現在位置: ホーム お知らせ お知らせ(生命科学系) エイズウイルスの細胞間感染の新たなメカニズムを解明-異なる作用メカニズムによる新規エイズ治療薬開発の可能性-

エイズウイルスの細胞間感染の新たなメカニズムを解明-異なる作用メカニズムによる新規エイズ治療薬開発の可能性-

エイズウイルスの細胞間感染の新たなメカニズムを解明
-異なる作用メカニズムによる新規エイズ治療薬開発の可能性-

 理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター粘膜システム研究グループの大野博司グループディレクター、環境資源科学研究センター ケミカルバイオロジー研究グループの長田裕之グループディレクターと熊本大学エイズ学研究センター・国際先端医学研究拠点施設(鈴プロジェクト研究室)の鈴伸也教授らの共同研究グループは、エイズ(後天性免疫不全症候群)[1]の原因ウイルスである「HIV-1[2]」が細胞から細胞へと感染拡大する際の新たなメカニズムを解明しました。  
 細胞膜の細い管である細胞膜ナノチューブ(tunneling nanotube、TNT)は、離れた2つの細胞同士を連結することで、細胞間の素早い物質交換を可能とする手段として知られています。大野グループディレクターらは2009年に、M−Sec[3]という分子がTNTの形成因子であることを発見しました注1)
 HIV-1は、CD4という表面分子を持つTリンパ球(CD4+Tリンパ球)[4]とマクロファージ[5]という2種類の免疫細胞に感染します。これらの免疫細胞の中で増殖した新たなHIV-1は、未感染のCD4+T細胞やマクロファージへと感染することで、これらの免疫細胞の機能不全や減少を引き起こし、最終的には感染者が(あるいは個体が)免疫不全に陥ります。
 このようにHIV-1が感染拡大していく経路には、一度、HIV-1が感染細胞の外に出て周囲の未感染細胞に感染する経路のほかに、TNTを介してHIV-1が感染細胞から未感染細胞に移る経路が知られていますが、そのメカニズムは明らかにされていませんでした。共同研究グループは今回、HIV-1がTNTの形成を促進することでTNTを介した細胞間感染の効率を上げていること、さらにTNTの形成を抑制する化合物によりHIV-1の細胞間感染が約半分に抑えられることを発見しました。TNTの形成を抑制する化合物を応用することで、これまでの薬剤とは異なる作用メカニズムに基づく新たな抗エイズ薬の開発が期待できます。
 本研究は、米国の科学雑誌『Journal of Immunology』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(1月15日付け:日本時間1月16日)に掲載されました。(http://www.jimmunol.org/content/early/2016/01/15/jimmunol.1500845.full.pdf+html

 注1)2009年11月23日プレスリリース「細胞間を連結する細胞膜ナノチューブの形成因子「M-Sec」を発見」http://www.riken.jp/pr/press/2009/20091123/

【用語解説】
[1] エイズ(後天性免疫不全症候群)
 ヒト免疫不全ウイルス(human Immunodeficiency Virus; HIV)が、主としてCD4+Tリンパ球とマクロファージという免疫細胞に感染し、これらの免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす疾患のこと。エイズ(AIDS)は後天性免疫不全症候群;Acquierd Immune Deficiency Syndromeの略。
[2] HIV-1
 1型ヒト免疫不全ウイルス。エイズの原因ウイルスである。HIV-1のほか、HIV-2も存在するが、HIV-1の感染が世界中に拡がっているのに対し、HIV-2は西アフリカを中心に限られた地域での感染にとどまっている。HIV-1はHuman Immunodeficiency Virus Type 1)の略。
[3] M-Sec
  マクロファージや樹状細胞などの、骨髄系細胞と呼ばれる一群の免疫細胞に特異的に発現する細胞質因子で、TNTの形成を促進する因子として同定された。詳細はhttp://npd.riken.jp/npd/ja/を参照。
[4] Tリンパ球
白血球のうちのリンパ球の一種。末梢血中のリンパ球の70~80%を占める。T細胞受容体と呼ばれる抗原特異的な受容体を持つ。Tリンパ球はその細胞表面に表出するタンパク質により、さらにCD4陽性(CD4+)とCD8陽性(CD8+)の2種類に分れる。CD4+T細胞はヘルパーTリンパ球とも呼ばれ、Bリンパ球やCD8+Tリンパ球の活性化や機能を助ける。一方、CD8+Tリンパ球は細胞傷害性(キラー)T細胞とも呼ばれ、ウイルスなどに感染した細胞を殺すことで感染防御に働く。
[5] マクロファージ
 白血球の一種で運動性を持つ。食細胞の一種であり、死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や、侵入した細菌などの異物を捕食して消化する。初期の免疫反応に重要な役割を果たす。
[6] 抗体(免疫グロブリン)
Bリンパ球が抗原(通常は体に侵入してきた異物)を認識して産生する、抗原に対して特異的に結合するタンパク質。免疫グロブリンとも呼ばれ、主として血液中を循環しており、IgG、IgA、IgMなどの種類がある。
[7] Bリンパ球
 Tリンパ球とともに、生体防御に重要な役割を果たしているリンパ球の一種。リンパ球は白血球の一種で、体に侵入してきた異物を認識して、それらを排除するためのタンパク質である抗体を作りだす。
[8] Nef
 HIV-1の複製の初期に合成されるウイルスタンパク質。エイズの発症や、それに伴う免疫不全など、HIV-1感染に伴うさまざまなウイルス機能に関わる。

【共同研究グループ】
理化学研究所 
統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ   
 グループディレクター   大野 博司(おおの ひろし)
環境資源科学研究センター ケミカルバイオロジー研究グループ
 グループディレクター   長田 裕之(おさだ ひろゆき)

熊本大学 エイズ学研究センター・国際先端医学研究拠点施設(鈴プロジェクト研究室)
 教授   鈴 伸也(すず しんや)

【論文名】
Potential role of the formation of tunneling nanotubes in HIV-1 spread in macrophages

【著者名】
Michihiro Hashimoto, Farzana Bhuyan, Masateru Hiyoshi, Osamu Noyori, Hesham Nasser, Mitsue Miyazaki, Tamio Saito, Yasumitsu Kondoh, Hiroyuki Osada, Shunsuke Kimura, Koji Hase, Hiroshi Ohno, and Shinya Suzu

【掲載雑誌】 
Journal of Immunology

【詳細】プレスリリース本文(PDF 1.2MB)

お問い合わせ
熊本大学 エイズ学研究センター・国際先端医学研究拠点施設(鈴プロジェクト研究室)
教授  鈴 伸也(すず しんや)
電話TEL:096-373-6828 FAX:096-373-6869
E-mail:ssuzu06※kumamoto-u.ac.jp
(※を@に置き換えてください)

 

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