HIV変異株に対し高い抗HIV活性を発揮する 4'-Ethynyl-2-fluoro-2'-deoxyadenosine (EFdA)の開発について

熊本大学大学院血液内科・膠原病内科・感染免疫診療部および熊本大学エイズ学研究センターの満屋裕明教授のグループは予てからヤマサ醤油株式会社(千葉県銚子市)と新規のエイズ治療薬の研究・開発を熊本大学を中心に進めて参りました。

エイズはヒト免疫不全ウイルス (HIV) に感染するために起こる病気です。HIVは「二度かかりなし」と言われる免疫の働きに重要な細胞であるCD4陽性T細胞に感染してこれを破壊するためにCD4陽性T細胞数が激減してエイズが起こります。

これまでエイズの治療はやはり満屋教授らが1980年代に開発したAZTや ddI等と呼ばれる抗HIV薬を用いた多剤併用療法を使う事で、感染者・発症者の臨床症状が軽減され、今や感染者の寿命は非感染者の寿命に近くなり、また治療をする事で「二次感染」も阻止できることが明らかになって参りました。しかし、感染者・発症者のなかには長期間の治療を受けたために薬剤耐性を獲得した薬剤耐性HIVと呼ばれる変異株が出現して治療効果が得られなくなった方が沢山おられます。

満屋裕明教授のグループらが開発を進めて来た候補薬、4'-ethynyl-2-fluoro-2'- deoxyadenosine (略称EFdA) は、高度の耐性を獲得したHIV変異株にも抗ウイルス活性を発揮してそれらの増殖を極めて強力に阻止します。このEFdAはマウスのみならずサルに投与しても副作用なくエイズウイルスの増殖を強力に阻止してCD4陽性T細胞を感染から効果的に守る事が示されています。

今回ヤマサ醤油株式会社はこのEFdAの臨床開発権の独占的ライセンスを米国Whitehouse Station, N.J. のMerck & Co., Inc. に供与しました。EFdAはこれからいよいよ臨床開発へ向けた次の開発段階と進むことになります。

EFdAの熊本大学での研究・開発は、満屋教授が代表を務める熊本大学グローバルCOEプログラム(エイズ制圧を目指した国際教育研究拠点)の主要なプロジェクトとして進められてきました。この研究・開発は熊本大学エイズ学研究センターの岡田誠治教授、京都大学ウイルス研究所の松岡雅雄教授、東北大学医学部の児玉栄一助教、横浜薬科大学の大類洋教授などとの共同で進められました。

参考資料[グローバルCOEプログラム(エイズ)パンフレットより (PDF 284KB)

お問い合わせ
グローバルCOE推進ユニット
096-373-5785