世界初! 白色中性子線を用いて微量な軽元素を含む物質の超精密原子像取得に成功

名古屋工業大学の林好一教授、茨城大学の大山研司教授は、広島市立大学、高輝度光科学研究センター、熊本大学、日本原子力研究開発機構、J-PARCセンター、高エネルギー加速器研究機構、東北大学金属材料研究所の研究者らと共同で、「白色中性子線ホログラフィー」の実用化に世界で初めて成功しました。
白色中性子線とは、様々な波長を含む中性子線のことを指し、様々な波長の光を含んで白色となる可視光に倣って命名されています。ホログラフィーは、物体を三次元的に記録する撮像法です。白色中性子線を用いると複数の波長で多重にホログラムを記録できるため、従来技術をはるかに凌駕した精密な原子像を取得することができます。また、X線回折法や電子顕微鏡法では観測できない軽元素の微量不純物の構造を感度よく観測できる点にも特徴があり、添加元素によって性能を制御する半導体材料、電池材料、磁性材料などの機能解明とともに新規材料開発に向けたブレークスルーが生まれると期待されます。

1.発表のポイント

○ 原子レベルの精密構造解析手法として新たに「白色中性子線ホログラフィー」を開発
検出器や半導体などの高性能材料の性能を制御するため添加されている不純物(ドーパント)の構造を高い感度で解析できる手法として、極めて多くの波長で多重にホログラムを記録できる「白色中性子線ホログラフィー」を、世界最高強度の中性子源である大強度陽子加速器施設J-PARC(茨城県東海村)において開発しました。

〇 軽元素の不純物構造解析が可能に
中性子線はX線や電子線と異なり、水素、リチウム、酸素などの軽元素について感度が高く、エネルギー材料とも密接に関係するこれらの元素の不純物構造解析が今後大きく進展することが期待されます。

〇 機能性材料での機能発現の解明に貢献
今回、放射線検出器の主材料である、蛍石にユウロピウム(Eu)のような希土類元素を添加した結晶でデモンストレーションしたところ、その超精密原子像から希土類元素周辺の特徴的な構造を世界で初めて解明しました。今後、放射線検出器の高性能化が期待されます。また、検出器に限らず、「白色中性子線ホログラフィー」による不純物構造の超精密画像から、非常に多くの材料で性能向上へのブレークスルーが生まれると期待できます。

2.発表者

林 好一(名古屋工業大学 大学院 工学研究科 教授)
大山研司(茨城大学 大学院 理工学研究科 教授)
八方直久(広島市立大学 大学院 情報科学研究科 准教授)
松下智裕(高輝度光科学研究センター 情報処理推進室 主席研究員)
細川伸也(熊本大学 大学院 先端科学研究部(理) 教授)
原田正英(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター 主任研究員)
稲村泰弘(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター 副主任研究員)
仁谷浩明(高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 助教)
宍戸統悦(東北大学 未来科学技術共同研究センター 研究員)
湯葢邦夫(東北大学 金属材料研究所 准教授)

【掲載誌】 Science Advances
【タイトル】Multiple-wavelength neutron holography with pulsed neutrons
【著者名】K. Hayashi, K. Ohoyama, N. Happo, T. Matsushita, S. Hosokawa, M. Harada, Y. Inamura, H. Nitani, T. Shishido, and K. Yubuta
【doi】10.1126/sciadv.1700294

【詳細】 プレスリリース本文 (PDF 760KB)

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