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平成29年度熊本大学入学式 式辞

 

   入学生諸君おめでとうございます。本日ここに御来賓の方々及び理事、各部局長、教職員のみなさんと一緒に熊本大学第69回入学式を挙行し、学部学生や大学院学生など総勢2,577名 内、今回初めて受け入れたグローバルリーダーコース48名の溌剌とした諸君をお迎えできたことは、熊本大学にとって大きな慶びであります。私ども大学構成員一同、諸君を心から歓迎するとともに、若さ溢れるエネルギーによって大学に新しい風を吹き込んで頂くことを大いに期待します。

 諸君が今日という晴れやかな日を迎えられたのは、自らの努力によることは言うまでもありませんが、今日に至るまで諸君を支え励ましてくれたご家族や、恩師、先輩、友人の方々のお蔭でもあり、これらの方々に対しても皆さんと一緒に感謝申し上げたいと思います。

 昨年は入学式の直後の4月14日と16日に二度にわたる大地震に見舞われました。学内外の被害は大きく、発災後約一ヶ月間休講とせざるを得ませんでした。しかし、多くの方々の暖かいご支援を受け、本年の夏までにはほとんどの施設と設備が復旧される予定です。また、被災された学生の方々への授業料免除や奨学金給付制度なども整えることができました。ただ、建て替えが必要な工学部一号館は平成30年度まで、また五高記念館などの文化財は平成33年度まで修復、修理などの時間が必要です。このような状況で、何よりも我々を力づけてくれたのは、学生さんのボランティア活動と多くの学生さんが復学後、極めて積極的に学業やクラブ活動にあたられたことです。困難を前に、それを解決すべく行動する若者のエネルギーは素晴らしいものであると感じるとともに、これこそが我々が目指す問題解決型教育Problem-based learning (PBL)の原型であると思います。

 諸君がこれから学ぼうとする熊本大学は長い歴史と素晴らしい伝統を持った大学です。文学部、法学部及び理学部は、旧制第五高等学校、教育学部は師範学校、工学部、薬学部はそれぞれ専門学校、医学部は医科大学を母体として、昭和24年(1949年)に新しい制度の下に総合大学として発足しました。現在まで12万人以上の卒業生を送り出しています。母体の一つである第五高等学校は現在の黒髪キャンパスにあり、残念ながら昨年の大地震で大きな被害を受けましたが、その五高の創成期には講道館柔道の創始者でもある嘉納治五郎が校長を務め、文学者でもあるラフカデイオ・ハーンや夏目漱石なども英語の教師として教鞭をとりました。昨年は漱石来熊120年でしたが、この五高時代の漱石の教え子の一人に寺田寅彦と言う高名な物理学者がいます。

 「天災は忘れた頃にやってくる」とは、この寺田寅彦が言ったと伝えられていますが、今彼の書いたものの中にこのフレーズが出ているものはありません。しかし、彼は大正末期から昭和の初めにかけ、災害に関する多くの随筆、論文を書いています。「津浪と人間」「函館の大火について」「火事教育」「颱風雑俎」「天災と国防」「震災日記より」などです。寅彦はこのような自然災害について“ある周期を持って起こること”と“危機管理の重要性”を随所で問うています。今、熊本地震、東日本大震災と津波、糸魚川大火災、阿蘇山の噴火、水害などここ数年で起こった現実を考えると、90年も前に書かれた寅彦の警句が非常に重要かつ新鮮なものと思われます。

 もう一つ、慧眼の士として寅彦は「いつも忘れられがちな重大な要項として、文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその激烈の度を増す」と言う事を指摘しています。文明が進めばライフラインの重要性は増します。文明が進めばインターネットなど情報伝達の範囲は広くなり、速度も増します。それだけに、これらが災害によって破壊されると被害は大きくなります。原発の被害も90年も前には考えられないものでした。これからの我々は、さらなる文明の発達を考慮に入れた上で「危機管理」を構築せねばなりません。それが出来るのは、問題意識に目覚めた若い人々の知識と知恵ではないでしょうか。

 現在の日本は、少子高齢化による人口減少、膨大な財政赤字、社会保障制度の破綻の可能性など深刻な国家的課題を抱え込んでいます。これらの問題を前に、大学は自己改革とともに幾つかの課題を突き付けられています。熊本大学は研究拠点大学として、地域に貢献する大学として、また国際化した大学として、有為な人材を育成していくことを目指します。熊本大学は、多くの文化に理解を示し、国内外の様々な問題に関心を持ち、それらの問題の解決能力と自分の考えを説明する能力を備えた人材を養成することを目指します。そのような人物の見本が、我々の大先輩である“寺田寅彦”であると思います。

 現在の大学教育の批判の一つに、大学生が家でほとんど勉強しないこと、大学生が本をほとんど読まないことが度々挙げられています。大学はどんな教育を学生にしているのかと言う批判です。スマートフォンに熱中する若者を批判する人もいます。私は、文明の利器は、特に若い人ほど使いこなす必要があると思います。しかし、その反面、読書という貴重な人間の行為を失ってはいけません。読書や文学は毒であり、薬です。読書をすることにより毒と薬を見極める疑似体験をすることができます。このことが多くのことを経験した人と同じような人格形成をその人にもたらします。皆さんには、大学の学生時代にこそ、読書という習慣を身につけることを勧めたいと思います。

 大学では、多くの場合、読書と同じように自主性を重んじた勉学が求められます。自分が学びたいと思う科目を選択する必要があります。また、問題を設定し、それを解決する方策を学び、考えるという極めて能動的な学習が求められます。このように、単に知識を受けるだけでなく、目的意識を持って能動的に「学問をする」ことが大切です。何事にも興味を持ち、あらゆる事に疑問を抱く、これが「学問をする」原動力となります。熊大スピリットを伝える言葉として、本学が掲げているコミュニケーションワード「創造する森 挑戦する炎」が意図するところはここにあります。

 さあ、皆さんと一緒に学問をしましょう。そして「創造する森 挑戦する炎」を胸に新しい熊本大学、新しい生き生きとした熊本を作って行こうではありませんか。

 本日は、熊本大学へのご入学、誠におめでとうございます。

 

平成29年4月4日
熊本大学長 原田 信志
 

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