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WEBマガジン「KUMADAI NOW」皆の健康や幸せを育む医療用電子装置を開発。

医工連携で開発する先進機器

 

健児くん(以下:◆):先生が医療機器の研究を始めたきっかけを教えてください。
山川:学生時代には、回路とシステムを専門に、携帯電話の内部回路やCPUに応用される集積回路技術の研究を行っていましたが、博士課程の時に、生体内に埋め込める電子回路の研究に興味を持ったんです。すでに動物の体内に埋め込んで使う固体識別用のIDチップは臨床で使われていましたが、せっかくなら心電図や血圧などの生体情報を測れる方がいいと、研究に着手しました。例えば、心電図の測定データを無線で送り、健康管理に役立てるようになれば、体調管理に役立ちます。病気の人はもちろん、健康な人にも使いやすくするためには、如何に小さく、廉価にできるかが重要。一家に一台導入できるような機器を作ろうと研究に取り組んできました。
◆:分野の異なる医療のプロフェッショナルとの協同研究を行っておられますが、大変では?
山川:何かテーマがあって、協同研究の相手を探すのではなく、人ありきで始めることが多いんですよ。例えば、一緒に飲んでいるときに医療の現場で直面している課題を聞き、それに対して自分が設計するもので解決できるかもしれないと提案したことから医工連携の協同研究がスタートしたこともあります。人と人が結び付いた研究は、長続きする秘訣。先ほどお話しした回路技術の研究が進み、医療診断に使える程度の精度が確保できていると分かり、「何に使おうかな」と考えていたときに以前から交流があった東京医科歯科大学・宮島美穂助教と京都大学大学院情報学研究科・藤原幸一助教に呼びかけ、今までにない医療電子機器を開発しようと3人でチームを作りました。それが“てんかん発作予知”の研究のスタートです。宮島先生がてんかん患者のデータを収集し、藤原先生が心拍の変化から発作の予兆をキャッチするプログラムを構築。私が心拍センサーを開発するという各分野の専門家が集まった協同研究は、とても刺激的ですよ。

世界初!てんかん発作予知ウェアラブル心電計

 

◆: “てんかん発作予知”の研究成果は、「ウェアラブルEXPO」世界から注目を集めましたね。どのような機器なんですか?
山川:心臓が発している電気信号は人により大きさや形がさまざまです。現在心電図を測定するには、センサーを貼り付ける位置やセンサーの大きさにより心電図の図形が変わるため、高精度で測定できるよう専門の技師や医者が機械を調節する必要があります。今回開発したウェアラブル機器は、測定したい人がセンサーを貼ってボタンを押せば、人手で行っていた精度調整を自動的に行い、携帯端末へ無線で測定データを送信します。そして専用のアプリで心電図の状態を見ることが可能です。てんかん発作の予知症状が出た場合には、アプリが警告するシステムになっています。機器は手のひらに乗る程度の大きさで、1回の充電で55時間使用可能。大量生産すれば5,000円程度で製造でき、実用化できるよう設計しています。
◆: てんかんを予知する仕組みは、他に応用可能ですか?
山川:自律神経によりコントロールされている心拍数を計測することにより、ドライバーの居眠り運転も検出もできるんですよ。京都大学のドライビングシミュレータで実験を行った結果、80%以上の高い確率で事故につながる居眠りを事前に予知しました。長距離運転をするドライバーに活用できればと考えています。
他にも京都大学の藤原先生と脳卒中の診断もおこなっています。脳卒中で入院中の患者さんに再発を予防することが可能ではないかと考えています。ストレスの具合と心拍数の関係など、体の機能から見た使い方もできますし、心電図では見れない、もう少し先の情報を得ることはできないかと試行錯誤しているところです。
そのほか、開発した機器を使って「睡眠時無呼吸症候群」の簡易スクリーニングができないか研究を進めています。「睡眠時無呼吸症候群」は、55歳以上で肥満の方で50%以上の確率で発症するといわれ、検査するには1泊2日の入院が必要です。家で簡単に検査できないかと研究を進めています。
 
 

“未来を読む”機器の開発めざして

◆:先生の夢は何ですか?
山川:子どもの頃から生命に興味があり、現在は人の命や健康、ひいては幸せに関わるようなもの作りに取り組んでいます。頭がい骨内に埋め込む電子機器の研究で、この病気がどのように悪化していくかを予測したいと思ってるように、見ようと思って簡単に見ることができない現象を何らかの方法を使って明らかにしたいということが、私のテーマ。“未来のことが分かる”機器を作ることが私の夢ですね。
◆:学生たちにはどのようなことを伝えたいですか?
山川:電子回路を設計していた学生時代に私が恩師に言われていた言葉が、「電子の気持ちになって考えろ」。そう言うたびに、学生は苦笑いしていますよ。命に関わるものを作っている立場からは、「あなたの装置があるおかげで、将来何万人もの人が救われるかもしれない。でもあなたが怠ったり、ミスをして諦めてしまうと、何千人・何万人という人が命を落とすかもしれないということまでしっかり考えて、きめ細やかに研究しなさい」と伝えたいですね。また、もの作りのエンジニアの立場からは、「この世の中にまだ作っていないものを作れ!こんなものも測れるの?というのを目指そうよ」と指導しています。好きな言葉は「鶏口牛後」。「大きな組織の下にいるくらいなら小さな組織のトップになるようなキラリと光る1点突破型の姿勢が好きだ」と学生に話しています。
研究では、完璧な試作品を作るために時間をかけるより、早くプロトタイプを作って課題抽出を行い、改善していく手法をとっています。学生たちには、責任感のある研究姿勢を身に付けてほしいですね。
 
(2015年3月29日掲載)
 
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