現在位置: ホーム 大学情報 広報 広報誌 WEBマガジン「KUMADAI NOW(熊大なう。)」 熊大ラボ ~knock on the laboratory's door~ WEBマガジン「KUMADAI NOW」古文書は語る。歴史を動かした真の力を

WEBマガジン「KUMADAI NOW」古文書は語る。歴史を動かした真の力を

歴史を知ることは“現在(いま)を知る”こと

健児くん(以下:◆):戦国武将・歴女ブームなど、歴史がクローズアップされましたね。歴史を紐解くおもしろさとは何ですか?
稲葉:人間社会が、長い歴史の中でどのように形作られてきたのか、その成り立ちを知ることが“現在を知る”ことにつながる。それが歴史研究の醍醐味ですね。私に歴史のおもしろさを教えてくれたのは、大学時代の恩師・藤木久志先生でした。戦国時代研究の第一人者である藤木先生は、 豊臣秀吉の刀狩りについて「無数にある刀や鉄砲を秀吉は本当に一つ残らず回収・処分できたのか?」という素朴な疑問から研究をスタートされました。実は一定数を中央に送ればよかっただけで、全ての刀が没収された訳ではなかったことを検証しました。そんな講義を聞いて、「自分が当たり前と思っていたことが、当たり前じゃない可能性がある」ことに気付いたんです。素朴な疑問や好奇心を大事にすれば、自分も学術の世界で仕事ができるんじゃないかと思い、研究者の道を選びました。
◆:疑問や気付きが、歴史の本質を知る第一歩になるんですね。
稲葉:そうですね。藤木先生の下で戦国社会史に向き合ったことが、私にとって転機となりました。例えば、私たちが学んできた歴史は、いつも将軍や武将にスポットライトを当てて語られてきましたが、本当はいつの時代も歴史を作り上げてきたのは社会の側から湧き出してくる力なんです。大きな時代のうねりの中で、民衆がどのように生き、現在へとつながる土台を作り上げてきたのか、熊本藩主を務めた細川家に残されたさまざまな歴史資料に見ることができるんですよ。

躍動する民衆の姿を古文書は語る

◆:細川家に伝わる歴史資料は、熊本大学に寄託されていますね。今年、「細川家文書」のうち266通が国の重要文化財に指定されました。「永青文庫」に興味深々です。
稲葉:現在、細川家の美術工芸品や古文書などの歴史資料は、公益財団法人「永青文庫」が所有・管理していますが、細川邸の蔵に納められていた43,000点余については、本学附属図書館に寄託されています。「永青文庫研究センター」では、これらを読み説き、総目録の作成に取り組んでおり、現在8割ほど進んだところです。
 なんといっても膨大な古文書を読み解くのは実に手間が掛ります。現在作成中の総目録の点数は、60,000点に達しています。これだけの文化資源を地方大学で所有・研究しているところは大変稀で、日本史研究者の多くが憧れる研究に深く携わることができ、こんなに幸せなことはないと思っています。
◆:藩主が残した歴史資料ですね。熊本ならではの独自の取り組みなども多いのでは?
稲葉:古文書の内容については、藩の上層部のものもありますが、住民レベルの内容が本当に多い。例えば細川家は肥後入国後に「手永」という行政区画を設け、総責任者である惣庄屋を置く制度を導入しています。地方行政記録綴「覚帳」には、惣庄屋からの上申書やそれを起案書とした稟議(りんぎ)結果などが残されており、また十九世紀熊本藩住民評価・褒賞記録「町在」では、地域住民による寄附や献金、奉仕活動などの詳細とそれに対する褒賞などが詳細に記されています。当時、住民による地域自治が行われていた姿が、古文書に生き生きと綴られているんですよ。
 熊本県民は歴史に対しての知識が豊富で、時代背景に関する関心も深い。こうした膨大な歴史資料の解読を行い、広く一般に共有財産として還元したい。研究者だけでなく、熊本地域の方々にも一人でも多くの人に見てもらって、現代に生かしてほしいですね。

現在(いま)を、自分自身を認識する学問

◆:本物の一級資料に触れ、歴史の本質を学べるなんて、学生の皆さんにとって最高の環境ですね。
稲葉:貴重な経験を学生のうちにできるのは、ぜいたくなことです。それにしても最近の若者は、社会への関心が薄れているような気がします。テレビで流れるニュースを見ても、淡々と事実のみを受け止め、 「なぜ?」「原因は?」とその背景を考えることが少ないようです。歴史も同じ見方が必要で、「なぜこの現象が起きたのか?」という疑問を持ち、歴史資料の分析を通じて自分自身で追究することが大切なんです。
 歴史を学び、素朴な疑問を感じて、社会背景に迫るという態度を身に付けると、現代への視点も変わってくる。歴史学は社会を理解するために有用な学問なんだと、学生自身に気付いてほしいですね。
◆:視点を変え、物事の実体を理解すると本質が見えて、さまざまなことを知る手掛かりになるということですね。
稲葉:歴史学は、現在を、そして自分自身を認識しようとする学問。学生たちには、「人間は、内部も外部も歴史に満たされた、まさに歴史的な存在である。自分自身を知るには、歴史を知らねばならない」と伝えたいですね。
 歴史資料は絶対に研究者を裏切らないし、毎回新たな発見を与えてくれるものなんです。戦国時代から幕末まで、これほどの資料が残されているのは、世界的にも実に貴重なことですよ。古文書を紐解けば、無名の人々が社会を変えようと輝いていた時代があり、そこにこそ、歴史を動かした真の力を見いだすことができるだろう。それを掘り起こし、歴史社会の成り立ちを明らかにしていくのが私の仕事です。
◆:僕も現代の歴史を築いている一人なんですね。過去を知り、自分を知ることから始めたいと思います。ありがとうございました。

(2013年10月2日掲載)

 

information

「近世史研究の最前線―永青文庫細川家史料から―」と題し、稲葉先生が講演します。
    「歴史研究会創立55周年記念 第29回全国大会肥後熊本大会」で、稲葉継陽教授が講演します。どなたでもご参加OK!(要申し込み)。貴重な史資料から浮かび上がる歴史の真実と研究の最前線の興味深い話に耳を傾けてみませんか。

 日時 2013年10月18日(金)
 場所 熊本交通センターホテル6F菊の間
 プログラム
  式  典 13:30~14:20(受付12:30~)
  記念講演 14:30~17:00
  「古代ロマンの宝庫くまもと」講師:島津義昭(元・九州考古学会会長、崇城大学講師)
  「近世史研究の最前線―永青文庫細川家史料から―」講師:稲葉継陽 ほか
 お申し込み・お問い合せ 熊本ルネッサンス県民運動本部事務局  Tel.096-328-5638
 http://www.let.kumamoto-u.ac.jp/eisei/event/2013/09/post-2.html

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