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WEBマガジン「KUMADAI NOW」過去を見る目は未来を見据える 古代の記憶を解き明かす!!

眼を持ったから、生き物は大きく進化した!

健児くん(以下:◆):普通は固い骨や殻を連想しますが、眼も化石になるんですか!?
田中:普通は、眼のような軟組織は化石として残りません。ですから、眼のレンズが化石として保存されやすい石灰質でできている三葉虫の化石や琥珀に閉じ込められた昆虫を使って眼の研究をしていました。しかし、三葉虫の目も中身は残らないんです。中が残っていれば、網膜の情報などからその生物が何を見ていたか、どんな明るさの中で暮らしていたかがわかります。
◆:眼の中身が残る化石が見つかったんですね?
田中:ある時、米国のカンザス州で見つかった棘魚(きょくぎょ)の化石の眼に黒い部分が残っているのを見つけました。これは普通じゃないと思って眼を電子顕微鏡で見ると、網膜、色を識別できる錐体(すいたい)細胞、明るさを感じる棹体(かんたい)細胞が残っていることがわかりました。
さらに、同様に眼の軟組織が保存されている可能性の高い中国産の羽毛恐竜について現地の研究者と共同で研究し、羽毛恐竜がカラフルな世界を見ていたのかどうか、調査中です。
眼は生物の進化に大きく関わるんです。眼がない頃は獲物をとらえるのに苦労していましたが、眼があることで捕食者は効率よく食べ物を見つけられるようになり、食べられる側は食べられまいと固い殻や棘を持ったり、素早く逃げられるヒレなどを進化させていきました。そして、生き物が何色を見ていたかわかれば、求愛や威嚇、身を守るカモフラージュの機能もわかります。これまで、メラニンや構造色の化石から復元された古生物の体色とすり合わせながら、まだ誰も見ていない時代の色を復元したいというのが私の研究の一つです。

天草は、化石や古代の地層の宝庫

◆:生物を化石から研究するのに、天草を拠点にしているのはなぜですか。
田中:キーワードの一つが干潟です。3億年前に生息していた棘魚類は、現在の干潟のような海水と淡水が混ざる汽水域にいて、明るいところでは網膜の中の光受容器官の間にある色素を上げ、できるだけ光を入れずまぶしくないようにしていました。逆に夜は色素を下げ、暗いところでも見えるようにしていたことが研究からわかっています。現在も干潟には、様々な光環境に住む生物が多いんです。化石だけではわかることに限界があるので、現生の材料を見て同じ構造があれば過去に応用するんです。今の生き物のサンプルはここで、化石は国内外の研究者と協力して手に入れます。
でも実は天草は、中生代から新生代まで、大昔の干潟の地層があり、その化石が出る地域でもあるんです。干潟で生きていた生物の化石がでる地層は日本にはあまりありません。恐竜の時代と5千万年前の新生代という二つの古い干潟の地層と現在の干潟が揃うという環境はおそらく天草だけ。アンモナイトの化石も、天草は北海道に次いで2番目に多く出ることで知られているんです。大陸とつながっていたことがわかる地層もあるので、他県の大学院生も見に来ますよ。
◆:地質学的にも天草は魅力的なんですね。
田中:実は、保存がいい化石を見つけるには地層もわからないといけないんです。私も大学は地質学科でした。地層を見る目が養われてくると、どういうところに化石があるか探す場所がわかってきます。
 

「なぜ眼が保存されるのか」、この疑問にも挑む!

◆:今までに印象に残っている化石の発見は?
田中:スウェーデンでの発見です。論文に載った場所なんですが、普通、研究者はいい場所はあまり詳しく教えないので、場所は大まかにしかわかりませんでした。ですから、現在九州大学におられる先生と調査して地質図を作り、1cmずつ地層を調べていったんです。5年をかけて、「これなら出るかも」と突き詰めていった場所に保存のいい化石が出た時はゾクゾクッしたことを覚えています。小さい頃から化石が好きでしたが、化石の保存には限界があると思っていたんです。とてつもなく保存がいい化石を扱いたいと子どもながらに思っていたので、「よくぞここまで残ってくれた」と思う化石を発見し、それが新しい研究の道筋をつけてくれたとき、この研究を本当におもしろいと思いました。
◆:これからの展望をお聞かせください。
田中:私が扱っているのは、普通なら保存されない眼の化石です。生き物が化石になるには、土石流などで一気に生き埋めになるという条件が必要。普通生物の軟らかい部分は泥の中でバクテリアによって分解されるのですが、土石流に一気に埋められさらにその上が細粒の堆積物に覆われると、分解される時に出る骨のカルシウムイオンやリンのイオンが泥の中に閉じ込められます。これが眼のような軟組織をコーティングし化石になると考えられます。どれくらいの期間で、どういったバクテリアが関与すると眼の軟組織が化石化して残るのか。まだはっきりとわかっていないメカニズムを解明するのも目標の一つです。
◆:同じ研究を志望する学生さんへメッセージを。
田中:まずは好きという気持ちが一番。そして根気強さ。地層とにらめっこして、あきらめないことです。そして、化石から現在の生き物のはく製まで網羅している自然史系の博物館で長い時間を過ごし、できれば収蔵庫にも入らせてもらって、見て触れるという体験をたくさんしてほしいと思います。
 
(2015年10月05日掲載)


 
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