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ヒトiPS細胞から誘導した腎臓糸球体が血管とつながる~尿産生に向けた大きな前進~

【ポイント】
◆糸球体のろ過機能を司る細胞(ポドサイト)に分化すると緑色に光るヒトiPS細胞を作成し、試験管内で糸球体ができる過程を初めて可視化した。
◆緑の蛍光を指標にヒト糸球体のポドサイトを純化し、生体の糸球体で重要な機能を持つ遺伝子群が実際に発現していることを証明した。
◆iPS細胞由来の腎臓組織をマウスに移植することによって、ヒトの糸球体にマウスの血管が取り込まれた。
◆血管に隣接するヒト糸球体のポドサイトには特徴的なろ過膜が形成され、糸球体内にろ過を示唆する物質が観察された。

 熊本大学発生医学研究所の研究グループは、ヒトiPS細胞※1から誘導した腎臓組織をマウスの腎臓表面に移植することによって、ヒト誘導腎臓組織内の糸球体※2にマウスの血管がつながることを証明しました。
 腎不全による人工透析患者数は増加の一途をたどり、社会的問題にもなっているものの、腎移植の機会は限られています。網膜など多くの臓器で臨床応用も視野に入れた再生医療研究が進む一方で、腎臓を作ることは極めて困難とされていましたが、西中村隆一教授、太口敦博助教らの研究グループは2013年末に、ヒトiPS細胞から試験管内で3次元の腎臓構造の作製に成功したことを報告しました。
 多くの腎臓疾患では、血液から尿をろ過する糸球体という部位に支障を来します。糸球体のろ過機能は、血管に接するポドサイト※3という細胞が担っており、特殊なろ過膜によって水分は通り抜けるが血液中の蛋白の大部分は尿に漏れないようになっています(図1参照)。そこで今回は、Sazia Sharmin(シャツィア シャーミン)さん(大学院生)らが糸球体に焦点をあてて詳しく解析しました。まず、遺伝子改変によって、ポドサイトに分化すると緑に蛍光発色するヒトiPS細胞を作成し、ヒト糸球体が試験管内で形成される様子を可視化することに成功しました(図2参照)。そして緑の蛍光を指標にヒト糸球体のポドサイトだけを取り出して解析し、試験管内で作ったものが、生体内で重要な機能をもつ遺伝子群を実際に発現することを明らかにしました。さらにiPS細胞由来の腎臓組織をマウス腎臓に移植すると、ヒトの糸球体にマウスの血管が取り込まれること、つまり誘導したポドサイトが血管を引き寄せる能力を持つことがわかりました(図3参照)。生体内と同じように血管と隣接することで、ヒト糸球体のポドサイトはさらに成熟し、特徴的なろ過膜構造を形成しました。糸球体内にはろ過を示唆する物質も観察されました。
 本研究は、試験管内で作ったヒト腎臓糸球体が移植により血管とつながって、さらに成熟することを示したもので、尿を作るという腎臓の機能獲得へ向けた大きな前進です。またこの方法を元に腎臓の病気を再現できる可能性があり、病因の解明と創薬開発につながることが期待されます。本研究成果は、科学雑誌「Journal of the American Society of Nephrology (アメリカ腎臓学会雑誌)」オンライン版に11月19日17:00(アメリカ東部時間)【日本時間の11月20日7:00AM】に掲載されました。

※本研究は、順天堂大学の栗原秀剛准教授、広島大学の山本卓教授らとの共同研究です。科学技術振興機構(JST)CREST「人工多能性幹細胞(iPS細胞)作成・制御等の医療基盤技術」、文部科学省科学研究費補助金、厚生労働省科学研究費補助金、の支援を受けました。

【用語解説】
※1 iPS細胞:皮膚や血液などの体細胞から作られた万能細胞
※2 糸球体:腎臓内で血液から尿をろ過する部位
※3 ポドサイト:糸球体のろ過機能を司る細胞。複雑な突起と特殊なろ過膜をもつ。

【論文名】
Human induced pluripotent stem cell-derived podocytes mature into vascularized glomeruli upon experimental transplantation
Journal of the American Society of Nephrology on line Nov 19, 2015

Sazia Sharmin, Atsuhiro Taguchi, Yusuke Kaku, Yasuhiro Yoshimura, Tomoko Ohmori, Tetsushi Sakuma, Masashi Mukoyama, Takashi Yamamoto, Hidetake Kurihara and Ryuichi Nishinakamura

【詳細】プレスリリース本文(PDF 1.4MB)
※本研究成果は、熊本大学発生医学研究所のウェブサイトにも掲載しています。
 熊本大学発生医学研究所HP http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/
 発生医学研究所腎臓発生分野HP
      http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/divisions/integrative_cell_biology/
   本研究成果 http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/newpress/np84.html
 

研究内容に関する問い合わせ
熊本大学発生医学研究所
腎臓発生分野
教授 西中村 隆一
  (にしなかむら りゅういち)
電話:096-373-6615
 E-mail:ryuichi※kumamoto-u.ac.jp
(※を@に置き換えてください)

 

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