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WEBマガジン「KUMADAI NOW」原子レベルのタンパク質構造を解析し、病気の原因を解明する

X線結晶構造解析法を用いてタンパク質を見る

健児くん(以下◆):まずは、先生のご研究内容を教えてください。
山縣:タンパク質はアミノ酸が糸状につながってできており、3次元的に折り畳まれて働きます。そこでタンパク質がどのような立体構造をとり、どのアミノ酸がどんな働きをするからDNAが複製されたり、細胞が増殖したりするのか。タンパク質の立体構造を原子レベルで見て、そこから生命現象を解き明かしたいというのが研究テーマです。
 タンパク質は、遺伝子の設計図に従って作られ、ヒトでは2万種類くらいあると推定されます。天文学的な数ある地球上の生物のタンパク質の中で、現在約10万種類の立体構造がわかっていますが、今もわからないタンパク質もたくさんあり、多くの研究者が研究しています。
 私たちの研究室にも、優秀なスタッフがさまざまな研究をすすめています。例えば池水信二准教授は、免疫に関係するタンパク質の構造研究で成果を出し著名ですし、中村照也助教は、核酸に関わる蛋白質の構造研究で数々の賞を受賞している若手のホープです。また、池鯉鮒麻美研究員は、タンパク質の発現・精製の腕を見込まれ、オックスフォード大学やベンチャー企業との共同研究をしています。彼らの成果が、生命の秘密の一コマを解き明かしてくれるでしょう。
◆:目に見えないものを研究するって、すごく難しそうですね。
山縣:実際の細胞の中のタンパク質を直接見る手法はありません。でも、100年前に開発された、タンパク質の結晶にX線をあてるX線結晶構造解析法を用いて、原子レベルで見ることができます。
 レントゲンがX線を発見した後、1912年にX線を使って原子の構造を見ることができるのをラウエという物理学者が発見。1913年にはブラッグという物理学者がその原理を見つけました。実はラウエの論文を読んだ物理学者の寺田寅彦は、ブラッグと同じ時期、同じように実験を繰り返し、論文をネイチャーに発表しています。私が熊本に赴任する時、寺田寅彦が熊大の前身である旧制第五高等学校出身であると知って嬉しかったですね。
 X線結晶構造解析法の原理は100年前に考え出されましたが、これまでに手法は進化し、今は高度な機能を持つ大型施設もあります。強いX線を出すことができるので、タンパク質の結晶が小さくても見ることができるようになりました。

創薬へとつなげる道も見据えて

◆:研究には喜びもご苦労も多いのでしょうね。
山縣:大変なのは、X線結晶構造解析法で見るための純度の高いタンパク質を取り、その結晶を作ること。まずは細胞をつぶし、試験管の中に溶けだすたくさんのタンパク質の中から自分がターゲットとするタンパク質を精製するのですが、これがなかなか結晶にならないんです。それが苦労の種ですね。
 実は細胞の中にいるタンパク質は、分解されずに安定して存在すると生命現象にはあまりよくないんです。だからとても不安定。試験管の中ならもっと不安定であると考えられるので、温度管理などに神経を使います。
 それでも根気よく続け、一つのタンパク質の立体構造がわかることで、そこからよく似たタンパク質もそうかもしれないと推測ができ、じゃあ次はこんな研究をしたらいいのではないかと先への道筋が開ける、そんな時に研究への喜びを感じます。
◆:タンパク質の研究はどんな役に立つのでしょう。
山縣:生体の中で働いているのはタンパク質なので、病気になる原因もほとんどがタンパク質にあると言えます。病気の原因となるタンパク質の働きを止める薬となる化合物を設計しようと思ったら、そのタンパク質の構造がわかっていることが大前提。だから、創薬の観点からもタンパク質の立体構造を見る研究は不可欠なんです。
 薬になる可能性が高いタンパク質については競争も激しいので、私たちがリードするのはのはなかなか難しいんです。でもいろいろとやってきた中で、働きを止めたら薬になるのではないか、と考えられるタンパク質も何個かわかってきています。

研究には忍耐力が大事。女性研究者支援も充実

◆:先生は熊大の男女共同参画推進室長も務めておられますね。
山縣:熊大には保育園や、産前産後・育児休暇、勤務時間短縮などの制度が整っています。研究者は特に、実績がでる30代が子育てと重なるため、研究補助員を雇う費用を大学が負担しています。 これからの課題は、男女を問わず利用できるこれらの制度を広く周知し、利用を促進すること。結婚や子育てと研究の両立が難しそうだから別の道に、と考える前に、研究と家庭が両立できる体制を多くの大学が整えていることを知ってほしいです。先日薬学部で講演会を開催し、講師として招いた女性たちが「妻の研究に理解のあるパートナー選びが大事」という話をされました。もちろん研究の話がメインでしたが、「目からウロコでした」という感想もあり、経験者ならではの話をして頂いてよかったなと思います。
◆:最後に、学生さんへメッセージをお願いします。
山縣:こういう研究のほとんどの場面は地味なので忍耐力が必要かなと思います。そして、いろいろな人の意見を聞くこと。知らなくて損することがあったらもったいないじゃないですか。いろんな人と話をして、自分の実験から「もしかして、彼が話していたこと?」と思うことがあり、もう一度その人と話したらより深いことがわかる。そういうことがあります。私の研究室では一人一つのタンパク質をやりますが、どんな知識がどこに眠っているかを判断できる人はいい結果をもたらしてくれると思います。
 生命の仕組みには、巧妙な働きも、一見無駄な働きもあります。でも、それにも意味があることが原子レベルだとよくわかります。そこから、「40億年かけてどうタンパク質ができてきたのか」とか、「巧妙なだけじゃない世界ってどういうことなの?」と考えていくことはとても楽しいですよ。
 
(2015年10月13日掲載)
 
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