現在位置: ホーム 大学情報 広報 広報誌 WEBマガジン「KUMADAI NOW(熊大なう。)」 熊大ラボ ~knock on the laboratory's door~ WEBマガジン「KUMADAI NOW」誰も知らない「熊本の蚊」の全てを解き明かしたい!

WEBマガジン「KUMADAI NOW」誰も知らない「熊本の蚊」の全てを解き明かしたい!

自分の経験から始まる、環境地理学の道

健児くん(以下:◆):先生が専門とされている、環境地理学ってどんな学問なんですか?
米島:地理学にはいくつかの分野があって、住む人や歴史などを研究する人文地理学と、気候や地形などを研究する自然地理学が主流とされます。私が専門としている環境地理学は、その両方にまたがるものです。具体的にいうと、災害がどのような自然環境のもとで起きているかを調査・研究すること、生物の生態的な分布について地理の観点から調査・研究することなどです。
 地理学には、本当にいろいろな分野があって、好きなことを専門にできる良さがあります。私は、高校のときに、地域とその歴史について学びたいと思い、それを地理学で専門的に学べることが分かって、この分野に進むことにしたんです。
◆:なにか、きっかけはあったんですか?
米島:私は愛知県の出身で、高1のときに東海豪雨が起きたんです。私の家は二つの川に挟まれた場所にあり、昔からよく水害が起きている地域で、やはり床下浸水しました。水害後に調べてみると、氾濫が多い地域には、それにちなんだ地名が付けられていることが分かりました。でも、その事実は次第に忘れられて、そこに住宅が建てられていたんです。そのことがとても印象に残って、自分の地域のことを深く学びたい、と思うようになりました。

災害後の対策に役立つために

◆:蚊の研究を始められたのはいつですか?
米島:大学に入って、自分の地域のことを調べているとき、ふと「災害後は、いろいろな病気が流行する心配があるのに、消毒などには来ていなかったな」と思い出したんです。担当教授に聞いてみると「日本の場合には、公衆衛生が整っているので、感染症が流行することは少ない」ということがわかりました。でも、本当に発生しないのかな、と気になってしまって。
 そんなとき、担当教授の紹介で国立感染症研究所の先生から、蚊の調査に一緒に行ってみないか、と声をかけてもらったんです。富山県で、1週間連続で日本脳炎の媒介蚊を採集し、調査地点の周りの環境を歩き回って調べるという1ヵ月の泊まり込み調査でした。家や牛舎の周りなど、いろいろなところにトラップをしかけて、1日にどのくらいの蚊が寄ってくるかを調べます。すると、場所や環境によって採集される量が大きく異なることがわかりました。自然環境だけでなく、近くにいる人の数や動物の種類に左右される、言ってみれば「蚊にも好みがある」んですね。
◆:熊本地震の後も蚊の調査をされていますね。
米島:熊本地震の直後は、軒先避難や車中泊している人が多かったですよね。そんな人たちがよく蚊に刺されている、普段見る蚊よりも大きな蚊が発生している、という話を聞きました。蚊は種類によって異なりますが、デング熱や日本脳炎などいろいろな病気を媒介します。蚊が発生しやすい状況を放置しておけば、感染症が発生する可能性も否めません。
 そこで、国立感染症研究所と熊本県ペストコントロール協会等が一緒になって、調査に入ることになり、熊大から私が参加することになったんです。調べてみると、熊本地震では、瓦の破損などがあり、多くの家にブルーシートがかけられています。そのシワになった部分に雨水などが溜まり、そこから蚊が発生していることがわかってきました。7月になり「いつもより蚊が多い」という声も聞こえてきました。けれど、これまで蚊の発生量に関する調査がされていないため、本当に昨年より多いのかはわからないんです。ですが、地震によってこれまでなかった発生源となる場所が増えているので、増えたのではないかという推測はできました。またこの調査以前より、蚊の被害が出ているという話から、防虫剤が入った網などを、熊本県ペストコントロール協会より、避難所や車中泊をしている人などに配布されました。ほかにも、熊本城が被災した影響で、水前寺公園への観光客流入が多くなるという予想にもとづき、水前寺公園でも蚊の調査を行っています。通常、蚊の採集調査は冬にはやらないのですが、熊本は冬にも蚊が出る、という話を聞きましたので、水前寺公園では、一年間の継続調査をする予定です。通年の調査はこれまでに例がなく、蚊の生態にも関わる結果が出るかもしれないとも思っています。

総合大学の利点を活かして、連携した研究を!

◆:今後、どのように研究を発展させていきたいですか?
米島:実は、蚊ってまだ生態が分かっていないことが多いんです。どこから来たのか、どこまで飛んで行くのか、どのくらい飛べるのか、何が好きで、何が嫌いか、など、はっきりと分かっていないことだらけです。1つずつ調べていって、どのような地理的条件によって、蚊が媒介する感染症の流行が発生するのか、メカニズムを解明していくしかない。しかも、環境の変化により日本に存在する蚊の種類は増えてきていますし、状況が刻々と変化してきています。フィールドワークを伴う調査や研究は、経験がモノをいいますし、1人でやれることには限界があります。熊本大学は総合大学ですから、科学や医学などいろんな専門の先生がたくさんいらっしゃいます。ほかの先生方と交流しながら、調べ方や考え方も含め、学んでいきたいですね。
 
(2016年10月17日掲載)
 
 
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