機能性材料の性質決定に不可欠な不純物の原子位置決定に世界で初めて成功-新規材料の開発に新たな指針-

熊本大学の細川伸也教授、Jens R. STELLHORN外国人特別研究員は、高輝度光科学研究センター、広島市立大学、名古屋工業大学、広島工業大学、富山大学、高エネルギー加速器研究機構、九州シンクロトロン光研究センター、台湾國家同歩輻射研究中心、山形大学の研究者と協力して、放射光X線を利用した蛍光X線ホログラフィーおよびX線吸収微細構造分光の実験を行うことにより、未来のコンピュータ材料の一つとして期待されているトポロジカル絶縁体に含まれる不純物(添加物)の添加位置を決定することに成功しました。これには スパース・モデリングという新たなデータ解析法を用いました。この結果はこれまで回折実験や電子顕微鏡では観測できなかった、世界で初めての発見です。この技術を応用することにより、添加元素によって性能を制御する半導体材料、磁性材料などの機能を解明できるとともに、新規材料開発に新たな指針を与えるものとして期待されます。
本研究は文部科学省科学研究費補助金(新学術領域)「3D活性サイト科学」および「疎性モデリング」の支援を受けて実施したもので、米国の科学雑誌「Physical Review B」に平成29年12月26日に掲載されました。

(説明)
・放射光X線を用いた蛍光X線ホログラフィーとX線吸収微細構造分光の組み合わせによって、従来の回折実験では得られなかった不純物元素の原子位置を世界で初めて決定しました。
・スパース・モデリングという新しい解析手法により、通常の解析手法では得ることができなかった原子像を、極めて明瞭に再現できました。
・さまざまな機能性材料に含まれる不純物の役割を、原子配列の面から解明することが可能となり、新規材料開発に新たな指針を与えるものとして期待されます。
・この研究成果は、研究テーマの発案から試料作製、実験、データ解析にいたるまで中小規模の大学の研究者が持ち味を出し合って協力し、汎用的な放射光X線光源を利用した結果、得ることができたものです。

(発表者)

細川伸也 熊本大学 大学院先端科学研究部(理学系)・教授
Jens R. STELLHORN    同・外国人特別研究員
松下智裕 高輝度光科学研究センター・情報処理推進室・主席研究員
八方直久 広島市立大学 大学院情報科学研究科・准教授
木村耕治 名古屋工業大学 大学院工学研究科・助教
林 好一 名古屋工業大学 大学院工学研究科・教授
尾﨑 徹 広島工業大学 工学部・教授
池本弘之 富山大学 大学院理工学研究部(理学)・教授
瀬戸山寛之 九州シンクロトロン光研究センター・副主任研究員
岡島敏浩 九州シンクロトロン光研究センター・主任研究員
依田芳卓 高輝度光科学研究センター・主幹研究員
石井啓文 台湾國家同歩輻射研究中心・助研究員
北浦 守 山形大学 学術研究院・教授
佐々木実 山形大学 客員教授

【掲載誌】 Physical Review B

【タイトル】Impurity position and lattice distortion in a Mn-doped Bi2Te3 topological insulator investigated by x-ray fluorescence holography and x-ray absorption fine structure

【著者名】S. Hosokawa, J. R. Stellhorn, T. Matsushita, N. Happo, K. Kimura, K. Hayashi, Y. Ebisu, T. Ozaki, H. Ikemoto, H. Setoyama, T. Okajima, Y. Yoda, H. Ishii, Y.-F. Liao, M. Kitaura, and M. Sasaki

【doi】https://doi.org/10.1103/PhysRevB.96.214207

【詳細】 プレスリリース本文 (PDF 1.1MB)

お問い合わせ
国立大学法人熊本大学先端科学研究部
担当:教授 細川 伸也
TEL/FAX:096-342-3353
E-mail:shhosokawa※kumamoto-u.ac.jp
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