現在位置: ホーム 大学情報 広報 広報誌 WEBマガジン「KUMADAI NOW(熊大なう。)」 熊大ラボ ~knock on the laboratory's door~ WEBマガジン「KUMADAI NOW」人に、街に、“心地良い”景観デザイン

WEBマガジン「KUMADAI NOW」人に、街に、“心地良い”景観デザイン

自然科学研究科 星野裕司 准教授

デザインの中心は”人”

現場に出て現場で考えることが大切健児くん(以下:◆):「景観デザイン」とは、何を研究するんですか?
星野:自然や都市など場所を問わず、そこに人がいれば“景観”が存在します。景観の研究のキーワードも“人”。かつて高度成長期に、それを使う人間よりも利便性や効率性を最優先して道路や建造物を造ったために、環境やコミュニティーの問題も生まれました。そこで「原点に戻ろう」と考えたんです。「人にとってその場所がどんな居心地なのか」つまり人の暮らしに特化した研究と活動を行っているんですよ。
◆:景観の中に、人にとっての心地良い空間を造る研究なんですね。
星野:日常生活の中で触れる建物や景色の中に、一つでも「心地良い」と思わせてくれる場所があれば、自分の故郷のことをもっと好きになったり、辛い時に心を癒やしてくれる。感動や心地良さを感じるチャンスを日常生活の中にどう仕込んでいくかが、私たちの役割です。
◆:先生は、2005年から「熊本駅周辺整備都市デザイン会議WG」にも携わっておられますね。
星野:駅は熊本の玄関口であり、“顔”といえるようなデザインが必要だと考えていました。熊本は世界に通用するポテンシャルを持ちながら生かし切れていません。東京や大阪のようになる必要はなくて、“Aクラスの元気”を発信する中堅都市になることに社会的価値があります。「景観デザイン」だけでなく、福祉や医療など多角的な面から考えていきたいですね。

人や時間とともに成長するデザイン

◆:「グッドデザイン賞2012」受賞おめでとうございます。「グッドデザインベスト100」に加え、特別賞「サステイナブルデザイン賞」にも選ばれた「曽木の滝分水路」のプロジェクトとは?
星野:鹿児島県伊佐市にある曽木の滝は、平成18年(2006)7月の豪雨で甚大な被害を受けました。その災害復旧の一環として整備された“洪水を分流する”水路が「曽木の滝分水路」。地元の人々と対話を重ねて、岩盤や樹木を生かした自然な河川空間を造りました。
◆:防災機能向上はもちろん、体験型観光を楽しめる場所に生まれ変わったそうですね。
星野:以前は滝をながめるだけの観光地だったのですが、洪水を防ぐ分水路に農業用水を通して、せせらぎを造ったんですよ。非常時には洪水の通り道になる場所であることを普段から水に触れて意識してもらうことは、安心感と防災意識につながります。また、「曽木はっけんウォーキング」などのイベントも開催しました。明治時代に作られた発電所などの遺構などもありますので、観光面からのアプローチも楽める空間になったと思います。
◆:災害復旧に留まらない地域貢献!地域コミュニティーづくりにも役立ちますね。
星野:従来から防災とアメニティー、景観は、共存できない矛盾する存在だと考えられてきましたが、本来防災と普段の暮らしは一体のものなんです。その場所の暮らしになじみ、少し新しいことが生まれるような環境であってほしいと、人々が集い、岩や樹木、せせらぎなどが、“時間とともに成長する”ような分水路を目指しました。

日常の中にヒントが隠れている

◆:景観をデザインする上で大切なことは何ですか?
星野:「大切なことは日常の中にある」ことは学生たちに伝えたいですね。普段目にするものの中にこそ、研究として深めるべき点やデザインの立脚点があるんです。常にアンテナを張っていないと、知らないうちに新たな発見や問題点を見過ごしてしまうことになりかねません。最終的には結果勝負。「一つのものを完成させるまでに、何度現地へ足を運んだか?模型を10個作るのか、20個作るのか?」作り上げるまでのプロセスが大切なんです。
◆:先生の研究室、とっても活気があって楽しそうですね。
星野: 学内では「キビシイ!」という評価が定着しているようで、「何かやってやろう」という決意をした学生たちが集まってくるんですよ。決まりごとやルールを作るのは嫌いなので、全部彼らに任せます。それが逆に「キビシイ!」ことになるんでしょうね、彼らに判断や責任がともなうことになりますから。外部の人とやりとりしたりすることも多いので学生たちは大変だと思いますが、ふと彼らの成長が見える瞬間がある。それが私の原動力。教員として研究者として幸せな瞬間です。
◆: 先生にとって研究とは何ですか?
星野:「景観デザイン」はデザインするだけでなく、完成した後に「使ってもらってなんぼ」。現在取り組んでいる玉名市の境川治水事業では「造る前にまず遊ぼう!」とイベントを行いました。現場で地元の人々の声を聞き、実際に川に入り、「本当に必要なものは何か?」「造るものは何か?」を絞り込むことが大切なんです。造ることが目的ではなく、「地元をより元気にするにはどうすればいいか」を見据えたデザインに取り組んでいきたいですね。

◆:僕も身の回りの景観を見直して、“楽しい”を探してみたくなりました。ありがとうございました。

 

(2012年11月28日掲載)


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  • 「グッドデザイン賞2012」の紹介はこちら
    自然科学研究科 星野准教授・小林教授が携わった「曽木の滝分水路」が
    2012年度グッドデザイン・サステナブルデザイン賞を受賞!
    http://www.g-mark.org/award/describe/39428
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