する基礎研究成果を発表しました。
従来、あらかじめ動作パターンが定められている産業用ロボットの制御では、操作信号の速度成分やトルク入力などを制限することによって過度な負荷を防止しています。また、新幹線などの鉄道分野では、加速度成分やその時間微分である躍度成分を考慮して加減速することで高い乗り心地を実現しています。
その一方、自動車の運転でのアクセル・ブレーキ操作のような人間が操作する場合には事前にその動作を予測できません。アクセルやブレーキをどのタイミングでどれくらいの早さでどれくらい踏み込むかが予測できないため、入力信号の速度成分や加速度成分を制限することは困難でした。このことを踏まえて、入力信号の速度・加速度成分をリアルタイムに制限するフィルタ構造を提案しました。
提案した速度制限フィルタは、入力信号の速度成分が制限範囲内の場合には入力信号をそのまま出力し、満たさない場合には速度制限を満たすような信号に加工した上で元の入力信号にできるだけ近くなるような信号を出力します。加速度制限フィルタも速度制限フィルタと同様の機能を有しており加速度制限を満たすような信号に加工した信号を出力します。これらのフィルタは非線形関数の一種である飽和要素と簡単なフィードバック構造で実現されており、マイクロコントローラなどへの実装が容易です。
本研究では、先行研究で課題となっていた応答性(応答の遅れ)を克服し、より実用性の高いフィルタを開発することができました。
このフィルタを応用することで、例えばドライバの急な加減速操作や誤作動を防止するアシスト機構を自動車のマイクロコントロールユニットに組み込むことが可能になります。また、大規模制御システムへの部分的な組み入れなど様々な分野での応用が期待できます。
本研究成果は、「計測自動制御学会論文集」に2018年1月31日(水)に掲載されました。

【タイトル】任意信号に対して速度・加速度を制約する信号制限フィルタの設計
【著者名】岡島寛,中林佑多,松永信智
【掲載誌】計測自動制御学会論文集

【詳細】 プレスリリース本文 (PDF 109KB)

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熊本大学大学院先端科学研究部
電力エネルギー制御システム分野
担当:准教授 岡島寛
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