慢性閉塞肺疾患、創薬研究が進展!忠実なモデルマウス作製に成功 〜「酸化ストレス」、「セリンタンパク質分解酵素」が症状改善の鍵〜

難治性の肺疾患の中でも、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) は、患者数は増加の一途をたどる一方、詳細な病気のメカニズムが不明であるため、原因究明と根治療法の開発が望まれています。今回、熊本大学大学院生命科学研究部 (薬学系) 遺伝子機能応用学分野の首藤剛准教授、甲斐広文教授らは、ヒトのCOPDの病態を忠実に再現するモデルマウスを国内で初めて作成し、「酸化ストレス」*と「セリンタンパク質分解酵素」*が、COPDの病気の進行に強く関わることを明らかにしました。この成果は、COPDなどの難治性肺疾患に対する新規の薬物療法の開発につながるものと期待されます。
本研究の成果は、英国 Nature Publishing Groupの科学雑誌「 Scientific Reports 」で12月16日 (英国時間午前10:00) に公開されました。

(用語説明)
*酸化ストレス: 私たちの体内の様々な活動に必須な化学反応の中でも、特に、物質の酸化により引き起こされる生体にとって有害な作用のこと。通常、加齢や病態時に、活性酸素種と呼ばれる反応性の高い物質により引き起こされるものを指す。
*セリンタンパク質分解酵素:生体内では、あらゆる反応にタンパク質分解酵素が作用していますが、セリンというアミノ酸を構造内に持って機能するタンパク質分解酵素のことをセリンタンパク質分解酵素とよびます。急性膵炎などの病気で過剰に活性化されていることが知られていて、これらの病気の治療薬の標的にもなっています。

【論文情報】
Shuto T, Kamei S, Nohara H, Fujikawa H, Tasaki Y, Sugawara T, Ono T, Matsumoto C, Sakaguchi Y, Maruta K, Nakashima R, Kawakami T, Suico MA, Kondo Y, Ishigami A, Takeo T, Tanaka K, Watanabe H, Nakagata N, Uchimura K, Kitamura K, Li JD and Kai H.
Pharmacological and genetic reappraisals of protease and oxidative stress pathways in a mouse model of obstructive lung diseases.
Scientific Reports . 6, 39305; doi:10.1038/srep39305(2016).

【著者名】
首藤剛,甲斐広文,Mary Ann Suico,亀井竣輔,野原寛文,藤川春花,田崎幸裕,菅原卓哉,小野智美,松本千鶴,坂口由起,丸田かすみ,中嶋竜之介,川上太聖(以上,熊本大学 大学院 薬学教育部 遺伝子機能応用学分野)
石神昭人,近藤嘉高(以上,東京都健康長寿医療センター)
中潟直己,竹尾透(以上,熊本大学 動物資源開発研究施設(CARD))
田中健一郎(武蔵野大学 薬学部)
北村健一郎,内村幸平(山梨大学 医学部)
Jian-Dong Li(ジョージア州立大学)

【詳細】 プレスリリース本文 (PDF 1.4MB)

お問い合わせ
熊本大学大学院生命科学研究部(薬学系)遺伝子機能応用学分野
担当:准教授 首藤 剛
電話:096-371-4407
e-mail:tshuto※gpo.kumamoto-u.ac.jp
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