現在位置: ホーム 大学情報 広報 広報誌 WEBマガジン「KUMADAI NOW(熊大なう。)」 熊大ラボ ~knock on the laboratory's door~ WEBマガジン「KUMADAI NOW」生物が苦手な先生が深みにはまった薬学の世界

WEBマガジン「KUMADAI NOW」生物が苦手な先生が深みにはまった薬学の世界

大学研究では、おそらく1人?薬の設計研究!

健児くん(以下:◆):まずは、先生のご研究内容を教えてください。
今井:私が研究しているのは「薬物動態学」。薬が体内に入って、吸収・分布・代謝・排泄されるまで、どのような仕組みになっているか、を調べるものです。薬には飲むと体の中で代謝されたり、代謝されずに排泄されるものがあります。この代謝や排泄の過程に問題が生じると副作用が起きることがあります。飲んだ薬が効果的に体内で働き、副作用を限りなく抑えるためには、薬の成分が必要な臓器に必要な時間存在して、効果を発揮した後は速やかに消失することが重要です。そのため、「代謝」に注目して、プロドラッグやアンテドラッグという代謝を活用した医薬品に関する研究をメインに行っています。
 さまざまな研究で発見される薬の卵に、活性、つまり薬効が強い化合物であっても、吸収や消失などの面で優れているものは少ないんです。なので、企業は、その医薬品の効果を残しつつ、吸収をあげ、うまく消失するようにし、副作用を減らす、つまり、動態を良くするように研究開発を行っているんです。
◆:プロドラッグやアンテドラッグ?どういう医薬品なんですか?
今井:プロドラッグとは、そのままでは薬として効果を発揮しないのですが、体内で代謝されることで効果を発揮するタイプの薬です。抗インフルエンザ薬や高血圧の薬などにこのプロドラッグが多いです。最近、話題の画期的C型肝炎の薬(錠剤)もプロドラッグです。
 一方のアンテドラッグは、投与した患部で効果を発揮し、その後すぐに代謝されて薬の機能を失うように設計されたものです。最初から患部以外のところで働かないように設計することで、副作用をなくしているんです。例えば、外用薬として使われているステロイド化合物がこのアンテドラッグ。血中に入ると、できるだけ速やかに代謝されて活性が低くなるように作られています。
◆:企業が行うような研究をされているんですね。
今井:おそらく大学で本格的に行っているのは、私一人だけではないでしょうか?でも、企業が薬を開発するためには重要なことです。製薬会社では、時間がかけられない部分の研究だと思うので、私たち研究機関が担うべき、基礎研究だと思っています。

実は生物が苦手!でも、薬学の世界で面白さを発見

◆:そもそも先生がこのような研究をされようと思われたきっかけは何ですか?
今井:製薬会社からの依頼です。いろんな研究を受けていた中に、「飲んだらすぐに肝臓で代謝される薬があるから、代謝を阻害して吸収を高めることはできないか?」という依頼があったんです。調べてみると、プロドラッグとして設計することで、できそうなことがわかり、合成してみたんです。合成はうまくいったんですが、動物実験をしてみると結果がバラバラ。人間に近い結果がわからなかったんです。異物である薬を無毒化する役目を果たすタンパク質の代謝酵素が、人と動物では異なるからです。そこで、代謝や酵素を調べ始めてみたら、どんどん深みにはまっていきました。
◆:話はさらに遡りますが、薬学部を志望されたのは、どうしてですか?
今井:元々は薬学部志望ではなかったんです。実は、化学は好きだったんですが、生物が苦手で…(笑)。学生時代は、覚えることができなくて、苦労しました。でも、薬剤師の資格を目指して、薬学部を志望したんです。今やっている研究は、酵素の化学反応を見ているから、生物だけど化学とも言えるもの。どんどんはまっていって、楽しめるようになりました。自分が苦手なことでも、ちょっと扉を開いてみると面白いことも見つかるんですよね。

人間としての成長を得た薬剤師時代

◆:先生は大学卒業後、一度就職されて、また大学に戻ってこられたんですね。
今井:大学4年生のときに、目の病気にかかって、文字を読むことが難しくなってしまったんです。そのため、研究もほどほどにしかできませんでした。ただ、就職後、目を治したとき、研究も中途半端だったことが心残りで、大学院へ入ったんです。学部生時代は有機合成の研究をしていましたが、院では製剤学が魅力的に見えて、製剤研究へ進みました。
◆:就職した経験が今に活きていると感じることはありますか?
今井:病院に1年間しか勤めませんでしたが、凝縮された1年間で、人間としての成長ができたと思っています。ベッドサイドの仕事もして、患者さんとコミュニケーションをとったり、実際に患者さんの死と対面したこともありました。この人間としての成長が、教育の場で活きているように感じます。
◆:最後に、熊大生や薬学部を目指したいと思っている学生さんに一言お願いします。
今井:自分の目の前だけではなく、視点を変えて、もう少し先を見てください。薬学部に入って、「本当に薬学がやりたいのか?」と悩む学生さんも多くいますが、縁があって入ったのだから、まずは楽しんでやってみること、一生懸命やってみること、そうすれば、達成感を得られるはずです。

 
(2016年12月27日掲載)
 
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