マウスに苦痛を与えない生体組織移植針キット Ez-Plant を開発!―マウスへのヒト生体組織の移植が簡便に―

(概要説明)

 熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 造血・腫瘍制御学分野のグループは、簡便かつマウスに苦痛を与えない、生体組織移植針キット: Ez-Plantを開発しました。本生体移植針キット: Ez-Plantは2020年に特許及び意匠の申請を行いました。

 現在日本人の2人に1人が一生のうち何らかのがんにかかり、3人に1人ががんで死亡しています。がん患者を救うためには、がんの病態解析や新規治療法の開発が重要であり、そのためにはがん患者の病態を忠実に再現した動物モデルの樹立が必要不可欠です。近年、外科手術で摘出したがん患者の腫瘍組織をマウスに直接移植して作成される患者腫瘍組織移植 (Patient-Derived Xenograft:PDX) モデルが、がん患者の病態を忠実に再現したモデルとして注目されています。このPDXモデルは、がん患者のがんの性質や抗がん剤に対する反応性を保持しているため、高い臨床予測性を有しており、新規抗がん剤開発や個別化医療へのPDXモデルの活用が進められています。本研究グループも独自で開発した高度免疫不全マウスに患者由来腫瘍組織を移植し、様々ながんのPDXモデルの開発を行っています。
 動物モデルの樹立は、簡便かつ可能な限り実験動物に苦痛を与えない方法を用いることが望まれます。今回本研究グループは、がん患者由来腫瘍組織など生体組織を移植することに特化した生体組織移植針キット: Ez-Plantを開発しました。生体組織を移植する部位として皮下が最も多く用いられていますが、従来の方法で生体組織をマウス皮下に移植する場合、マウスの皮膚を切開する必要があり、術後マウスに長期的な苦痛を与えていました。今回開発した生体組織移植針キットを用いた移植は皮膚の切開を伴わず、皮膚に移植針を刺すだけで移植を完了させることができるため、マウスの皮膚には小さな挿入痕しか形成されません。したがって、従来の移植法に比べ、マウスに与える苦痛が極めて小さく、動物愛護の観点からも非常に優れています。

 この生体組織移植針キットの開発は、熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター・造血・腫瘍制御学分野の岡田誠治教授と刈谷龍昇博士(特任助教)、熊本大学認定ベンチャー・株式会社キュオールおよび熊本県内企業・九州オルガン針株式会社が共同で行ったものです。

 

(詳細)
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ヒトレトロウイルス学共同研究センター
造血・腫瘍制御学分野 教授 岡田誠治

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